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飼い主を失ったネコたちが保健所に? ペットの一生を守る方法とは - 松田美幸

■「亡き後」問題の顕在化


ある日、猫の里親探しのボランティアをしている私のもとに一通のメッセージか届きました。「近所のおばあちゃんが亡くなって残されてしまったおばあちゃんの飼い猫を、ご家族の人が保健所に連れて行こうとしているので保護したいけれど、どうしたらいいですか?」と。残念ながら、動物のボランティアをしている人間にとっては、このような話は珍しくないのです。

自分にとってはかわいくてしかたのないペットでも、残されたご家族にとっても同じだとは限りません。かわいいとは思っていても、ペットを飼うことができない住宅環境や猫アレルギーなど、飼うことが出来ない理由があるかもしれません。

では、どうするのがいいのでしょうか?

例えば、親が亡くなった知的障がいを抱える子供の生活をどう支援するのかという「親亡き後」問題、配偶者が亡くなった後に残された認知症などを抱えている人の生活をどう支えるのかという「配偶者亡き後」問題が、人間社会では顕在化しています。

この「亡き後」問題への一つの答えとして、福祉型信託の活用があげられます。福祉型信託は、あらかじめ、信頼できる人に財産を託しておいて、自分が亡くなったとき、あるいは認知症になり、大切な人の生活を支えることができなくなってしまった場合に、自分の代わりにその財産で大切な人の生活を支えてもらう契約のことです。

■ペット信託とは


この福祉型信託のペット版ともいえるペット信託契約が2013年に日本で初めて結ばれました。

ペット信託も基本的には福祉型信託と同じ考えのもとにあり、現在の飼い主が亡くなった場合に備えて、あらかじめ財産を信頼できる人に託しておき、その信託財産から新しい飼い主に養育費を支払うことで、そのペットの健やかな一生を支えるものです。

ペットと共に暮らし、ペットを家族として大切にしている人が増えてきていることを背景に、新聞やテレビのニュースでも取り上げられるなど注目が集まっています。

冒頭のような問題も、あらかじめペット信託を結んでおけば生じなかったでしょう。

信託自体がとても自由度の高い制度であるため、契約上の非常に多くのことをオーダーメイドで組み立てることができるのも魅力の一つです。

例えば、新しい飼い主が見つからない場合は、いったん動物の保護・譲渡事業をおこなっているNPOなどの民間動物シェルターに保護してもらい、そのシェルターに新しい里親さんを見つけてもらうことも出来ます。また、本当にペットが大切にされているか、預けた財産が適切に使われているかを、直接見守ることができない飼い主さんに代わって、信託監督人という存在がペットの養育環境や財産管理が適切なものであるかをチェックすることなども可能です。

ペット信託は資産のある人にしか不可能なものというイメージもあるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、信託用の口座に養育費を積み立てていくことも出来ますし、あるいは生命保険などを活用することも可能です。
私自身もそうですが、まとまった資産を有しなくても組むことができるのです。

■これからの「終生飼育」の1つのあり方


飼いはじめたペットの生涯の最後までを責任をもって飼うという「終生飼育」の考え方が、飼い主の義務として動物愛護管理法に定められ、その意識が根付いてきています。その一方で、ペットを飼いたいけれども一人暮らしや高齢であることを理由に躊躇してしまうという人も増えているように感じます。

しかし、そういう人にこそペットとの楽しい暮らしが必要な場面も多いと個人的には感じていますし、なにより、平成25年度の一年間に日本で殺処分されたイヌ・ネコの数は約16万頭(環境省、平成24年度統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」より)もいます。飼いたいと思っている人が、保健所からイヌ・ネコを引き取ってくれたらどれだけの命が救われるのでしょうか。

確かに、「終生飼育」は本来、飼いはじめたペットは最後まで自分でお世話しましょうというもので、それは間違ってはいません。ただ、もし仮に、自分が「終生飼育」を果たせなかったとしても、ペット信託や他の方法でもってペットの「終生」に責任を果たせると考えてみれば、より多くの人がペットとの生活を楽しむことができるのではないでしょうか。

【参考記事】
■「ネコは地球を救う」だからまずは猫を救う!~ネコ市ネコ座ってなんだ?~
http://sharescafe.net/40552091-20140828.html
■女優・遠野なぎこさんが元夫と結ぶ契約とは? 司法書士 及川修平
http://sharescafe.net/41793240-20141108.html
■ペットを飼う条件に「単身世帯 独身男性お断り」。里親団体が単身世帯へペットを譲りたくない理由とは。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/42195263-20141202.html
■あなたは猫エイズを知っていますか? (ネコリパブリック 自走型保護猫カフェ)
http://sharescafe.net/42223187-20141204.html
■日本は「良いお母さん」のレベルが高すぎる。 (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39261507-20140608.html

松田美幸 行政書士

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