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大学に生息する「教員」という動物~研究・事務編(後編)

研究編:研究という権威とどう関わるかで態度は変わる

大学に生息する珍種の教員についてご紹介している(あくまで珍種、亜種です。あしからず)。後編は研究・事務編。ちなみにここでの様々なエピソードは文系教員を対象にしている。大学教員は教育者でもあるけれど「本来は研究者」というアイデンティティがある。つまり、「研究が好きで学者になった」というタテマエがある。で、このタテマエがどう展開するかで研究や事務に対する態度も変わってくる。

「これでいいと思います!」というご託宣
大学院時代の仕事は研究者にめざし研究会への参加、論文作成、学会発表・参加、主任教授のカバン持ちなど、いろいろとやることがある。で、院生の中には大学院というのは結構響きがいいと思っている人間がいる。大学が「最高学府」、ということは大学院は「チョー最高学府」ってな認識があるからだ(さながら「最高裁判所」のあとに「バッチリ裁判所」とか「ハイパー裁判所」とかがあるという感じか?)。おまけに、今や大学院はかなり入りやすい(文科省の指導によって定員を大幅に増やしたため)。自分が所属した大学の偏差値プラス5とか6とか、いやそれよりもっと偏差値の高い大学の大学院に意外と簡単に入学することが出来る(学歴コンプレックスの固まりみたいな学生たちは大学院に入ることでルサンチマンを晴らしたり学歴ロンダリングをやったりするのだけれど)。

で、こんな認識をもっていると大学院時代で、すでにいおエラい方になる場合もある。たとえば、学会でオモシロイ発言をする人間が登場する。学会発表の席で、某有名T大学の院生のやった質問・コメントがその典型だ(発表者ではない)。学会発表では発表の後に質疑応答があるが、その際、件の院生は「それでいいと思います。あなたのやっていることは合っています」とコメントしたのだ。おいおい、あんたはいつから大先生になられたんだ?それとも神なのか?当然、その場は唖然とした空気に包まれた。つまり”中二病”(ちなみに、このエピソード、あっちこっちから報告があった。しかも、これをやるのが、なぜか決まってT大院生なのだ)。

大学教員生活は余生
で、なんとか大学に職を得ることに成功するのだが、そのうちの一部の者が就職した瞬間、研究をスッパリとやめてしまう。ようするに「上がり」ってなわけだ。その一方で、困ったことに学務も教育もやらない。いいかえれば三十代で「余生」に入る若者が登場する。こういった人間は大学からすれば「不良債権」。何にもやらない分を他の教員や職員がフォローすることになる「焦げ付き」になってしまうのだ。大学の人選は公募か特定採用が基本。前者は広く公募を募って書類と面接で選考する。後者はいわゆる「一本釣り」。そして、この二つの中間形態の採用方法があるのだけれど、いちばんフェアに思えているようで、実はリスクが高いのが公募なのだ。書類だけだと業績しか見ることができないので教育と事務能力を測定できない。なので、面接や模擬授業を選考項目に加えるのだけれど、これとて一回きりが原則なので、上手く切り抜ける人間は結構多い。採用人事は、いわば「スカを引かない」ために行われるという側面があるのだが、どうしても紛れ込んでしまう。特定採用のようなコネの方が安全という場合が、間々ある。

で、こういう輩は結局、権威主義。大学教員という職業が社会的ステイタスであり、これを獲得したいというのが先ずあって、そのタテマエとして「研究が好き」となっているという体裁を装っている考えるのが正鵠を射ているだろう(だから就職した瞬間、カミングアウトして研究をやめてしまうのだけれど)。ちなみに大学教員になったところで、そんなに高額な給料がもらえるわけではない(国公立ならフジテレビ社員の半額くらいか?まあ、平均年収よりはマシだが)。ということは、やっぱりネームヴァリューに関心があるというわけだ。

「私は研究者」という強烈なアイデンティティ
一方、その逆もある。研究者というアイデンティティがメチャクチャ強い人間だ。「全ては研究のため」「自分は研究のために大学に所属している」という信念ゆえ、こちらには一生懸命だが、その反動で教育と学務をほとんどやらない。で、こういうタイプは二つに分かれる。一つはそちらの研究に没頭するので優秀なタイプ。ジャンジャン業績残して、とっとと上の大学へと移動する。上の場合「研究中心の大学」なので、本人からすればそれまでの大学は「腰掛け」としてうまく利用したということになる。

まあ、これはこれでいい。著名な学者がかつてこの大学に所属していたというのは大学に箔がつくからだ。それなりに貢献している。マズイのは研究があまりにオタク過ぎて、当該学問分野でも相手にされないタイプだ。教育や学務をやらない、その一方で研究機関としての大学にも貢献しない、研究ばっかりやっているので社会性がない。というわけで、これもやっぱり「不良債権」扱いとなる。

学会でご託宣を宣う
就職が決まると研究をだんだんとしなくなるので、学会発表も減ってくる。調べればわかることだが、学会の発表者って、その多くがまだ就職先が決まっていない若者たちなのだ。ただし教員にとって学会はかつての仲間との再開の場でもある。しかも大学からその費用が出るので出席するにはやぶさかではない(とりわけ北海道や沖縄で学会を開催すると参加者が増えるのは、なにをかいわんやである)。

で、出席してギャラリーとして参加するのはよいのだけれど、中には迷惑な連中も存在する。やはり、発表者について質問やらコメントをするのだけれど、これが完全にピント外れというか、我田引水というか。自らの関係筋の発表がなされると、その発表についてコメントするのではなく、持論を展開してしまう。つまり相手の話を聞かず長々と高説を垂れてしまうのだ。その間、他のギャラリーは延々待たされることになるのだけれど、まあ迷惑きわまりない。

学務編:やってもらうことが基本

事務は職員の仕事
最後に事務=学務についても触れておこう。学内の事務、つまり学務も教員の重要な仕事の一つだ。しかしながら、これを極力やろうとしない輩が存在する。先ず書類の提出が遅い、あるいは提出しない。職員の方も慣れたもので、ある程度書類が出てこなければそのままスルーするか、こちらの方でさっさと処理してしまう。こっちの方が遙かに経済効率がよいからだ。それゆえ会議の議事録、進行表等の作成は全て職員が担うところが結構多い。これって、教員が手がけることで学務に対する自覚が涵養されていくという効果も期待できるのだけれど。しかし、教員にやらせておけばいつまで経っても出来上がらないので、やっぱり効率性を踏まえて職員がさっさと処理する。つまり、教員は上げ膳据え膳をやってもらえる「お殿様」となるのだが、これがデフォルトになってしまうと、ただただおエラい方になっていく。これこそ「大先生誕生」の構図である!

パーティの席上で、人は向こうからやってくるものと考える。
パーティの席上での教員の行動パターンも興味深い。基本、こちらも「上げ膳据え膳」という状況を期待している。たとえば、初めて出会った場合。名刺を先に差し出すのは相手の方。いや、後からであっても出してくれるだけまだマシ。中には、その都度「実は、名刺を切らしておりまして」と言い訳し、名刺を決して配らない教員もけっこういる。これ、言うまでも無いことだが、ビジネスの世界では余裕で失格の行動だ。

また、酒宴の席では専ら1カ所に立ち続ける。椅子がある場合はそこに座り続け、他の参加者が挨拶しに回ってくるのを待つ。これは傲慢と言うよりも、自分から席を立って挨拶するといった社交を経験したことがないから。で、着席しているときは手持ち無沙汰なので、たまたま隣に居合わせた社会人、あるいは教員と話し込むことに。教員同士なら相互扶助(見知らぬ空間で手持ち無沙汰になることなく、やり過ごすことが出来る)になるが、相手が社会人の場合だと教員のおもりをさせられることになる。

前回述べたが、最近、大学は過当競争の中にあるので教員も営業に駆り出される。たとえば企業説明会などを開き、その後で立食パーティが催されたりするのだが、その時、会場の隅の方に集まりヒソヒソ話をしている連中が教員だ。怖くて見知らぬ人間に名刺を差し出すことが出来ないのだ(前述したように、持っていないという輩もいる)。で、お客であるはずの企業の人事担当の方が名刺を持ってやってくることに。

でも椅子取りゲームは好き
こんな輩がある程度力を持ってしまうと学務それ自体が立ち行かなくなることも発生する。大学を「余生の場」と捉えている教員にとって、この環境は是非とも守るべきもの。だから、現状の環境を変更したくない。そこで、構造を変化させないようと努力し始める。いわゆる保守反動、アンシャンレジーム志向。で、これと学者気質と結びつくと質が悪い。学者というのは要するにオタク。施行細則にものすごく細かいという性格がある。で、この性格が保守反動と結びつくと大学規定を熟読し、どんな新しい提案も「規定違反」という解釈を構築して変革をストップさせてしまう。で、とにかく誰よりも規定を読み込んでいるので、最終的に誰も反論できない。かくして大学組織は旧態依然としたまま運営が続けられ、気がつけば時代から取り残されることに。ちなみに私大で理事長とか理事会がワンマン経営している場合は、こうはならない。ただし、それがよいかというと話は別。今度は理事会がわけのわからない裁量で大学運営を振り回し始める。

ちなみにこういったたぐいの教員は元々権威主義なので、偉くなることは大好き。教授になること、役職に就くこと、派閥を作って政争を繰り広げること、こんなことに血道を上げる輩も、まあ結構いる。セコイ「白い巨塔」ごっこみたいな状態を繰り広げて余生を楽しむのだ。という足の引っ張り合いなんて茶番もまた、展開される。

ということで、あっちこっちの大学に生息する大学教員たちの亜種の生態とその行動について今回は紹介させていただいた。こんな輩が大学教員の中にいると考えると、まあ教員も「人の子」ってなことになるんだろうか。

【前回記事】
大学に生息する「教員」という動物~教育編(前編)

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