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エアバッグリコール問題-タカタ側の言い分を考える

年末となり、今年一番の企業不祥事に発展してしまいそうな気配が漂うタカタ社のエアバッグリコール問題。ホンダ社も日本で初めての「調査リコール」を実施することを表明していますが、あいかわらず不思議なのがタカタのCEOの方が前面に出てこないことです(アメリカで現地弁護士との対応協議はされたようですが)。自動車メーカーのトップが調査リコールを表明するに及んでも、なぜタカタのトップ(ここではCEOのことを示します)が記者会見をされないのでしょうか。コンプライアンス経営が叫ばれるご時世、私にはどうしてもわかりません。ということで、以下は私が考えた「エアバッグリコール事件に対するタカタ社の言い分」です。なおあらかじめ申し上げますが、私はとくにタカタ社を擁護するわけではありません。あくまでもタカタ社としての「正論」を推察したものです。

事実関係は今年1月23日のロイター記事「特別レポート:米国エアバック事故、優良企業に大規模リコールの代償」を参考にしています。

①そもそもタカタ社はシートベルトの製造で収益を上げていましたが、ホンダ社から「エアバックを作らないか」と持ちかけられました。タカタの先代社長は、あまりにもリスクが高いので断固拒否していましたが、ホンダ担当者が「御社の織物技術を自動車の安全性向上に活かしてほしい」との粘り強く説得したことにより、最後は決意をひるがえして「危ない橋」を渡ることにしました。このような経緯からすれば、今回はリスクが顕在化したものであり、強硬にエアバックを作ってくれと懇願したホンダ社が前面に出るのは当然ではないかと。

②自動車部品といっても、エアバッグは人体に触れることを前提とした部品であり、いわば自動車の車体と一体となったものです。多くの自動車部品メーカーは、人体に触れる部品は安全性を保証できないので作らないことをモットーとしています。このような大規模リコールが予想される自動車部品については、自動車メーカーの許諾も得ずにリコールの要否を判断することは自動車部品メーカーには困難ではないでしょうか。

③エアバッグの安全基準は他の自動車部品と比べて桁違いに厳しいものです。通常の自動車部品の故障率基準は1000分の1、ブレーキでさえも1万分の1~10万分の1。しかしエアバッグの故障率基準は100万分の1以下でなければならないとされています。しかしそうなると、どうやって強制リコールが必要となる原因の存在や機種の特定を証明するのでしょうか。走行実験や人間による検査では到底困難とホンダ社の関係者も過去に証言しています。つまり、これまでは安全基準を満たしていなかったが、交換することで安全基準を満たすようになった、ということを、安全思想に基づいて国民に説明することは困難ではないでしょうか。

④このような厳しい安全基準のためか、当局も「欠陥」を立証できるような証拠を持っているわけではなく、当局も公聴会においてこれを認めています。欠陥が認められない以上はリコールを強制されることもありません。現地の敏腕弁護士とも相談したところ、欠陥が立証できない以上制裁金を課されることもないとのこと。そうであるならばCEOが前面に出て上げ足をとられるよりも強気の姿勢で臨むべきではないでしょうか。

⑤それでも、これまでにインフレータ内のガス発生剤の成型工程が不適切、ガス発生剤の成型後の吸湿防止措置が不適切など、合計4つの原因を任意で特定し、リコールを継続してきたものであり、そのようなタカタ社の対応について米国のNHTSAは、2010年「タカタのリコールは適切」とお墨付きを与えています。したがって現在は安全だと堂々を主張しているのであり、ではなぜ米国のNHTSAは「タカタのリコールは適切と言ったのは間違いだった」とは言わないのでしょうか。

もちろん事実関係の把握が適切でないところもあるかもしれませんが、タカタ社の言い分としては以上のようなものが考えられるのではないかと。いずれにしましてもホンダの社外取締役の方がおっしゃるとおり「まずはお客様の安心を最優先で考えるべき」とのことなので(朝日新聞ニュース)、各社協調して調査リコールを進めることが大切です。拙著「不正リスク管理・有事対応」の37ページ以下でも述べましたが、リスク管理は安全思想から安心思想へと移り変わりつつあります。ただ、上記で述べたようなタカタ社の事情をよく吟味しておかないと、安易に「タカタの常識は世間の非常識」と言い放ち、企業コンプライアンスの視点からの批判を向けるには「やや情報不足」な気がいたします。

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