- 2014年12月07日 09:15
バロンズ誌:アップル急落、主犯はヘッジファンド?
Barron’s : Did Hedge Funds Provoke Apple’s Shares To Plunge?
バロンズ誌、今週号の特集はIT・ソーシャルメディアをめぐるバブル観測です。結論からいえば、「今回は違う(This time is different)」。2000年当時と異なり、ダウ平均の2015年予想株価収益率(PER)は15倍で当時の18倍を下回り、S&P500は17倍で当時の30倍からかけ離れております。注目のナスダックは現状で22倍のところ当時は102倍などで、あの頃の狂騒相場とは隔世の感すら漂う。何より足元のIT関連、ソーシャルメディア関連の利益体質とバランスシートが当時のIT企業と違って健全であり、バブルを指摘するのはお門違いだとか。
当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、いつものランダル・フォーサイス氏が帰って来た今回のテーマはアップル急落劇です。
「我々は消えいく運命にある」——天体物理学者のスティーブン・ホーキング氏のこの発言は、同じくイギリスが産み落とした歴史的経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏の「我々はいずれ皆死んでいく」を彷彿とさせる。生を受けた者に必ずついて回る事実ながら、絶望的なトーンが漂います。
ホーキング氏といえば、2日付けのBBCとのインタビューで「人類は人工知能の発展により終焉を迎える」と警告しました。人間の生物学的進化は限定的で遅く、人工知能と競争できずに地位を奪われる」ため。遺伝子組み換え技術も成果をみるまで18年要する半面、「ムーアの法則によるとコンピューターは解析スピードとメモリー許容量を2倍に引き上げるのに必要な時間はたった18ヵ月」と指摘していました。まるで、スタンリー・キューブリック監督の名作「2001年宇宙の旅」の人工知能HALを連想させる見解です。
ホーキング博士の映画「博士と彼女のセオリー」は米国で公開中、日本では2015年3月。
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(出所:Yahoo.com)
2014年の現在、金融市場ではコンピューターが人間に取って代わりつつあります。2010年5月6日に発生した「フラッシュ・クラッシュ」でご記憶の方も多いように、超高速・高頻度取引(ハイ・フリクエンシー・トレーディング)やアルゴリズムなど、その代表格ですね。
2010年5月6日の衝撃は、未だに忘れられません。
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(出所:My Big Apple NY)
12月1日に発生したアップル株急落も、その一端をかいま見せます。寄り付き早々に670万株が怒濤のように売られ、アップルの時価総額400億ドル(約4兆8400億円)相当を吹き飛ばしました。
こうした急変動の真相は薮の中。ただし、原油相場と関連づけるとひとつの仮説が導き出せます。アップル株が急落する前の11月27日、米国がサンクスギビング・デーで休場という間隙を突いて石油輸出国機構(OPEC)が生産枠据え置きを決定し、翌11月28日に原油相場は10.2%も暴落。2009年9月以来の安値で引けました。原油先物の陰で、ヘッジファンドが損失を補填するため脂の乗ったアップル株を売って現金化を急いだと考えられます。
ところで、コモディティ系ヘッジファンドの創業者および最高投資責任者(CIO)であるレネ・ハウグラ—ド氏によると、ファンダメンタルズの観点から地政学的な異変さえ生じなければ原油価格は「50−80ドル」のレンジに入ったといいます。
原油安がもたらすリスクといえば、第1弾の利上げ前倒しでしょう。米11月雇用統計はマーケットのFedの政策見通しに敏感な米2年債利回りを10bp押し上げ、0.64%と約3年ぶりの高水準を迎えました。原油安はフィッシャーFRB副議長やNY連銀のダドリー総裁などFedメンバーが明らかにする通り、メイン・ストリートにとって好材料。ウォールストリートには、高い労働コストとエネルギー・セクターの業績悪化を意味します。はたして両者の綱引きは、コンピューターの進化に合わせ米経済にどのような作用を与えるのでしょうか。
ストリートワイズは、原油安で恩恵を被るのはエネルギー関連企業と指摘します。原油価格の下落で、コスト削減を通じ利益構造の改善がその最大の理由。設備投資の縮小で、コノコフィリップスのように配当を重視する戦略に打って出る企業も出てくるとも予想していました。シェールガス革命で誕生した数々の新興企業は、石油メジャーに買収されて生き残る可能性も浮上するというわけで、原油安は必ずしもエネルギー関連にはネガティブ要因ではない・・・。さすが基本的にブルなこちらのコラム、原油安でも強気まっしぐらです。
(カバー写真:Photoshot/Forbes)
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