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HIVとAIDSの違いは?エイズでも子供は産めるの?どんな症状?治療費は?本田美和子さんにイチから聞いてみた

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HIV感染、 性的接触が8割以上

次に、HIVに感染するきっかけについて見てみよう。HIVは非常に弱いウイルスで、生物の体内でしか生存できないから、お風呂やプール、一緒に鍋をつつく、抱き合う、軽いキスなどでは絶対うつらない。

 主な感染経路は次の4つだ。

①セックス
②母から子どもへ(母子感染)
③ドラッグ注射の乱用
④針刺しなどの医療事故

 この他にも、「薬害エイズ」のニュースでみんなが知っている「血液製剤」という感染経路がある。この血液製剤で感染してしまった血友病の患者さん約1500人を除いた感染経路別のグラフが図3だ。

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 これによると、HIV感染のおよそ8割以上がセックスをきっかけにしていて、その割合も異性間、同性間で20%ほどの違いしかないんだ。

「外国の例をそのまま当てはめることはできないかもしれませんが、アメリカも15年ほど前は今の日本と同じぐらい、男性が9割、女性が1割の、主にゲイの人の病気でした。ところが、ゲイのなかにはバイセクシュアルで女性との性交渉をもつ人もいます。今ではアメリカも患者さんの3人に1人が女性になっていて、日本もその傾向をたどるかもしれないと心配しています。実際に女性の患者さんも増えてきているんですよ」

「多くの人はいまだに『ふつうにセックスしてたら感染しない』って考えてるかもしれないけど、それは大間違いです。ふつうの性行為、粘膜と粘膜の濃密な接触さえあれば、人はHIVに感染するんです。それは男性器と女性器の接触には限らず、肛門を使った性行為や、性器を口に含んだり舐めたりというオーラルセックスも含まれます」

 たとえば、図4に注目してみよう。

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 予防措置というのは「コンドームを使っているかどうか」ということで、使わないで膣性交をした時に男性から女性にうつす可能性は0.1%ぐらい、女性から男性にうつす可能性はその半分ぐらいといわれている。なぜかといえば、男性の性器は先端だけが粘膜で、女性器の場合は全体がやわらかい粘膜だから、女性器のほうが傷つきやすいことが理由になるんだ。

 この数字だけを見て「なーんだ。HIVに感染する可能性ってすごく低いじゃん!」と考えた人も少なくないはず。

「でも、その1000回に1回がいつ起こるかは、誰にもわからないんですよ」。さらに唇に傷があるとか、口内炎があるとか。ヘルペスなどの性病にかかっていることでも感染のリスクが上がると本田さんはクギをさす。

 また、HIVは人から人にうつる病気なので、あなたが性的行為をする相手が1人でも、その相手が過去に10人性的な接触をしていれば、あなたが10人とコンタクトしているのと同じ意味をもつんだ。

HIV感染しても、 安心して子どもは産める

 そうそう。図4を見た時に「母子感染の確率って高いんだなぁ」と思った人がいるかもしれないね。「HIVに感染したら子どもを産むのってあきらめなきゃいけないのかな……」。そうやって落ち込んだり、もしかしたら私も……って不安になった人がいるかもしれない。

「そう思ってる方がたくさんいらっしゃるけど、ぜんぜんそうじゃないんですよ」

 えっ。どうしてですか?

「たとえば、妊娠中や出産時にHIVの治療を何もしていなくても、感染しているお母さんから生まれる子どもがHIVに感染する確率ってだいたい4分の1ぐらいなんです。もしお母さんがちゃんとお薬を飲んで、出産の時には帝王切開をしたり、それから母乳にもウイルスが含まれているのでおっぱいをあげずにミルクで育てれば、子どもへの感染はほぼゼロにすることができるの」

つまり、この数年間で治療薬がたくさん出てきたことは、単に病気の進行を防ぐためだけじゃなくて、母子感染の可能性を限りなく低くすることにも役立ってきたんだ。それは「医療の進歩」として数多くの生命を救うことになっている。

 でも、治療薬があることと、それを一生飲み続けることの大変さは、やっぱり別の問題になる。

「HIVの治療薬には強い副作用があって、一生付き合い続けなければならないんです。アレルギー症状が出たり、体内に結石ができたり、手足が異常にやせたり、うつやいらいらの精神症状が出たりと、HIVの治療薬の副作用はとても多彩で、多くの患者さんが何らかの副作用を経験しています。また、1日に2回飲むお薬は月に3回、1日に1回飲むお薬は月に2回飲み忘れると、耐性といって薬が効かなくなってしまうことがあるので大変です。夜中に薬がなくなったことに気づいて、夜中の2時半にタクシーを飛ばして来た患者さんもいました。いつもは不測の事態に備えてちょっと多めに処方するのですが、その時は仕事が忙しくて通院できず、手持ちの薬がなくなってしまったんです」

「話してくれてありがとう」

 ここでもう一度繰り返しておきたい。

 この病気は一度感染したら治らない。そして副作用のある薬を一生飲み続けなければならない。だから予防ができればそれが一番で、まずはコンドームを「避妊の道具」としてだけ考えるのをやめてみよう。そして粘膜と粘膜の接触を抑えてHIVをはじめとする性感染症を予防するためにきちんと使っていこう。それから忘れず「検査にも一度足を運んでほしい」というのが本田さんの願いだ。

「検査は全国の保健所や医療機関で受けることができます。保健所での検査は匿名で無料です。また有料にはなりますが、普通の病院や診療所でも受けることができます。迅速検査は結果が1時間でわかるのでおすすめですよ。陰性の場合はすぐに陰性だとわかりますし、もし判定保留で正確な検査が必要になった場合は、確認検査のために1週間ぐらいお待ちください。友だちとノリで行っちゃって自分だけ別室に呼ばれたらどうする? みたいなこともあるので、なるべく1人で行くことをおすすめしますね。もちろんどんな結果も一緒に受け止められるパートナーシップがあるなら、その方と行ってもいいでしょう」  そして、最後に一言。本田さんからあなたに伝えたいこと。

「もし、ご家族やお友だちからHIVに感染していることを打ち明けられたら、そのことにぜひ感謝してほしいんです。話すのにとても勇気がいることを、あなたを選んで話してくれたのだから。信頼がなければできないことです。『話してくれてありがとう』って、そう言ってくださったら、私はとてもうれしいし、きっと打ち明けたご本人もすごくほっとすると思います」  

「それからこの病気についてあなたが知っていることを話してもらいたい。そしてもしできるなら、継続的にその人の力になっていただけたらなぁ、と思います。薬を飲み続けながらHIVとともに何十年というこれからの人生を歩んでいく、そのなかにはいろいろ大変なことがついてくると思うから。その時に『何でもいいから相談にのるよ。HIV・エイズは特別な病気じゃないよ』って言ってくれる、そういう相手であってほしいと思う。そして自分にできることは何だろうって、この特集を読んだあと、あなたにできる大切な一歩を考えてもらえたらうれしいですね」

(土田朋水)

Photos:浅野カズヤ

ほんだ・みわこ

内科医。国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センターに勤務。93年筑波大学医学専門学群卒業後、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)、亀田総合病院に勤める。98年より米国フィラデルフィア市のトマス・ジェファソン大学にて内科レジデント、ニューヨーク市のコーネル大学病院老年医学フェローを経て現職。著書に『遥か彼方で働くひとよ』『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』(ともに朝日出版社)。ほぼ日刊イトイ新聞発行の健康手帳『Dear DoctorS』も手がける。

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