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HIVとAIDSの違いは?エイズでも子供は産めるの?どんな症状?治療費は?本田美和子さんにイチから聞いてみた

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(2009年12月1日発売、ビッグイシュー日本版 132号より)

HIV・エイズは特別な病気ではない。 HIV・エイズ、イチからおさらい

12月1日は世界エイズデーだ。欧米のカップルや恋人たちは、ごく普通にお互いのHIV抗体検査結果を交換し合うという。だが、日本では、HIV抗体検査を受ける人はいまだに増えない。なぜ、誰もが検査を受ける必要があるのか? この際、HIV・エイズのことを徹底的に知って納得したい。本田美和子さん(国立国際医療センター)に、イチからおさらいのレクチャーを受けた。

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不安になる時間が大切

 たぶん、HIVに感染しているかどうか、検査を受けたことのない人がほとんどだと思う。

 「自分はぜったい大丈夫なはず」とか「HIV・エイズってゲイの人の病気でしょ?」みたいな声。このページを読んでるあなたからも聞こえてくるような気がするなぁ。

 実はそれって、この取材を始めるまでの自分がそうでした。自分は感染してない、大丈夫だっていう思い込みがあったんだね。それがいろんな勉強をしたり、取材を進めるうち「おや、待てよ。自分も検査をしたほうがいいのかもしれない」と心変わりしていった。そして実際に検査へ行ってみて、結果を待っている時「自分は感染してないって信じてる人でも、ぜったい不安になるはずだ!」って気づいたんです。誰でもない、自分自身がそうだったから……。  「その不安になる時間ってすごく大切なんですよ」

本田美和子さんがそう言って、にっこり笑った。

「結果が1時間くらいでわかる迅速検査でも1週間でわかる検査でも、待合室やカフェで待っているその時間を大切にしてほしいんです。そして、結果を聞くまでに自分の来し方を思い出してほしいの。今までに会った人たちや、やってきたこと。あれがまずかったかなって思い浮かべながら時間を過ごしてもらう。自分の行動と健康をかえりみるすごくいい機会になると思います」

 もしHIVとエイズのちがいをハッキリ説明できないとか、オーラルセックスでも感染する可能性があることを知らなかった、あるいはいろいろとわからなくて不安な人がいたら。今回は本田先生と一緒に、HIV・エイズのこと、イチからおさらいしてみませんか?  まずはとても大切な事実から始めてみましょう。

HIV感染、 死に直結する病気じゃなくなった

「私がHIVの診療を始めたのは10年以上前なんですけど、その頃、私の病院では、毎月どなたかがエイズで亡くなっていました」と本田さん。

「それが今はすごく治療が進歩して、HIVは死なない病気になったんです。20年以上前、カリフォルニアでHIV・エイズの症状が報告され始めた時は、若い人たちが理屈に合わない感染症を次々と起こして亡くなっていく、新しい病気の出現に社会も医師も騒然となりました。今でも ①人から人へうつる ②一度感染したら治らない ③放置しておけば死につながる、という病気の基本は変わらないんですが、この20年のうちによい治療薬ができたことで、HIVは死に直結する病気じゃなくなった。それは本当に素晴らしい進歩だと思います」

さらにいえば、日本は治療環境にとても恵まれた国なんだ。

純粋な薬代や血液検査で、ひと月にかかるお金は約20万円。それが健康保険で7割の負担軽減になると自己負担は約6万円。さらに「身体障害者手帳」を申し込むと、月の負担額を収入に応じて「2万円以下、場合によっては無料」まで下げることができる。  これは命にかかわる手当てだから、もちろん必要な支援だよね。だけどそれを支える税金にも限りがある。だから実際に感染する前に予防ができたら、それが一番の「特効薬」にはちがいないんだ。

「日本は治療環境が整っている一方、予防についてはまだまだ不十分なところもあるんです。だからHIVに感染する人たちがうなぎ上りに増えているんですよ」

HIV感染、 世界に逆行し増え続ける

ストップエイズキャンペーンが行われた92年には、HIV抗体検査を受ける人が14万人近くまで迫った。けれど、その後17年間、検査を受ける人の数は4万~6万人の間にとどまって、検査を受けた人の陽性数は上昇を続けてきた。

 そうして、本田さんの見せてくれたのが図1だ。

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 この最新のデータによると、08年にHIVに感染、新たにエイズと診断された人は1557人。全国累計で1万5千人を突破した恰好だ。実際には検査を受けていない人を含めると少なくともこの3倍かそれ以上の人が感染しているといわれている。

「世界でどれぐらい増えているかといえば、96~97年をピークにもう頭打ちの状態なんです。新規の感染者は世界の流れとして減ってきているのに、日本は世界の趨勢とぜんぜんちがった傾向にあるんです。アフリカでもアジアでも先進国でもほとんどの国でHIVに感染する人は減り続けているのに、日本のこの状況はとても残念だなあとしみじみ思います」

 その理由は一にも二にも、HIV・エイズについて自分たちが十分な知識を得ていないこと、そしてきちんとした予防ができていないことにある。

「HIVとエイズって実は違うんですけど、ふつうの人はなかなか区別をつけるのって難しいんですよね。それじゃあHIVとエイズの違いからお話ししましょうか」

感染後、数年間は無症状で、「いきなりエイズ」

「まず、自分の体の中に、ヒト免疫不全ウイルス、HIVが入り込んできます。そうすると普段から兵隊のように身体を守ってくれている『CD4』というリンパ球がHIVによって次々に破壊されていきます。このCD4がどんどんどんどん失われていくと、病気から自分を守ってくれる兵隊がいなくなってしまうので、まったく無防備になってしまうんですね。身体が無防備になってしまって結核や肺炎などの感染症を起こした状態が、後天性免疫不全症候群、『エイズ』です。つまり、身体の抵抗力を弱めて(CD4を破壊)、さまざまな病気を引き起こす(エイズの状態にする)原因がHIVなんです」(図2)。

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 ここでぜひ知っておいてほしいのは、たとえHIVに感染しても「その直後に風邪やインフルエンザにかかったのと同じ症状が出る」だけで、そのあとは「本当に何も症状のない状態が数年間も続いてしまう」ことだ。

 そのせいでHIVに感染していたとしてもついつい見逃されて、「エイズを発症して初めて、自分が感染していることがわかる『いきなりエイズ』の人も増えています。もちろんHIVには感染しない方がよいのですが、残念ながら感染してしまっても、健康が大きく損なわれる前にそれを知ることができればいいんです。よいタイミングで治療を始めれば、元気で充実した生活をずっと続けることができます。そのためにも、検査による早期発見が大切なんですが……」

 そう言われて胸に手を当てると、思わずドキッとしないだろうか。具合が悪いから検査に行くんじゃなくて、何も症状がないからこそ、この病気は検査に行かなくちゃならないんだ。

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