「ネットメディアで″メシを食っていけるのか?″」

放送

更新:2011年11月21日 22:55

■菅原「ネットが儲かりにくいのは顧客にとってのムダが省かれたから」

池田信夫氏(以下、池田):こんばんは、アゴラ編集長の池田信夫です。毎月お送りしてますBLOGOS対談。今年最初の回は、「ネットメディアで飯を食えるのか」というテーマです。どのようにビジネスをやっていくのか。ビジネスの現場にいらっしゃる方に、今日はお話を伺いたいと思います。ではまず、本日のゲストをご紹介いたします。向かって右側が、VOGUE.COMなどのネットビジネス、およびiPad向けのVOGUE/GQなどのデジタルマガジンの事業開発を統括してらっしゃる田端信太郎さん。

田端信太郎氏(以下、田端):よろしくお願いします!田端です。

池田:向かって左側が株式会社日本ビジネスプレス代表取締役社長で、世界を知り日本を知る本格派経済ニュース「JBpress」を運営されています菅原聡さんです。

菅原聡氏(以下、菅原):菅原です。どうぞよろしくお願いします。

池田:お二人とも新しいメディアをスタートされたばっかりですが、まずは菅原さんから、現状は率直に言って、どのような感じですか?

菅原:正直、カツカツ。元気にサバイブしているというのが正しい表現かなぁと。

池田:田端さんはどうですか?

田端:売り上げのことを言うと、非常に伸びてはいます。ただ、VOGUE.COMは今まで紙が中心で来たんですが、それをガンガン置き換えていけるのかというと、収益性では、はるかに及ばないというのが現実ですね。

池田:僕も去年の3月に、アゴラブックスという小さな電子出版の会社を立ち上げたんですけど、これはまだまだ単体で儲かるという状態ではなくて、他のいろんなビジネスと合わせて何とかトントンくらい。まあ、この種のビジネス始まったばっかりですからね。それはもう、3人とも、ある意味同じだと思うんです。

去年の11月に田原総一朗さんともお話をしたんですけども、「新聞・テレビという既存のメディアが急速にダメになってきている。ダメになることは避けられない」というお話でした。ただし、潰れるだけでいいのかというと、読者の目線で言えば、今は新聞やテレビが担っているような「一定の質の情報を供給する」って仕事があるわけです。それがみんなブログやツイッターになっちゃうことはない。

今、菅原さんがやってらっしゃるJBpressでは、エコノミストやフィナンシャルタイムズのような海外のメディアのように、オーソドックスな意味でのジャーナリズムを、ウェブの世界でやろうということですね。

菅原:そうですね。具体的には、会社全体のモデルはもう少し複雑になりますが、基本的にはそういうことになります。いつも我々の仕事柄、他のメディアさんのコンサルタントをする業務も多いんですけども、その際にもいつも申し上げていることがあって、例えば雑誌業界の方とお話していると、「ウェブは特に儲からない」とおっしゃるケースが多いわけですよ。

(一同笑)

菅原:でも、特に儲からないということは、多分なくてですね。もし、全部なくなっちゃったら「それは困る!」とユーザーさんが思うだけの価値は必ず存在しているはずです。それなのに、「特に儲からない」と感じるのには、理由があるんです。

たとえば、ここに100ページの記事と100ページの広告で出来た典型的な雑誌があるとします。読者は、ほんの一部の記事だけを読みたいかもしれないのに、丸ごとお金を払って一冊買ってくれます。

また、広告主は本音では10万人の読者のうち1万人に広告を出したいんですが、150万円払って全員に広告を出して頂くわけです。これは言い換えると、非常にお客様に申し訳ないことをしているわけです。媒体にとって、とても大切な読者と広告主という二大顧客の双方に、かなりの無駄をおかけしてしまうシステムなんです。

提供側からしてみれば、それは儲かりやすくて当たり前であって、それがある意味で(ウェブ上では)適正化されつつあるということではないか、と思います。それが「特に儲からない」と錯覚されてしまう原因なのだと、私は理解してます。

池田:僕の印象ですが、広告単価が既存メディアとウェブで相当違うんじゃないですか?

田端:そうですね。前にモルガン・スタンレーにいたアナリストのメアリー・ミーカーが分析していたんですけども、接触時間と広告単価のシェアの比率で言うと、一番、プリントメディアが大きい。特に雑誌が大きい。接触時間が短い割りには、たくさんの広告シェアを取っている。で、ウェブメディアは圧倒的に接触時間が長いのに、広告単価は少ししか取れていない。そのギャップはマクロで見れば、徐々に解消されていくと思うんですが……。

(菅原さんの)JBpressを一読者として読んでいて、「品質高いなぁ」と思うんです。僕自身も品質を高い物を作っている自負はあるんですが、ネット広告の一番の問題点は、インプレッションとかクリックでいくらということになっていること。究極的に言うと、どこのリンクであろうが、1クリックは1クリックなんです。

2ちゃんねるであってもどこでも、たとえば1クリック50円だったら50円、VOGUE.COMであっても50円となってしまう。(値段を変えたら)一物一価の法則が働いて、「何でおたくだけ高いんですか?他と同じにしてください」ということになります。かなりのラグジュアリーブランドの担当者でも、クリック単価を気にするんですよ。というのは、「1クリックが御宅のビジネスにどういう効果があるんですか?」と問われたときに、ある種、購買担当者がボールペンを買うときにですね、一本100円のボールペンと、1本1000円のボールペンがあったら説明がつかないですよね。

それと同じような意味で、尺度がどうしても広告会社、広告主の間のマーケティングのリテラシーの中で、クリック単価が必要以上に過大に評価されているように感じています。

アゴラとかBLOGOSも含めて、私がライブドア時代に発見したのは、実はグーグルのアルゴリズムも進化して来ていて、クリックの後の「質」というのも広告単価に反映されるようになってきているんです。やっぱり、ちゃんとした物はクリック単価が高くなるというメカニズムが少しずつは入りだしてはいるんですけども、そうは言ってもせいぜい数割増しの世界でしかない。

「(自分のサイトは)クオリティが高いんだから、高い広告単価を出してくれ」というのが媒体主の思い上がりなのか、1クリック50円なり30円と決めている(広告の)出し手の側のリテラシーとか、ネット広告業界の慣習。エクセルで全て区別して、クリック単価で全て決めるというところが間違っているのか、正解なのか、ちょうど間にあるような気がするんですよね。

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