「世代間格差~若者は犠牲者!? 老人天国ニッポン~」

放送

更新:2011年11月22日 10:33

池田:皆さん、こんばんは。毎月1回お送りしていますBLOGOS対談。本日は『世代間格差』というテーマで3人のゲストに来て頂きました。
まず、人材コンサルタントの城繁幸さん、一橋大学経済研究所准教授の小黒一正さん、そして市川市の市議会議員を経て現在はNPO法人Rights副理事の高橋亮平さんです。3人は今年の6月、『世代間格差』という本を出されました。まず『世代間格差』という言葉そのものが、あまり世の中で知られていません。まず、簡単にこの言葉を説明して頂けますか?

城:皆さんも社会保障や年金の問題は実感されていると思います。どんどん条件も悪くなっている上に、保険料も上がって来ています。2004年の改革の時点では『100年は安心』と言われていたにも関わらず、よくよく見てみると、どうも大本営発表と数字が違っている。厚生労働省の発表だと、賃金上昇率は2.5%はないとおかしいのに、実は減っています。
どんどん積立金は黒字化して増えて行くはずなのに、もう今年から取り崩しが始っている。そして、財政赤字はどんどん積み重なっていく……。果たして僕らは、上の世代のように豊かな老後を迎えられるのだろうか? それを様々な分野、社会保障や財政などの有志が集まってまとめたのが『世代間格差』です。

『世代間格差』は、先日の日経新聞にも掲載されましたが、60歳以上と20歳未満の将来世代も含めて、社会保障費用として国にお金を払って、代わりに自分が受け取る金額。つまり受益と負担の格差です。これがだいたい1億2000万円を超えています。

池田:僕らが聞いてる数字よりも、だいぶ多いですね。これ(表1)は、経済財政白書で発表されたグラフです。この表では、60歳以上が5700万円のプラス。それに対して将来世代が約4000万円ものマイナスになっています。トータルで約1億円近くの差が生じています。この差がもっと大きい推計もあると?

城:鳩山(由紀夫)政権が盛大にばらまいたので、悪化したんですよ。

池田:これが一番はっきりした格差ですよね。他の指標ではここまで条件の差がありません。生まれた時期が違うだけで生涯収入が1億円も違うなんて、他にこんな国は見当たらないですね。

小黒:このような話は『世代会計』と言います。日本とアメリカなど、色々な国を比較してみても、ここまで突出した国は日本しかありません。90年代後半にアメリカの学者、ローレンス・コトリコフが有名な『世代会計』を作りました。『世代間格差』を把握するためのひとつの指標なんですが、これに当てはめると日本が最悪でした。そして、さらに悪化しつつあるというのが、今の現状です。

池田:なぜこのような状況になったのでしょう?

小黒:ひとつはやはり財政赤字です。過去、35兆円くらいの金額を毎年垂れ流してきました。そして、今回の民主党政権も44兆円と、場合によっては税収を上回るような財政赤字を計上している。それを延々と続けて来たんです。
そして、もうひとつの要因として、社会保障がありますね。年金とか医療が、ねずみ講になっている。現役世代が高齢者のために厳しい負担を強いられています。かつてのように高齢者が少なくて、現役世代が多い時はよかったんです。しかし、高齢化が進んでしまった。2075年くらいには、1人で1人の高齢者を支えなければならないことも分かってきました。このような予想が、世代会計という会計手法ではじき出されているんです。

池田:問題が非常に大きいところに特徴がありますね。常識外に大きい問題にも関わらず、一般的なマスメディアは取り上げていないし、政治家もほとんど話題にしていません。これがこの問題の特異性です。たとえば、先日の臨時国会での所信表明で菅(直人)首相が、高福祉高負担について話していました。マスメディアもこの件について論評しています。新聞によっては高福祉高負担に比較的好意的な論調もあれば、反対する論調もありました。
しかし、共通認識としているのが、日本人全員が高福祉になるか、高負担になるかの選択だけです。ところが、実態は先ほどのグラフ(表1)のように、老人の高福祉、若者の高負担なんです。まさかマスコミは実態を知らないはずはないんですが、僕が知る限り、このグラフが表に出たのは日経新聞に1回だけでした。

高橋:その前に朝日新聞の一面でも取り上げて頂いていますね。

池田:先ほども言いましたが、問題の大きさに比べて、あまりにも世の中で知られていない所が特異ですよね。場合によっては隠されているほどです。

高橋:この問題に関しては、選挙の票につながらないとの言い方をされますね。我々はこれをシルバーデモクラシーと呼んでいます。日本は高齢者の意見が過度に反映される民主主義になりつつある。どうしても最も弱いのが高齢者だという潜入概念が根強いんです。そして高齢者にばかり福祉を向けている。『世代会計』で誤解されるのが、『高齢者が得をするのは当然だ。オレ達だって若い時はさらに上の高齢者を支え得て来た』と言われるんです。
先ほどのグラフ(表1)では、高齢者の福祉だけを士的したのではなく、生まれてから死ぬまでに払った額と、得られる額の差なんです。それが今の60代と、10~20代との比較ということが重要な問題です。若い時に負担したとしても、高齢になった時点で返って来れば問題はないんですが、それすらなっていません。

池田:この問題が広く知られていない理由に、やはり分かりにくさがあるのでは? 『高福祉高負担』という言葉は、そこらのオジさん、オバさんでも分かるじゃないですか。増税か歳出削減か、日本全体を括った議論はそれなりに国会にも出て来るし、普通の人にも理解できます。でも、同じ年金や税金の使われ方が、世代によってこんなに大きく違うのは、中身を相当深く調べた人でないと気がつかないでしょう。それに厚生労働省の建前だと100年安心だと言っている。つまり、そんな格差はないというのが公式見解になっている訳です。非常に分かりにくい分、本当にやっかいですよね。

城:その通りです。メディアの前にもフィルターがあるように感じます。こういった話をしても、取り上げてもらえないし、オンエアでカットされたりする。

池田:へ~。

城:年金を減らすしかないと言うと、オンエアでカットされますから(笑)。やはりシルバーデモクラシーはメディア側にも定着している気がします。

池田:メディアや政治家にしても、取り上げる側の人は、むしろグラフで言えば向かって右側。つまり得をしている人です。僕もそうですが……。そういった人たちは、自分たちが得しないことに対して熱心ではありません。先日もホリエモン(堀江貴文氏)と話をしたんだけれど、『では、団塊の世代の平均寿命があと25年間あるとして。25年間この構造が維持出来るのか?』と。ほって置くと何が起こってしまうのか。それが次の問題でしょうね。

小黒:このご指摘はすごく重要で、このグラフ(表2)を見て下さい。これは横軸が時間、2010年あたりから水平になっている線が、家計の持っているお金になります。このお金が企業や政府に流れて経済が安定する。明らかに下の細線が増加しているのが分かりますね。これは政府が発行している公債で、政府の借金が企業に流れるお金を食いつぶしている。このまま行くと2020年くらいに借金が全てを食いつぶしてしまう。これは大変なことですよ。お金を全て食いつぶしてしまうと、企業は生産ができなくなります。

世代間問題は、あと10年くらいで逃げ切れる人はいいんです。でも、そうでない人にとっては、全ての世代に当てはまる問題になっています。だからこそ、一致協力してこの問題を解決しなければならない段階にまで迫っています。現時点で、2020年あがりがリミットとされています。みずほ総研なども推計されているますが、だいたい似たような状況のようです。しかし、人によってはあと3年くらいで破綻するとも言っています。

池田:20年というのは、比較的甘い推計ですよね。

小黒:そうですね。でも、それすら10年くらいしかありません。なるべく早く解決しなければならない。問題を解決するのに一番重要な財政赤字をどう解決するのか。財政赤字の解決のために、歳出削減と増税の対立軸で語られますが、その時に重要になってくるのが『世代間格差』です。この辺りまで踏み込むのが重要でしょう。

池田:財政破綻に関する問題は比較的語られている感覚あります。それは全国民の問題という印象があるから。実は財政問題においては、例え国債が売れなくなると言う問題が起こらないとしても、『世代間格差』の問題はなくならでしょう。実はここにふたつの問題が隠されています。先日、土居丈朗さん、竹中平蔵さん、鈴木亘さんと座談会を行ないました。来月ぐらいに本が刊行されるんですが、その時にも『財政破綻に至った場合、国債が売れなくなるとか、インフレになるとか、金利が上がるとか、それらの心配はもちろんするし、避ける方法だってあるかもしれない。しかし、それが起こらなかったとしても、莫大な『世代間格差』は治らない』。これだけ深刻な問題なのに、ほとんど議論されないんです。

小黒:本当に議論されないですね……。

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