政府が東電を叩く真の理由とは?仙谷氏の「恫喝」を受けたキャリア官僚、古賀茂明氏が明かす

放送

更新:2012年08月22日 12:17

 東日本大震災から3ヶ月、失態続きの菅首相に与党民主党のお家騒動、復興よりも政争に明け暮れる国会議員へ失意の声が上がっていますが、被災地の復興事業や、福島第一原発をめぐる状況は、日々変化しています。

 今回のBLOGOSチャンネルは、原子力行政を管轄する経済産業省の現役キャリア官僚、古賀茂明氏をお迎えしました。福島第一原発の事故の裏で、政府の責任そっちのけで東電バッシングが広がる真の理由とは。なぜ東電を存続させる賠償スキームが出来上がったのか。カネボウやダイエーなどの経営再建に関わってきた古賀氏が、霞ヶ関の官僚達の思惑を全て語りました。

 古賀氏は現役官僚の中では珍しく、率直な政府批判をすることで知られています。昨年10月には、民主党が進める公務員制度改革に関して「非常に問題だ」と参院予算委員会で証言。仙谷由人官房長官(当時)が「はなはだ彼の将来を傷つけると思います」と異例の警告を発したことで、「古賀氏に対する恫喝に当たるのでは?」と各界の議論を呼びました。【構成:安藤健二(BLOGOS編集部)】


市民運動で人気の「再生可能エネルギー」


池田信夫氏(以下、池田氏):こんばんは、毎月1回お送りしているこのBLOGOSチャンネル。今日は今、話題のベストセラー『日本中枢の崩壊』 の著者であります古賀茂明さんをお迎えします。今日はよろしくお願いします。

古賀茂明氏(以下、古賀氏):よろしくお願いします。

池田:ベストセラーですから皆さんご存知の方も多いかと思いますが、古賀さんは現役の官僚でありながら日本の政策決定の裏側をお書きになって、それがいろいろな意味で反響を呼んでいます。古賀さんは今話題の原子力行政に長く携わっていたということですから、今日はその辺からお伺いしたいと思っています。

ちょうど今は国会の延長に絡んで、また原子力の問題が出てきました。再生可能エネルギー促進法案。「あれを通せば辞めてやる」という(菅首相の)奇妙な条件がついているようですが、あれはどういうことなんですか?

古賀:いやぁ、私も驚いたんですけど、菅総理は、もともと市民活動から政治の方に入ってこられたという歴史を持っておられます。この再生可能エネルギーの法案というのは、非常にいい法律だと思うんですが、必ずしも政府の中で一枚岩に「是非やろう」ということにはなってないようなんですね。

再生可能エネルギーに一種の補助を与えるわけですから、電力会社にしてみればライバルを育てるわけです。それから、電力料金にその分が上乗せされる。消費者のためにどうかということもありますが、政府と役所の観点からすると「経済界に非常に影響があるんじゃないか?」という懸念があるわけです。

そんなに(首相が言うように)ドンドン推し進めていいのかどうかという不安を持っているんだけど、民主党の政策の旗になるということで、恐る恐る(法案を)出したと。でも、自民党にも電力会社寄りの人は多いので、反対している(民主党内の)勢力からしてみれば「うまくすれば通らないかも」という期待を持っている人もいるんです。

そんな中で今回、菅さんが大きなテーマとして打ち出してきた背景には、再生可能エネルギーは自民党の守旧派は賛成しにくいし、民主党内でも電力会社系の人は賛成しにくい。そういうところで、市民運動的には非常に人気があるテーマだということがあるんです。これを自分が取り上げて「何が何でもやるんだ!」という姿勢を見せることによって、もう一度、政権の浮揚に活用したいと。そういうお気持ちがあったのでは。

市民運動家に戻った菅首相


池田:僕が異様な感じがしたのは、彼が日曜日の勉強会で「私の顔を見たくなかったら、この法案を通してください」と、にこやかに言ってたじゃないですか。あれなんかは、総理大臣というよりは市民運動家の菅直人に戻ったような印象を受けました。

古賀:あれは私もちょっと驚きました。「あそこまでパフォーマンスをやるかなぁ」とも思いましたけど、菅総理が原点に戻って、ある意味で永田町では四面楚歌なんですけども。

池田:(笑)

古賀:市民活動家の視点から見ると温かい目で見られているので、孫正義さんを初めとして支持してくれる人がいる。「俺にはこんなに味方がいるんだ!」ということで元気がもらえる。自分の原点に戻ったみたいな感じで、これで「もう一回頑張ってみよう」みたいな感じになちゃったと。

池田:その辺に今の民主党政権が混乱する一つの原因があるような感じがしますね?

古賀:やっぱり民主党は「政治主導」を掲げてきたんですけども、政治主導をやるためにはまずトップが何をやりたいのかをはっきり持ってないといけない。でも、民主党政権の場合にはマニフェストはあるんですけども、リーダーが本当に何をやりたいのかが見えない。そのときどきによって、普天間基地の問題にしても、温室効果ガスの25%削減というのも、ビジョンや戦略を持っているわけではなくて、そのときどきで人気が取れるテーマに飛びついて、半分思いつきみたいに言ってしまう傾向があります。

今回の再生可能エネルギーは、菅総理はもともと関心はお持ちだったと思うので、完全に思いつきだとは言いません。でも、やっぱり人気を取れるテーマに飛びついているような印象を国民の皆さんも感じているんだろうな、と思いますね。

池田:菅さんは、ある意味若い頃からある意味では、ずーっと(社民連という)野党勢力の中でも非主流の非常に小さい党派に所属されていたわけですね。言ってみれば、国家権力に対して「違うぞ」とただ言ってればいいところで、何十年もやってきた方です。その人が、国家権力を動かす立場に立ったんだけども、そのことに本人が自覚的でないようです。

古賀:そうですね。批判するだけであれば、世論を味方につけて批判して、次の選挙で票をたくさんもらうということで、目的は達成できるわけです。でも、政権与党になった場合には、それだけでは終わらなくて、単に人気を取るだけでなくて政策を実現しなくちゃいけない。いわば責任を負うわけですが、そこ(政策実現)に繋がる仕組みをどれだけ持ってるかが問われているわけです。残念ながら民主党の場合は、そこに至ってないという気がしますね。

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