河野太郎氏「エネルギー政策を考える~″脱原発″は本当に可能なのか~」

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更新:2012年08月22日 12:14

 自民党若手のホープ、河野太郎氏(48)。長年原子力政策を推進してきた党内にあって、原子力からの脱却や再生可能エネルギーの実現を舌鋒鋭く訴えている。5月16日の22時半に開催された「BLOGOSチャンネル」では、経済学者の池田信夫氏との間で熱いトークが繰り広げられた。

 イベント開始前、案内するためにエレベーター前で待っていると、フラリとソーラーパネル付きのバックパックを背負って一人で現れた河野氏。大勢の秘書やボディーガードを連れて来るのかと思いきや、非常に身軽な格好だ。「こんばんは、今日はよろしくお願いします!」と気さくに挨拶。「いかにも自民党」ではない、新世代の政治家らしさが現れていた。【構成:安藤健二、大谷広太(BLOGOS編集長)】


あまりにもルールを逸脱した「賠償スキーム」



池田信夫(以下、池田):こんばんは、アゴラ編集長の池田信夫です。毎月1回お送りしておりますBLOGOSチャンネル。今回は自民党衆院議員の河野太郎さんをお迎えして「"脱原発"は本当にできるのか」というテーマで伺いたいと思います。河野さん、よろしくお願い致します。

河野太郎(以下、河野):こんばんは。よろしくお願い致します。

池田:河野さんは先日の記者会見で、民主党政権の批判をされて非常に大きな反響があったわけですけども、特に先週の13日に閣議で出てきた賠償スキーム、あれが国会でこれから大きな問題になると思うんですが、それについてお話を伺えませんか。

河野:まず福島第1原発の状況を考えると、政府と東電はもっと真面目に事故処理の対応をしてもらわんといかんな、という気がしております。いろいろな物が、後から後から出てくる。あるいは、「気づきませんでしたー」みたいな処理では困る。まずは、それをキチッとやってもらうのと同時に、一体全体、何が原因でこういう事態になってしまったのかを、はっきり調査をして「こういうことなんだ」という結論を出さないといけません。そうでないと、「誰が悪いのか」というのは決まらないはずなんですね。枝野さんが「これは全部、東電に背負ってもらう」とおっしゃいましたけど、官房長官がそういうのは勝手ですけど、決めるのは最後は司法です。裁判で係争になったら(東電が)「いや、うちに100%はおかしいです」という話になりかねない。

 まず最初に賠償のことを考えたときにやらなきゃいけないのは、独立した調査委員会をちゃんと作る。政府が言ってるのは、「政府の元に作ります」しかも「閣議決定でやろう」ということを言ってますんで、「ちょっと待ってくださいよ!」と(思うんです)。今までの政府の原子力政策も対象にしなけりゃいけませんし、事故が起きてからの政府の対応、東電の対応ももちろんやらないといけません。政府が調査の対象になるわけです。

 「政府を調べる委員会を、政府の元に作ります」というのは、あまりに独立性がないんですよね。我々が言ってるのは、国会の中に独立した調査委員会を作って、そこで“原子力村”と呼ばれている勢力から独立した方々が調査に入る。この方々が調査をキチッとやって報告を出した上で、東電と政府の賠償の割合は当然、そこで決まってくる。それをやる前に「東電が100%です。こういうスキームです」というのは、あまりにもルールを逸脱してませんか。というのが一つ目ですね。

 で、独立委員会の調査に基づいて「こういう風にやります」と支払いが決まります。それが決まるまでの間も、額は確定しないけど東電に賠償金を払ってもらわなきゃいけません。そうすると、金融機関からの借り入れとか社債とかあるわけですが、少なくとも賠償金が確定するまでは、「資産を保全しといてくださいね」と。政府がキャッシュフローを保証するから、「皆さん、東電にはちゃんと物を売ってくださいね」「取り引きを続けてくださいね」ということを保証する。そこまでやれば、電力を供給するという東電の仕事は続いていきますから、その状況で報告書が出て賠償がいろんな計算をして確定をする。それをまずやるのが政府の仕事だと思うんです。

 それで、東電の支払う分が決まってくる。東電は福島第1の廃炉もしないといかんし、賠償もある。そうなると東電は相当お金が大変で、資産を全部出しても賄えない。すると東電はどこかの段階で、破たん処理をしないといけなくなる。そうするとルール上、「経営陣は総退陣してください」となるんで、「7000万円もらってるのを3000万円にしろ」とか、そういう話ではなくなります。経営陣は総退陣。「いくらにしろ」というのは違う話だと思いますね。
 
 それで株主は当然、企業が破綻するわけですから、100%減資になりますよ。金融機関も貸したお金は、ある意味、貸し手責任が問われると。賠償金は東電が払えるところまで払って、払えない部分は国が責任を持つ。ただ、いきなり国民負担にするのではなくて。(使用済み核燃料の)再処理をするために、毎年5000億円ずつ電気料金に上乗せして国民から集めている。それが、再処理用に2兆4000億円たまっているわけですから、これだけの事故の後、核燃料サイクルがこれだけたちゆかなくなったときに、「再処理をやるんです」と言い続けられるかというと、そうはならないと思います。
 
 「再処理のため」と積み立てた2兆4000億円は法律改正をして賠償金の支払いに当てますと。それでも足りない物は、「申し訳ないけど政府の責任なので、最後は国民負担をしてください」と言う。そういう順番で流れないとおかしいと思うんですね。ところが、今度の奴はなんだかムチャクチャで。

誰が見たって東電救済案


池田:先週の13日の閣議決定で出てきた、いわゆる賠償スキームをご紹介します。ただ、この法案は今国会には出さない方向性のようですね?臨時国会に先送りするというような。

河野:まさかそうならないとは思ってましたが、民主党が6月22日に本当に国会を閉じるのであれば、臨時国会まで先送りになるのかなぁと。まだ法案にもなってないですし。

池田:まだ飽くまでも素案みたいな物なんですけど、賠償支援機構のような機関を国が作って、そこに国が交付国債という形で5兆円くらいお金を融資するという形になっている。新機構が(賠償金を)立て替えるような形で、東京電力に優先株のような形で出資すると。飽くまでも被災者に対して直接賠償をするのは、東京電力という形になってます。

 このスキームの特異なところは、新機構に電力9社が入っている。今回の事故とは関係ない関西電力とか、(震災の)被害者の東北電力まで、新機構に賠償金の半分くらい負担することになってます。最終的には東京電力が8~11兆円とか巨額なお金を賠償すると。東京電力は破綻せずに、会社として存続をするということになってます。会社更生法で整理するのとは違うという形になってますね。何より違うのは、「東京電力の株主が守られる」ということですよね。

 普通の資本主義の常識では、破綻処理をした場合に、債権者は多少は債権をカットするけど、株主の持つ株券は、100%紙切れになるわけです。でも、株主を守っちゃうと、債権者の皆さんに「ちょっとお願いします」と言うわけにいかないのでは?

河野:いかないですよねー。でも、この前、枝野官房長官が「金融機関の債権カットは当然だろう」と言って、銀行の株がダーッと安くなったわけです。これはムチャクチャな話で、どういう理屈で債権カットを「お願い」されたのか分からない。「断ってもいいの?」となっちゃう。銀行の経営者からしてみると、官房長官にお願いされたからって債権カットに応じたら、「どう株主に説明するんだ?」となってしまいます。もし株主から裁判で訴えられたら「官房長官が言ってるのだから行政指導と同じで命令なんです」ということを、裁判所に認めてもらわんといかんということになりますよね。

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池田:しかし、債権カットをする場合は、まず株主が100%減資して株券が紙切れになった上でやるのなら分かるのですが……。最近の例でいうと、日本航空の破綻がそうでしたね。あの場合は、債権は一律87.5%カットされたけど、株券は完全に紙切れになってしまった。それが本来の順番ですよね。

河野:株主がそのまま株を持っていると、「今は赤字だけど経営が良くなって黒字になったら、また配当がもらえます」って話になるわけですよね。債権カットをした側は一体なんだったんだって話になってしまいます。もともと「株主が責任取るのよ」というのが、株式会社の興りですから。(株主が)「私は責任取らないけど、貸してくれたあなたはチャラにしてください。国民の皆さんは(金銭を)負担して、私の利益を守ってね」という話ですから、これは全く辻褄が合わないんですよ。これは外国から見たら「やっぱり日本は変な国だ」なんてことにならざるを得ないですよね。

池田:電力利用者の側からすると一番気になるのは、「これで電気料金に転嫁されるんじゃないか?」ということですよね。その場合、株主を守ったということは、電気料金の値上げに繋がる可能性が高いと思うんです。東電の場合は、純資産が3兆円くらい。社債が4兆5000億、長期債務が3兆5000億。トータルで11兆円くらいの株主資本と債権であるわけですね。そうすると、さっきのように(賠償金が)最高額で10兆円としても、さきほどの株主資本と債権を9割くらいカットしちゃえば、損害賠償を100%返すということも計算上は可能なんですね。そうすると、電気料金を上げなくて済む可能性もあると。でも、こういう風に丸ごと守っちゃうと……。

河野:株主と金融機関を守っちゃうと、本来はそこをカットして賠償に回せるはずだったのが回せなくなりますから。あとは「国民の皆さんお願いします。電気料金上げさせてください」って言われてもねー。それは、年金で一生懸命つつましく暮らしてる方には「それはないだろう」ってことになっちゃいますよ。しかも、全く資本主義のルールから逸脱してますから。しかも、日本は政府が「債権カットしろ」と言ったらされちゃう国だ、なんてことになったら、まともなマーケットにはならないですよね。こんな馬鹿なことを許しちゃいかん、と思いますね。

池田:何で東電をわざわざ……。誰が見たって東電救済案なんですけど、政府からはいろんな言い訳が出てますよね?

河野:しかし、よく分からないですねー。最初に言われたのは「東電が破綻すると大停電になります」。それはウソです。JALだって会社が破綻したって、飛行機は飛んでるわけですから。次に言われたのが、「東電が破綻すると社債がダメになって大変なことになる」。これだって、電力債は他の債権より強いわけですから、電力債には影響がありません。そういうと、「電力債で持ってっちゃうから、賠償金にはお金が回らなくなります」と言う。それは前に言ってたのと、全く逆の理屈じゃないか。それは、政府に払ってもらって、政府が東電に「払え」と言えば、優先順位が上がるとかいろいろありますんで、今言われている“東電を守らなきゃいけない理屈”っていうのは、納得できる物は一つもありません。

池田:一番びっくりしたのは、国会で海江田さんが答弁された「株主が93万人もいて可哀想だ」という物で。一応、日本は資本主義なんですから、会社が倒産すると株主が損するのは普通当たり前の話なんですね。

河野:それで株式市場が成り立っていて、株価が高くなったり安くなったりしているわけですからね。「たくさん株主いるから可哀想です」と言うんだったら、「どんどん株主を増やせば国が守ってくれるのか?」という話になるわけで、それは理屈としてはあり得ない。

絵を描いたのは財務省か?


池田:おそらく一番最後に残ってる理屈があります。それは先ほど河野さんもおっしゃっていたのですが、テクニカルな話なので、ちょっと詳しくご説明します。会社更生法で会社を整理すると、株主が100%紙屑になっちゃうんですけど、債権者の債権の優先順位がつくんですね。一番優先なのは、税金とか国に絶対払わなきゃいけない物、東電であれば発電所を動かすためのコストが、債権として優先されるわけです。

 その次が担保付の債権、東電の場合は社債が担保付なんだそうで優先順位が高いんですね。で、一番、劣後するのが担保の付いてない一般債権ですね。今回大きな問題になってるのが、損害賠償請求権というのが、一般債権なんですね。そうなると、優先順位の高い物から守られていきますから、劣後する物からカットされてしまう。さっきの担保付の社債が残って、賠償請求権がカットされてしまう……。これは、海江田さんや細野さんが、昨日あたりテレビで説明していたロジックですよね。しかし、これは僕は理屈としてはおかしいと思うですが、その辺いかがですか。

河野:おそらく2つ考え方があって、1つは一般担保付社債っていう「守られた社債」は、電力会社以外にはJTとかNTTとか、半官半民のところが出してるのが多いんです。実は、これまで一般担保付社債を出している企業体が破綻したケースってないんですね。すると、「どういう扱いになるかよく分からない」って専門家の方も言ってて、裁判所に行ったら「そこもカットしなさい」となるかもしれない。

 もう一つは、「東電と被災者で直接やり取りをしろ」と言うと、賠償金の請求をめぐって東電が「いやいや、それは違う」と裁判になって、なかなか支払われないかもしれない。そこで国がとりあえず払っておいて、「国に返せ」と言えば優先順位が上がるわけですから。やりようはいくらでもあると思います。だから、「東京電力を守らなきゃいけない」という理屈には、やっぱりなり得ないと思いますね。

池田:「東電を救済する」という結論を最初に決めて、理屈をいろいろ考えてるような感じなんだよね。

河野:これはですね。これは経産省の課長さんから聞いた話ですが、「絵を描いたのは財務省です。財務省は税金をビタ一文、この(福島第1原発の補償の)ためには使いたくない。財政赤字を何とかしないといかん、というのが財務省の至上命題ですからね。とにかく金を一円も出さない。そのためには、東電を残して交付国債を入れて、「50年かけても100年かけてもそれを返すんだ」。要するに、交付国債を別枠で出しておけば、一般歳出には傷が付かない。東電を残すという絵を財務省が描いて、東電の経営陣がそれに乗って、金融機関も「私達の債権も守ってくださいね」というので乗って、出来たのがこの案だと。国民はそんなことやられちゃうと、たまったもんじゃない。

池田:8兆円とか10兆円とかいう損害が出ることが、ほぼ間違いないわけですから、何兆円かの損害を誰かが絶対に負担しなきゃいけないわけですね。それで河野さんがおっしゃったように、国が一般会計で負担しないように、こういうスキームを作ったとすると、結局、東電がかぶった分は、東電の収入を上げてペイするしかない。電気代を上げることによって転嫁するしかない。国民にとってみると、税金を取られる代わりに電気代が上がるわけで、あまり違いがないことになってしまう。

河野:国民からしてみると同じですよね。関電とか北海道電力とか東北電力は全然関係ないところで負担するわけですから。しかも保険だというんですけど、「事故が起きた物に対して払ってください」というのはひどいよね。これだけのことをやって、「原子力は引き続き民間企業にお願いします」ということにこれからもなるのかってことですよね。ここは、やはり公平性の観点から筋をきっちりと通さないと、本来、一番守られない人が守られて、国民がその分穴埋めをするというのは、許しちゃいかんと思いますね。

池田:これは国会でも、この問題が追求されるわけですか?

河野:当然です。まだ法案になっていませんが、法案になって出てくれば通らない案ですね。この前、外資系の経営者の方と飯を食っていましたら「まさか報道されているような馬鹿な案が出てくることはないよね」と言われたんで、「いや、明日、閣議決定らしい」と言ったら「日本は資本主義や民主主義のルールは関係ないのか!」と言われました。(日本の)風評被害になると思いますね。資本主義の中で「こういう順番で責任を取る」というのを全部ひっくり返すわけですし、こういうプランを出しておきながら、官房長官が「金融機関は債権をカットしろ」と言うわけですから、これだと資本主義だと言いながら、「政府に因縁をつけられたら千両箱を差し出さなきゃいけない」みたいな、越後屋とお代官の関係になってしまう。そんなところに、外国からなかなか投資が来なくなるんじゃないかと思いますね。


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