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先進国クラブ(OECD)の中の日本(人口と移住)

OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)は、経済先進国クラブとも呼ばれ、加盟が認められることによって発展途上段階を脱して経済先進国の仲間入りを果たすと考えられてきました。1961年発足当初からアジアで加盟していたのはトルコだけで、日本はその3年後の1964年に加盟し、韓国は更にそれから32年後の1996年に加盟しました。現在の加盟国は34ヶ国ですが、いわゆるBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)はまだ加盟していません。OECDは、加盟34ヶ国とBRICs等加盟候補国について様々な統計データを公表しています。そのひとつであるOECD Factbook 2014 のトップカテゴリは「Population and Migration(人口と移住)」です。出生率の低下と人口の減少という経済先進国に共通する問題を緩和するには、移住による人口移動が避けて通れない課題であるからです。このカテゴリにおいて、日本は OECD 34ヶ国の中でどのような位置にあるのかをみていきたいと思います。

まず、出生率(fertility rate)についてみてみます。その年の子供の出生数をその年の15歳から49歳までの女性人口で割って出生率としています。OECD Factbook 2014 で加盟34ヶ国全部のデータが揃っているのは2010年までです。出生率は2-3年で大きく変わるものではありませんから、これがほぼ現状と考えて良いと思われます。この2010年のデータをもとにOECD加盟34ヶ国を出生率の低い順に並べてみました。
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人口の維持に必要な出生率は2.01程度とされていますから、EU28ヶ国のうち人口がある程度大きく、子供の出生によって人口減少を回避していけそうな国はフランスだけです。英国と米国もそれに次いでかなり出生率が高く人口減少速度はそれほど速くはなさそうです。それに対して、欧州の人口大国であるドイツ・スペイン・イタリアと極東の日本・韓国は、出生率が著しく低く、人口の高齢化と減少がきわめて速く進んでいきます。

それでは、OECD34ヶ国の人口増加率の将来の見通しはどうなっているのでしょうか。OECD Factbook 2014 では、2012年までの人口の実績と2020年および2050年の加盟国の人口推計を出しています。2010年から2020年までの近い将来の10年間の人口増加率と2020年から2050年までの少し先の30年間の人口増加率に分けて棒グラフとして重ね、OECD加盟34ヶ国を2010年から2050年の40年間の人口増加率が小さい順に並べてみました。
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日本は、2050年までに人口が24%減少する見通しにあって、OECD34ヶ国の中で人口減少率ダントツの第1位に躍り出ています。他方、ドイツ・スペイン・韓国など、出生率が日本より低かった国の全てが、人口増加率(減少率)では日本よりかなり改善される見通しになっています。それはそれらの国々の政府が対策を講じるからです。勿論、基本は出生率を改善するためのいわゆる少子化対策ですが、それだけではなく、ほとんどの国が外国人移住者を受け入れていく政策をとっているかあるいはとっていこうとしているからです。

国の人口統計は、その国の国籍を持っている人の数ではなく、その国に居住している人の数の統計です。したがって、国外に住んでいる日本人(日本国籍者)は日本の人口には含まれず、永住権を持ち現に日本国内に住んでいる外国人(外国籍永住者)は日本の人口に含まれます。国連は、国際的な移住者数残高(international migrant stock)について詳細な相互マトリックスデータを公開しており、OECDもそれを利用しています。2013年央において、移住者(外国居住者)数残高は世界全体で232百万人でした。これは世界人口71億人の3%に相当します。ここでは、OECD34ヶ国に居住する移住者数残高を抽出し、OECDの人口(2012年)に対する移住者数残高の割合をグラフにしてみました。人口に占める移住者数残高比率の高い方から順に並べています。
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人口に占める移住者数残高(定住外国人数)には留意すべきことがあります。多くの国では外国人の女性が生んだ子供でも希望すれば出生した国の国籍を取得することができます。したがって、移住者の2世・3世の多くは外国人ではなくなっていきます。ですからこの移住者数残高(stock)というのは、概ね、外国で生まれて移住してきた外国人1世の残存数に近いと考えられます。移住1世でも国籍を取得して帰化した場合は外国人ではなくなりますから、当然この統計には含まれません。

さて、日本は人口に占める移住者(定住外国人)数残高が2%で、OECD34ヶ国の中では少ない方から3番目です。しかも、日本の定住外国人数には在留特別許可者(すでに太宗が1世ではなく2・3・4世になっていると考えられます)が多数含まれていますから、移住者1世の数は更にずっと少なくなります。また、日本より少ないメキシコは、異常に高かった出生率が経済成長によってようやく2.05%まで低下してきた国ですから、移住して出て行く人は多いですが移住して入って来る人はほとんどいません。また、ポーランドは、出生率が日本よりも低い1.38%で、しかも現在の定住外国人数残高比率も日本より低い2%ですが、前掲の人口増加率グラフでは日本よりも穏やかな人口減少となる見通しになっています。これは今後(おそらくウクライナを含む近隣国からの)外国人移住者の受け入れを行っていく政府の方針に踏まえているのではないかと推定されます。

上のグラフは、人口と移住者1世数の「残高(stock)」でしたが、他方、1年でどれくらいの外国籍者に対する定住許可(永住許可)を出しているのかという「流入(inflow)」速度の問題があります。OECD Factbook 2014 には定住外国人流入数(Permanent inflow)の統計があります。しかし、残念ながら加盟34ヶ国全部の数値が把握されているわけではありません。ここでは数値が把握されている2011年の23ヶ国のデータをもとに、人口1千人当たりの永住許可者数を大きい方から順に並べてみました。(人口千人当たりにしましたので、一つ前のグラフの人口比率パーセンテージの10倍になっていることに注意が必要です)
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日本は、人口1千人当たり0.5人、すなわち人口1万人に対して5人の永住許可者しか受け入れておらず、人口急増に悩んできたメキシコとほとんど変わりません。米国は人口1千人当たり3.4人の永住許可者を受け入れ、全人口の15%の定住外国人残高があります。オーストラリアやニュージーランドは人口1千人当たり10人(人口の1%)も毎年受け入れています。それにしても、ヨーロッパの国々の人口比受入数はあまりにも大きいような気がします。

そこで、受入数と受入理由(Permanent inflows by category of entry)をグラフにしてみました。国の順番は上のグラフと同じです。
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まず、EU諸国には自由移動(Free movements)が多いのが目立ちます。これは、EU諸国間は国境を越える人の移動が自由なので、EU域内の移住者が多く含まれているためではないかと推定されます。EU域内にも経済格差があり、貧しい国から豊かな国への移住もありますから域外からの移住と区分するわけにもいきません。他方、日本や北米(米国・カナダ・メキシコ)には自由移動を理由とする永住許可はありません。

総じて、就労目的(Work)はそれほど多くなく、就労者同伴家族(Accompanying family of workers)や(おそらく帰化者や定住許可者の)家族(Family)が多くなっています。人口減少対策として一番望ましいのは、新しい国に溶け込みやすい子供やこれから子供を産む若いファミリーが移住してくることです。それに対して、単身で出稼ぎにやってくるような外国人は、所得を送金して国内であまり消費しなかったり、仕事がなくなった後にそのまま不法滞在化してしまう懸念も高くなります。テンポラリーな仕事に出稼ぎ外国人を使うことは人口問題の解決策ではなく、一時的な人手不足対策にしか過ぎません。(それはそれとして必要かもしれませんが)

日本以外の国について少しふれると、米国は、年間に106万人もの永住許可を与えています。また、人道的(Humanitarian)永住許可については、米国169千人・カナダ36千人・オーストラリア14千人・英国とスエーデン13千人・ドイツとフランス11千人などが主な受け入れ国となっています。ちなみに日本は僅かに3百人でした。その面でも、日本は世界の経済先進国としての役割をほとんど果たしていません。

さて、以上、人口と移住(Population and Migration)に関して、OECD34ヶ国(経済先進国)の中で日本がどういう位置を占めるているのかを見てきました。その結果、日本の異質性は著しく際立っていました。人口の高齢化と減少という先進国病は、欧州のOECD諸国よりも遅く始まりましたが、その分進行速度が速く、今後はどの国よりも進行速度が速まっていきます。人口の問題は、出生率を上げるにしても外国人移住者を受け入れるにしても、10年20年の期間で成果を上げることはほとんど困難です。また結果を求めて急ぐと弊害の方が強く現れる危険もあります。ですから、出来るだけ早く始めて、時間をかけてじっくりと進めていく必要があります。先行しているOECD諸国の抱えている弊害の問題ばかりに目を向けて、自国の置かれている状況を認識せず、国境を閉ざしたままにしていると、日本の衰退は回復不能なものになってしまう可能性があります。

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