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BPO10年、いや20年のあゆみ



 放送倫理・番組向上機構BPO。設立から10年になります。
 このたび編纂された「BPO10年のあゆみ」にぼくも寄稿しました。許しを得て転載します。


 20年前を思い出す。放送局が政権交代に荷担したとされる事件をきっかけに第三者機関論が盛り上がった。地デジへの移行が議論され始めたころだから、ソフトもハードも放送の根底が見直される時期だった。

 郵政省が第三者機関の設置を提案した96年当時、私は郵政省官房総務課の担当として、カルト宗教にテレビ局が取材ビデオを見せた事件の収拾に追われた。BPOの前身となるBRC設立直後にはポケモンショックの後始末に奔走した。内閣法制局と憲法論でやり合った。

 どうにかしろという政治プレッシャーと、政府は介入するなという民間との板挟みの中、怒ったふりをしつつ業界の自浄作用に委ねるという行政だった。そんな政府は日本だけだろう。フランスでスパイっぽいことをしていた頃も、アメリカで研究していた頃も、独立行政機関が放送局にずかずかと介入する姿を見て驚いたが、日本はかたくなに番組規律を放送局の自律に委ねている。

 それは、マズいことがあっても業界が何とか対処するという信頼と、多少マズい表現があっても国民に受容力があるという信頼との、二重のフィクションから成り立っている。独立行政機関を置く代わりに民間のBPO、という世界的な実験であり、それに成功しているのだ。政府や国会のご指導がなくても自律するというメカニズムが働いていることを、日本は胸を張ってよい。

 だから、BPOの責任は重い。90年代末、郵政省が総務省に移行する前、時の橋本政権が主張する放送の独立行政機関に省庁再編担当として私は、「んなこたあ民間の自浄自律でやって行ける」と真っ向から反論し、おかげで役所を辞めることになってしまったが、だから自浄自律でやってもらわねば困る。

 数年前の民主党政権でも、総務大臣が「言論の自由の砦」という構想を掲げ、私はそれはBPO強化以外に方法はないと主張し、議論の結果うやむやになってしまったが、だから自浄自律を強化してもらわねば困る。

 BPOは業界の任意団体である。法的な公共機関ではない。だから、もろい。ガバナンスを緩めると、あっという間に崩れる。フィクションが崩れれば、ひとたまりもない。ホテル業界の信頼感を食品偽装が一瞬で崩したように、戦後70年かけて築いてきた放送業界の信頼感だって盤石ではあるまい。

 だが、BPOに期待するのは、守りよりも、攻めだ。放送番組の規律は、どうにかこうにか、成り立っている。他方、インターネットのコンテンツは問題が噴出していて、規制論がくすぶっている。そして、放送と通信が融合し、放送番組と通信コンテンツとの連動が現実のものになっている。テレビ番組とウェブ情報がスマホ画面に同居している。

 放送以外の、スマホやネットの情報を、どう規律し、どう自由を保つのか。政府の腰が重いうちに、民間として対応策を用意する。そんな役割をBPOならば果たせるのではないだろうか。情報社会の先導役として機能されることを期待する。

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