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法改正で何が変わるのか|危険ドラッグ対策

政局への思惑からどたばた劇が展開している今国会で、薬事法(医薬品医療機器等法)の改正法案が衆議院を通過し、週明けにも成立しそうだと報じられています。

もともと野党案が提出されていたところへ、これとは別に与党案の準備も進められていて、土壇場で調整が行われ、与野党で一本化した法案が審議されたということで、最終的に可決された法案の内容がよくわかりません。

報道によれば、

・立入検査の対象を指定薬物と同等以上の毒性があると疑われる商品に拡大する。

・商品名や包装を官報やホームページなどで公表し、同一商品の販売を広域で禁止する。

・広告に対する規制を強化。指定薬物と無承認医薬品の広告業者に中止を命じることができるとし、命令違反には罰則を新設。ネット広告について、プロバイダが削除しても広告主への損害賠償責任を負わないと規定し、削除を後押しする。

・薬物依存症の治療態勢の整備なども盛り込んだ。

といった内容だといいます。

現時点では、どうやら、民主党のホームページに掲載されている法案情報が、最終的な改正案らしいと思われるので、これをベースに検討してみました。

[参照]
民主党/野党7党提案の危険ドラッグ禁止法案が委員長提出に、衆院で全会一致で可決(2014年11月14日)
http://www.dpj.or.jp/article/105441

●検査命令の対象が拡大された

検査命令、販売等停止命令の対象に、現行の「指定薬物である疑いがある物品」に加え、「指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物である疑いがある物品」が追加されました。

これによって、危険ドラッグとして流通している成分について、指定薬物として規制される前であっても、検査命令・販売停止命令の対象にすることができることになります。具体的には、指定薬物として指定する根拠が確認された段階、つまり次期の指定内容が公表された段階あたりに立入検査が行われ、検査命令が発せられることになるのでしょうか。

この内容は、厚生労働省が従来から示してきた取締まり方針をそのまま引き継いだものだと思われます。これまで、厚生労働省は何度も、無承認医薬品販売の取締まりというかたちで、未規制物質であっても取締まりの対象とする方針を示し、とくに次期の指定が公布されてから施行までの期間において、積極的な取り締まりを行うとしてきました。加えて、最近では、新たな指定が公布された時点で、指定された成分を含有する製品例が写真入りで公表され、施行前の段階でもこれら製品の流通を封じるための策を投入する準備が、具体的に進められてきました。

今回の法改正は、この流れを集約したものと受け取ってよいでしょう。

しかし、検査命令やそれに伴う販売停止命令に関する規定は、現行の指定薬物制度が誕生した時設けられていたにもかかわらず、今年夏の緊急対策時に初めて実施されました。また、無承認医薬品としての取り締まりも、実際に行われた例はごくわずかです。取締まりにあたる体制の整備などがなかなか進まない状況下で、法改正によってどれほどの進展がみられるかは、あくまで今後の動きにかかっているといえそうです。

●広域での販売等禁止措置(製品ベース)

販売等停止命令の対象のうち、広域的に規制する必要がある物品を官報で告示し(製品の包装はホームページ等で公表)、名称・形状・包装等からみて同一と認められる物品の製造、輸入、販売、広告等を禁止できる規定が新設されました。

たとえば、最近の「ハートショット」問題のようなケースを想定した場合、この規定はきわめて重要な意味を持つでしょう。特定の製品による被害が集中的に発生した場合、その成分の特定を待つまでもなく、製品ベースで対象を特定して、販売等を禁止する措置を取る必要があります。対象を公示したうえでとりあえず禁止措置を取り、本格的な対策が講じられたら(指定薬物であることが判明した場合や、指定薬物に指定した場合)、禁止措置を解除するというこの条項は、現実的な場面に即応するものといえます。

しかし、前述の「ハートショット」のケースでは、厚労省において緊急事態を掌握する体制がないなかで、危険情報の発信すらないまま事態の拡大を許してしまったという苦い経験をしてきました。せっかく法整備されても、緊急事態を掌握する基本的な体制が整っていなければ、広域での禁止措置を発動することは困難です。法を生かす体制の整備が急務です。

●インターネット販売という盲点

たしかに、これまでの対策ではインターネット販売対策が盲点になっていました。今回の法改正によって、店舗販売業者に対して販売停止を命令するのと同様に、インターネット販売を行う業者に対しても、対象製品の掲載を停止させることが明記されたわけです。

加えて、指定薬物等の違法広告についてプロバイダへの削除要請をすること、また要請に応じて削除を行ったプロバイダの損害賠償責任を制限することなども整備されました。

この改正によって、インターネット販売業者に対しても、店舗販売業者と同じように、具体的な取締まりの対象とすることが容易になりました。とはいえ、業者側でもより規制の及びにくい海外プロバイダへ移行するなどの動きが盛んになるなかで、実効性のある取締まりを達成するには、常時監視を怠るわけにはいきません。

●一歩前進、しかしこれだけで解決はしない

今回の改正は、これまで進めてきた対策を引き継ぎ、法令として整備したもので、特段目新しいものではありません。

むしろ、私は、今回の改正によって、これまであいまいだった事項が整理され、取締まりにあたる現場が動きやすくなるという、間接的な効果に期待したいと思います。具体的な取締まりの要となる検査命令や、それに伴う販売停止命令が大幅に整理されました。これまで、解釈の差によって、一部では行き過ぎかと危惧されることもあったようですが、今回の法整備によって取締まりの範囲が明確になったと思います。

もちろん、法改正はあくまでも一歩に過ぎません。危険ドラッグ対策にいま問われているのは、法を執行する力なのです。

この夏以来の取締まり強化によって、危険ドラッグ販売店はかなり減少しているようです。ここで力を緩めることなく対策を投下し続け、薬物による危害を具体的に減らしていかなくてはなりません。

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