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「政治献金再開」の掛け声を前に思うこと。

先月、経団連が「政治献金への関与を5年ぶりに再開する方針」を打ち出した、というニュースに接し、何となくもどかしい思いでいたのだが、日経新聞の企業面の「経営の視点」というコーナーに、安西巧編集委員が「企業献金、論争の半世紀/経団連再開、賛同少なく」というコラムを書かれているのを読んで、やっぱりそうだよなぁ・・・という気分になった。

このコラムは、1960年に出された、八幡製鉄の献金をめぐる最高裁判決*1に対する、当時の法律家の評価や、過去の財界人の発言等を紹介しながら、現代における「企業献金の意義」について改めて問い直す、という構成になっているのだが、

「企業献金は利益を得ようと思ってやれば贈賄だし、利益はないがカネを出したといえば背任になる。」(日本経済新聞2014年10月20日付朝刊・第11面)

という品川正治氏(元日本火災海上保険社長)のフレーズ等、経団連の呼びかけを真に受けて、「これから献金を再開しないといかんのだろうか」とぼんやり考えている企業の総務担当者にとっては、いろいろと身につまされる中身も多い。

そして、

「企業による政治献金は本当に必要か、経済界は本音ベースの突っ込んだ議論をすべきではないか。」(同上)

という結びの言葉は、非常に重く響くところである。

ちなみに、経団連は、「政治との連携強化に関する見解」という公表資料(http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/075.html)の中で、

「政治寄附については、経団連はかねてより、民主政治を適切に維持していくためには相応のコストが不可欠であり、企業の政治寄附は、企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの見解を示してきた。政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上を図っていく上で、クリーンな民間寄附の拡大を図っていくことが求められる。」(強調筆者)

と高らかに“理想論”を掲げているが、「政治への関与」が「社会貢献」の一言で片づけられるほどきれいなものではない、ということは、この世界に関わった経験やそのレベルにかかわらず、誰もが感じていることだと思う。

一方で、前記コラムの中で、丹羽宇一郎氏のコメント*2として紹介されているような「個人献金で十分」という考えの政治家が、今、多数を占めているか、と言えば、それもまた事実ではないはず。

経団連が、安倍政権が誕生して2年近く経つこのタイミングで前記のような見解を公表した背景には、最近、政策への影響力が弱まっているとも指摘されることが多い経団連自身が政治家にアピールする、という側面もあるのだろうが、それ以上に、会長が変わったタイミングで何かしらかの“プレッシャー”を受けた、と考えるのが理にかなっている。

政治側にしてみれば、政党交付金制度が導入されたとはいえ、それだけでまかない切れないところは多分にあるだろうし、活動のための資金は多ければ多いにこしたことはない。

また、とかく“反大企業”寄りに世論の風が吹きがちなこの国において*3、“風”に対してぶれずに正論を主張してくれる味方が欲しい、というのは、企業側にとっても切実な話なわけで、薄れつつある“絆”を辛うじて保つための、もっともてっとり早い、かつ法に触れない手段として「政治献金」を使いたい、という動きが出てきても不思議ではない*4

いくら最高裁判決が存在する、といっても、前記コラムの中で書かれているように、「企業が政治献金を行うこと」が、株主やその他のステークホルダーとの関係で、法的に筋よく説明できるかどうかには疑問が残るところも多いし、取締役の一挙一動が厳しい監視の目に晒されるようになった現代においては、度の過ぎた献金が株主による責任追及の対象となるリスクも常に負うことになるから*5、経団連が旗を振ったからといって、雪崩のように自民党への献金額が増えるとは、俄かには考えにくいが、それでも、献金を「中断」していた会社を中心に、じわっと復活の動きが広まってくる可能性はありうるだろう。


今回の「再開」宣言を境に、じわじわと献金額が増えていくことになるのか、それとも、これまでどおり、「必要な会社はいろいろやるが、そうでない会社はこれまでのスタンスを堅持する」ということになるのか。

それが、この先の「政治と産業界のかかわり」を占うのみならず、経団連の、会員企業に対する求心力をも占うトピックになるのは確実な状況だけに、もう少し様子を見ておくことにしたい。

*1:商法の判例として、というよりは、憲法で「企業の政治活動の自由」に関する判例として登場することが多い、言わずもがな、の判例である。

*2:元々の出典はhttp://www.nikkei.com/article/DGXMZO77282590Z10C14A9000000/だと思われる。

*3:この国に限らず、大抵の国では、「大企業」という存在は、叩かれるためにあるようなところはあるのだけれど。

*4:一昔前であれば、選挙の際の「動員力」なども、企業と与党の政治家を結びつける手段になっていたのだが、今の時代、会社がどんなに旗を振ったところで、社員やその家族の投票行動を特定の候補者に向けさせるのは至難の業だけに、「お金」でしか明確な協力はできない、というのが産業界側の本音だと思う。

*5:結論においては最高裁判例を引いて、「献金自体は適法」ということになったとしても、株主代表訴訟等の被告になって対応しなければならない、というのは、かなりのリスクだと思う。

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