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未規制成分での危険ドラッグ製造、無承認医薬品の製造で再逮捕

9月に、指定薬物を譲渡したとして逮捕された名古屋市内の危険ドラッグ販売店の経営者らが、無承認無許可医薬品の製造容疑で再逮捕されると伝えられています。
<ニュースから>*****
●危険ドラッグ販売容疑の男 製造疑いで再逮捕へ 
名古屋市中区のハーブ店「ルート133」の経営者らが危険ドラッグを販売したとされる事件で、愛知県警は22日午後、麻薬に似た作用がある原料で薬物を製造したとして、薬事法違反(医薬品の製造販売、販売目的貯蔵)の疑いで、既に別の事件で逮捕されている同店経営のM容疑者(50)・・・を再逮捕する。捜査関係者が明らかにした。

・・・M容疑者らは今年夏ごろ、幻覚などの作用がある「NM2201」を植物片に含ませるなどして薬物を製造し、販売する目的で貯蔵していた疑いがある。三重県・・・の関係先で製造し、「KATANA(カタナ)」という商品名を書いた袋に小分けしていた。(以下省略)
中日新聞 2014年10月22日 16時00分
*****
経営者らが、指定薬物を含んだ植物片を販売したとして、最初に逮捕されたのは9月9日のこと、自宅を捜索した際に大量の植物片や計量器がみつかったことから、危険ドラッグ製造の疑いもあるとみられていました。上記の記事によれば、その後関税法違反の疑いなどで再逮捕され、今回で4回目の再逮捕になるといいます。

さて、今回の再逮捕は、いわゆる無承認無許可医薬品規定によるものです。薬事法は、人の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物を「医薬品」と定義し(2条3項)、許可や承認を受けずにその製造、輸入、販売などをすることを禁じているので、ここでいう「医薬品」にあたる危険ドラッグを製造、販売などする行為は、無許可無承認医薬品の製造、販売として、取締まりの対象となるのです。

具体的にいうなら、M容疑者が、合成カンナビノイド「NM2201」を乾燥植物片に混入して、小分け、包装等をした行為は、医薬品の無許可製造販売(84条2号、12条1項違反)、医薬品の無許可製造(86条1項2号、13条1項違反)、無承認医薬品の製造販売(84条3号、14条1項違反)などにあたる疑いがあり、さらにいえば、医薬品の無許可販売(84条5号、24条1項違反)、無承認無許可医薬品の販売(84条13号、55条2項違反)及び未承認医薬品の広告(85条5号、68条違反)の各罰則の適否も問われるかもしれません。

問題の「NM2201」は、現在は麻薬として厳しく規制されているAM2201の化学構造の一部を置換えたもので、AM2201のもつ強力な精神作用を受け継いでいるといわれます。しかし、現時点では麻薬や指定薬物に指定されていない未規制物質であるため、その製造を直接的に取り締まることができません。

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NM2201→

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AM2201(麻薬)→

そこで、無承認無許可医薬品としての捜査となったわけです。捜査の眼目は、「NM2201」を含む製品が「医薬品」にあたるかどうか、この点に集約されます。

こうしたケースでの判断基準を示したものとして、2007年の東京高裁の判決があります(東京高判平成19年10月11日、高等裁判所刑事裁判速報集(平19)号338頁)。この事件は、当時は未規制薬物であった亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソプロピルを含むラッシュ等を販売した業者が、無承認無許可医薬品販売で起訴され、医薬品該当性が争われたものです。

判決は、「薬事法2条1項3号の医薬品とは、その物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において『人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物』と認められる物をいう」としたうえで、ラッシュ等の場合について、その成分、薬理作用、販売の実態(ビデオクリーナーなどの名目で販売されているが実際は性的快感を高める目的で購入、使用されていることなど)を具体的に検討し、ラッシュ等は薬事法2条1項3号の医薬品に当たると認めています。

ここで示された「判断において考慮するべき諸要素」とは、おおまかに、①成分を特定する、②その薬理作用を明らかにする、③どのような名目を掲げようと、快感を得るなどの目的で使用される物として販売されていた実態を明らかにする、という3つの要素によって構成されています。

このうち③については、販売店は危険ドラッグを「お香」などと称し、「人体への使用は絶対におやめください。」などと掲示していることから、こうした偽装と裏腹に実際は快感を得るために摂取する物(ドラッグ)として販売されていることを立証するのに、かなり骨が折れることが、容易に想像できます。

加えて、「NM2201」のようにごく最近になって危険ドラッグ市場で流通し始めた成分では、①成分の特定、②薬理作用の解明にも、多くの困難がつきまといます。こうした新種の薬物は、その化学的な性質や薬理作用がほとんど解明されていないため、限られた時間内に、信頼に足る資料を集めることが極めて難しいことが予想されます。たとえばこの「NM2201」は、欧米諸国でもまだ法規制の対象になっていないため、世界中の専門機関を探しても、科学的な研究成果などが得られるかどうかわかりません。場合によると、みずから科学実験などを行って薬理作用を解明することが必要になるかもしれないのです。

とかく取締まりが及びにくい未規制薬物に対処する手段として、無承認無許可医薬品としての取締まりは、これまでも度々話題になってきましたが、そのたびに私は、実際の事件捜査にこの手法を適用することは、極めてハードルが高いと言ってきました。

科学的なデータがほとんど蓄積されていない物質に関して、犯罪捜査として許容される時間内で、それが「医薬品」に該当することを立証することは、現在の体制の中では極めて難しいのが、その理由です。

さて、難問だらけのこの事件に捜査陣がどのように立ち向かっていくのか、今後の動きが気になります。メディア各社の皆さん、捜査陣の動きをしっかり見守って、その奮闘も苦労も、できるだけ伝えてください。続報に注目しています。

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