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我が第2次安倍内閣世襲議員率50%は何を意味するのか考察する

 うむ、此度の小渕優子経済産業大臣辞任の件ですが、ネット上ではさまざまな議論を呼んでおりますが、当ブログとしては今回、「世襲議員」についてその功罪を考察したいのであります。

 まずは日本における国会の世襲議員の実態を数字で押さえ、その割合が国際的に見てどうなのか客観的に分析しましょう。

 最初に今回辞任表明をした小渕優子さんも大臣だった我が第2次安倍内閣の閣僚の顔ぶれから現自民党大臣の世襲議員率を押さえておきましょう。

 公明党の太田昭宏国土交通大臣を除いた第2次安倍内閣 (改造)の自民党出身18人の閣僚のうち、安倍晋三興内閣総理大臣を筆頭にそのうち9人が世襲議員が占めています、世襲議員率50%であります。

世襲職名氏名
内閣総理大臣安倍晋三
副総理/財務大臣麻生太郎
 総務大臣高市早苗
 法務大臣松島みどり
外務大臣岸田文雄
 文部科学大臣下村博文
厚生労働大臣塩崎恭久
 農林水産大臣西川公也
経済産業大臣小渕優子
 環境大臣望月義夫
 防衛大臣江渡聡徳
 内閣官房長官菅義偉
復興大臣竹下亘
 国家公安委員会委員長山谷えり子
 国土強靱化担当山口俊一
再チャレンジ担当有村治子
経済財政政策担当甘利明
国家戦略特別区域担当石破茂

 国会議員に絞って分析を進めてみましょう。

 公職選挙法4条によれば、衆議院は480人(小選挙区300人・比例代表180人)、参議院は242人(選挙区146人・比例代表96人)、現在日本には724人の国会議員がおるわけです。

 言うまでもなく彼らは選挙で国民から選ばれた「選良」なのであり、この国の政治的指導層であります。

 総務省統計局の人口推計月報【平成26年10月1日現在概算値】によればこの国の人口は1億2709万人とあります。

人 口 推 計 月 報

平 成 26 年 10 月

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201410.pdf

 国会議員は1億2709万人から選ばれし「724人」の政治エリートなわけで、単純にわり算すれば、約17万5500人の中から一人の割合で選ばれた優秀な人材であるべきと言うことです。

 世襲議員の定義を「世襲議員の対象範囲:その議員と配偶者の三親等以内に国会議員、地方議員、地方首長のいずれかを経験した者がいる」とした場合の現役衆議院議員の世襲率を計算しているサイトがありますので、参考までにそのサイトのデータをご紹介しましょう。(※なおデータは6年前の選挙直後のものです、ご留意ください)

・現役衆議院議員

全議員数世襲議員数世襲率
自民党304人124人40.8%
公明党31人2人6.5%
民主党113人26人23.0%
共産党9人1人11.1%
社民党7人0人0.0%
その他16人9人56.3%
総合計480人162人33.8%

陽月秘話

国会議員の世襲比率

http://imogayu.blogspot.com/2009/03/blog-post_21.html

 全衆議院議員480人中162人33.8%、つまり3人に一人が世襲議員であるということです。

 自民党にいたっては40.8%であります、自民党衆議院議員の五人に二人が世襲議員ということであります。

 第2次安倍内閣 (改造)の自民党出身大臣の世襲議員率50%でありますが、自民党国会議員の分母で40%の世襲議員がひしめいておりますことを考えますと、世襲議員だから特に大臣に厚遇される傾向があるとは言えなさそうです。

 さて、この世襲率40%とか50%とかいう数値ですが、国際的に見て日本は高いのでしょうか、低いのでしょうか。

 6年前に読売新聞が海外の世襲議員の事情を調査した記事があります、ネット上当該記事を引用しているブログがありますので、失礼して記事部分を引用ご紹介。

 米欧の主要国では、日本と選挙制度や政治風土が違うこともあり、一部の国を除いて世襲議員は少ない。

 ケネディ兄弟やブッシュ一族など華麗な政治一家で知られる米国だが、米連邦議会に占める世襲議員の割合は、議会や議員名簿などによると、上院議員100人中5人、下院議員435人中23人で、それぞれ5%程度にとどまり、日本に比べると極端に低い。親の引退時に同じ選挙区を引き継いで当選したケースに限ると、上院は1人、下院は10人とさらに少なくなる。

 ダートマス大のリンダ・フアウラー教授(政治学)は、「米国では、政治家が支持者に物質的利益を与えるための財源は少ない」と述べ、後援会システムを容易に子供に引き継げる日本とは事情が違うと分析する。ただ、「世襲議員は知名度があり、資金集めで大きな利点がある」のは日本と同じだ。選挙資金集めが日本以上に重要なこともあり、知事なども含めた「政治家一家」は少なくないとされる。

 イギリスでは現在の労働党政権の閣僚計23人のうち、「政治家の家系」として認知されているのは、ヒラリー・ベン環境相ぐらいだ。

 小選挙区制の下院(定数646)は、候補者選定に際し、政党組織が希望者に面接したり演説を吟味したりして人選する。地元出身ではない『落下傘候補』が一般的なことも背景だ。上院も1999年の民主化改革で、世襲貴族議員が約750人から92人に削減された。

 世襲議員が幅をきかせているという点で、日本と似ているのはイタリアだ。政党の離合集散が激しく、政党主体の安定した政治が確立していない同国では、地方の名家が代々政治家を出すという例は珍しくない。2008年総選挙では、フランチェスコ・コシガ元大統領(現・終身上院議員)のおいであるジュゼッペ・コシガ下院議員(右派フォルツァ・イタリア所属)のほか、元閣僚、元上下院議員の子息が多数初当選した。

 アジアでは韓国で、朴正熙元大統領の長女で与党ハンナラ党の朴槿恵(パククンヘ)元代表(56)や、現代グループ創業者鄭周永(チョンジュヨン)氏の六男、鄭夢準(チョンモンジュン)同党最高委員(57)が、「2世政治家」として知られるが、数は多くはない。むしろ、金泳三(キムヨンサム)元大統領の次男賢哲(ヒョンチョル)氏のように公認が得られず、国会議員になれない例があるほどだ。現職の国会(定数299)議員で、親の選挙区をそのまま引き継いで、当選した議員は、確認できるだけで2人しかいない。韓国の主要政党は、公認候補を選ぶ際に各選挙区の党員らが選挙を行う。このため、よほど親の影響力が強くない限り2世の当選は難しいことが理由とみられる。


2008年10月24日 読売新聞朝刊 14版 13ページ「基礎からわかる世襲議員」から引用

その4-世襲議員、海外ではどうなっているか(8日の日記) (3) より引用

http://plaza.rakuten.co.jp/bluestone998/diary/200811080000/

 うむ、例えば米連邦議会に占める世襲議員の割合は上院議員100人中5人、下院議員435人中23人で、それぞれ5%程度にとどまり、またイギリスでも当時の政権の閣僚計23人のうち、「政治家の家系」として認知されているのは、ヒラリー・ベン環境相一人だけ、お隣の韓国でも国会(定数299)議員で、確認できるのは2人だけだとされています。

 日本と同じ世襲議員が幅をきかせているのは政治が絶えず不安定なイタリアのようです。

 ・・・

 さて自民党大臣世襲議員率50%の我が第2次安倍内閣なのでありますが、この数字は統計科学的にはいかにもおかしいものであることを分析しましょう。

 さきほども指摘しましたが、国会議員は1億2709万人から選ばれし「724人」の政治エリートなわけで、単純にわり算すれば、約17万5500人の中から一人の割合で選ばれた優秀な人材であるべきと言うことです。

 17万6000人の中から一人の割合で選ばれた優秀な人材であるべき「選良」の、さらに選ばれし内閣の顔ぶれが2人に1人が世襲であるという事実は、「政治家」という要職が本来それにふさわしい優秀な人材を選択するメカニズムである「選挙」がうまく機能せず、政治を代々「職業」とする「政治屋」のような層が生じ始めている証左とも言えましょう。 

 ほぼ同じ母数でも世襲現象がほとんど起こらないプロアスリートの世界と比較してみます。

 分子分母がほぼ同じであるプロ野球選手というアスリートと比較してみましょう。

 現在日本にはセパ合わせて12球団がありますが1球団が支配下登録できる選手は最大70人です。

支配下登録

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%AF%E9%85%8D%E4%B8%8B%E7%99%BB%E9%8C%B2

 つまり日本のプロ野球選手は最大70人*12チーム=840名枠と考えることができましょう。

 日本国1億2709万人の中からスポーツエリートとして選び抜かれたプロ野球選手は、分子分母の割合は国会議員と同様の「非常に厳しき門」であると言えます。

 彼らは例外なく幼少期から野球を始めたもの達であり、高校野球、大学野球や社会人野球という厳しい競争の中で淘汰されプロ野球選手として生き残ったまさに「アスリート」中の「アスリート」なわけです。

 現在プロ野球選手登録している800人の中で一体何人が「その選手と配偶者の三親等以内にプロ野球選手」がいる「世襲選手」(?)でありましょう。

 ちゃんとした統計資料があるわけではありませんが私はプロ野球にはうといのですがほとんどいないのではないでしょうか、すくなくとも自民党衆議院議員のような5人に2人というありえない割合でないことは明白です。

 もちろん、長島親子や野村親子のような例外はありますが、失礼ながらこの2例でも父はスーパープレイヤーでしたが、息子さんのほうは選手としてはパッとしませんでした。

 プロスポーツの世界で世襲現象があまりみられないのはこれは競争原理が正しく機能しているからであり、つまり親がプロ野球選手であることはその厳しい競争の前ではほとんど何のメリットでもないことを意味しています。

 ・・・

 世襲議員の問題は、いきつくところ国会議員の地位を、立派な「政治家」(Statesman)からただの「政治屋」(Politician)におとしめていくことになりましょう。

 国会議員の3人に1人とか5人に2人とかの異常な割合で世襲議員が発生していると言うことは、世襲議員の優秀さと捉えるのは科学的ではありません、そうではなく、選挙の時に世襲である候補者になんらかの強いアドバンテージが働いている結果であると考えるのが普通です。

 本来能力本意で抽出すべきエリート層なのに、抽出段階で「親の後を継ぐ」ものにアドバンテージが働くならば、そのエリート層が劣化するのは必然です。

 そんなことを代々続ければ政治エリートの性質の変質を招くわけです、「政治家」(Statesman)よりも「政治屋」(Politician)が幅を利かせるようになります。

 この国の世襲議員の問題点は根が深いです、単に「親の後を継ぐ」ものにアドバンテージが働くのが選挙だけではないからです、数の力で政局を動かすのにも世襲政治家は能力以上のアドバンテージを発揮して跋扈しています。

 「親の後を継ぐ」ものに能力に関係なくアドバンテージが働くならばその集団が劣化するのは必然です。

 健全な適者選択システムが機能しないことは日本の政治にとって不幸なことかもしれません。

(木走まさみず) 

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