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高付加価値商品を売るために必要なもの「Goods of Record」

高付加価値商品を売るために必要なもの、それはストーリーだ。

これまで当ブログでは、ECサイトで商品を販売するために製品や生産者のストーリーを伝えるコンテンツを充実させる重要性を繰り返し伝えてきた。顧客はストーリーに共感しファンになるからこそ、高付加価値、つまり値の張るものを買う。

当ブログではこれまでコンテンツを充実させて成功した事例として「Brika」や「Huckberry」などを紹介してきた。今回は同様にコンテンツを充実させることにこだわったECサイト、「Goods of Record」をご紹介したい。

同サイトは、「メイド・イン・アメリカ」と「メーカー(職人)」 をコンセプトに、まな板、男性向けの財布やベルト、カバン、パスポートケースなど、主に革製品や木工製品を販売している。

面白いのは、同サイトではスタッフが自ら紹介したい職人を旅して歩き、自分たちでインタビュー記事や写真・動画の撮影を行い、職人たちの経歴や、商品の素材、作業工程などを紹介していることだ。

現在取り扱っている製品は5メーカー17製品と多くはないが、その紹介記事や動画は読みごたえ充分。2014年8月末に創業されたばかりで、今後は扱うメーカーや職人の数、製品数は拡大していく予定だ。

どこの誰がどんな思いを込めて作っているのか、それを伝えたい

Goods of Recordでは、タブレットPCスタンド、財布、鞄、パスポート入れ、まな板などの厳選した17個の製品を販売するとともに、それぞれの職人にインタビューを行い、その記事や動画を掲載している。

製品の価格は60〜400ドル(約6000~4万円)程度。低価格戦略は取らずに、すでに他の場所で販売されていればその販売価格にあわせる程度の設定だそうだ。ターゲットは25歳〜40歳の男性。それも比較的収入が多く、持ち物の質やデザイン性、他の人とはちょっと違ったモノを求める男性であるという。

こうした顧客層により興味を持ってもらうために同サイトが行っているのが、職人や製品にまつわるストーリーを詳細に伝えることだ。個々の製品ページには、「About LWM」(ここではLeather Work Minnesotaのこと)などといったボタンが備え付けられており、職人を紹介するページにすぐにジャンプできるようになっている。

職人の紹介ページは3部構成。職人へのインタビューを動画にまとめた「THE FILM」、サイトで販売している製品を一覧表示する「THE GOODS」、そして職人の経歴、作業工程、制作現場の状況を事細かに記載する「THE STORY」だ。ここでは「「THE FILM」と「THE STORY」をご紹介しよう。

「THE FILM」で視聴できる動画は、単に生産過程を紹介するだけではなく職人たちのインタビュー、製品に注ぐ情熱、製品の特徴などを3〜4分にまとめた短いドキュメンタリーだ。ミシンで革を縫い合わせる様子など、実際の作業工程も紹介しており、職人と製品の「見える化」を図っている。

「THE STORY」では職人が製品を作っている写真が掲載され、職人がどのような環境で仕事をしているのか、周りの雰囲気などを説明してストーリーが始まり、職人の起業のきっかけや、製品へのこだわり、使用している素材などについて説明している。

ミネソタ州にある革財布やベルト、パスポートケース、眼鏡ケースなどを作るメーカー、Leather Work Minnesotaを例に、サイトの紹介文を見てみよう。

同メーカーは家族経営で、Kent Begnaud(以下、ケント氏)とLee Begnaud(以下、リー氏)夫婦とその息子Nathan Begnaud(以下、ネイサン氏)、その他数名の従業員で運営している。

サイトに書かれているストーリーは、当ブログの構成にもちょっと似ているかも知れない。どのようにしてケント氏がこの仕事に就くようになったかのきっかけから、起業などにまつわる経緯や苦労話、この仕事で生きていく上で得たヒントなどが書かれている。

ちなみにケント氏の場合は、小さい頃からモノを解体し、どのように組み立てられているのかを調べるのが好きで、デザイン性の高い革製品を見てその魅力に引き込まれたのがこの仕事に就くきっかけだったそうだ。

彼は後に友人の発案で起業し、自分の商品を売るようになったが、買収の標的になって結婚数ヶ月の身で無職になってしまった。彼に助けを差し伸べたのは、ビジネススクールの元講師。彼に「これまでで一番売れた製品を作り続けなさい。売れない製品は作らないのが良い」とアドバイスされ、仕事への情熱を取り戻せたという。

「THE STORY」ではその他にも、どのようなところで製品が作られているかや、ごく普通の人たちに長く味わって使ってもらいたいという商品に対する想い、今後は息子が家業を継ぐ予定であることなどにも触れられていた。

これらの文章、動画、画像は、サイトのスタッフたちが職人の元に出向いて撮影やインタビューを行った上で作成されたものだ。スタッフたちはこうした職人たちのストーリーを伝えるために、ポートランド、オレゴン、ミネソタ、ブルックリンなど方々を訪れた。

彼らがコンテンツ作りに精を出すのは、素材や作業工程などを細かに取材し、その様子を事細かに伝えるためだという。

"精巧に作られて完璧なデザインを誇る美しい品々は、誰かの大切な所有物となる前に、職人たちの情熱が込められている。僕たちはこうした職人を発見し、彼らのストーリーを共有して商品を届けたいんだ"

自分たちが持っているアイテムが、どのような経緯でつくられ、どこからやってきたのか。そうした起源を辿ることで製品の価値を高めることが、Goods of Recordの目的だ。

SupercompressorはGoods of Recordを紹介する記事において、このサイトのコンテンツは短編のドキュメンタリー映画のような趣で、製品を生み出すワークショップを実際に訪れているかのようだ、と評している。

共通の嗜好でつながった3人の創設者

Goods of Recordは2014年8月末、Michael Kushner(写真左、以下クシュナー)氏、Sathish Naadimuth(写真中央、以下ナーディムス)し、そしてTrey Sesson(写真右、以下セッソン)氏の3人によって創業された。

セッソン氏とナーディムス氏は現在、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでMBAを取得中だ。また、クシュナー氏はニューヨークのマーケティング代理店のアートディレクターとして活動している。

セッソン氏は、かつては男性用のアパレル製品を扱うECサイト「Jack Threads」に勤めており、ファッション性の高い製品を販売して育てるビジネスに興味を持っていた。しかしEコマース領域で製品を育てて行くことのむずかしさについて日々考えさせられていたという。

セッソン氏はウォートン・スクールのMBAにてナディーム氏と出会い、流行の革製ノートPCケースを通して意気投合。一緒にビジネス・プランを競い合うコンペに参加することにした。

元々は水出しコーヒーを販売するビジネスを企画していた。しかし、莫大な原資が必要な上に、競争相手が多すぎることから、企画を断念。締め切りが間近であることから、30時間以上部屋に閉じこもってギリギリで作り上げた企画が、このGoods of Recordだったのだ。

この企画は、急ごしらえであったことも影響したのか、当時は高評価につながることはなかったが、セッソン氏の旧友であるクシュナー氏が興味を示してくれた。そしてクシュナー氏がメンバーに入り、ビジネスのアイディアを少しずつ具体的にしていったという。

彼らが目指したのは、ひとつは知名度は低くても良質な「メイド・イン・アメリカ」の男性向け製品を厳選して販売すること。

そしてもうひとつが、製品やメーカー、職人にまつわるストーリーを顧客に紹介するため、「全ての職人にストーリーがある」をモットーに良質なコンテンツ作成を行うことだった。特に特に職人についてのストーリーを知らしめるコンテンツ作成は、3人にとって魅力的な試みだったようだ。

"顧客は自分たちが購入する製品がどこでどのように作られたか、また製造に関った人たちに関心を抱くだろう。僕たちはこの状況を創造的かつ魅力的なサービスによって解決していきたい"
セッソン氏

このミッションを胸に、同氏らは記事や写真、動画によるストーリーをふんだんに盛り込んだサイトの運営を開始。自分たちが本当に気に入った製品を見つけ、職人の人柄や技術、製品に惚れ込んだものを、顧客に紹介するようになったのだ。

安売りを目指さず、コンテンツを充実させて適正価格で販売できる土台を築く

以前紹介したHuckberryの記事で「Huckberryのコンテンツマーケティングは、良質なWEBメディア発信にかなり重きが置かれている。ECサイトはおまけとさえ思えるほどだ。その根底には、より深いところでファンとつながり、彼らを楽しませたい、という想いがある」と述べた。Goods of Recordsも同様だ。

"顧客は自分たちが購入する製品がどこでどのように作られたか、また製造に関った人たちに関心を抱くだろう。僕たちはこの状況を創造的かつ魅力的なサービスによって解決していきたい"
セッソン氏

Goods of Recordsはコンテンツ作りのための労を惜しまない。職人や製品をさがすために歩き回る。コンテンツ作りも現地に赴き、こだわり抜いた動画や写真を撮る。泥臭い非効率なやり方だ。

Goods of Recordsの商品は安くない。それは製品を目で見るだけではわからない「こだわり」が詰まっているからだ。彼らは自身の商品が「なぜ安くないのか」をコンテンツで伝えることで、販売が難しい「高付加価値なオリジナル商品」の販売に成功している。

繰り返しになるが、高付加価値商品を売るにはストーリーが必要だ。あなたの高付加価値商品は消費者にストーリーを伝えているだろうか? 売れずに苦戦しているなら、そこに1つの原因があるかもしれない。

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