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古くて新しい“遊芸”に立ち返る。人形浄瑠璃「にっぽん文楽」の新たな挑戦。

どうも鳥井(@hirofumi21)です。

先日ご縁があって、「にっぽん文楽」プロジェクトのプレスイベントに参加してきました。

「にっぽん文楽」プロジェクトとは、人形浄瑠璃・文楽の価値を多くの方に再認識してもらおうとスタートしたプロジェクトです。

このプロジェクトは、日本財団が計1億5千万円を支援して、日本の伝統工法を駆使したヒノキ作りの「組み立て式舞台」を制作し、2015年3月の東京・六本木ヒルズアリーナを皮切りに全国各地で公演を行いながら、文楽の魅力や価値を国内外に発信していくともいうの。

今日はこのプレスイベントを通して感じた「古くて新しい“遊芸”に立ち返る」ということの可能性について少し書いてみようと思います。

閉ざされた空間にこもってしまった文楽

もともと文楽は、茣蓙(ござ)などを敷いて屋外で観覧するスタイルが発祥。神社やお寺の境内などで、庶民に対して行われていたのが始まりです。

しかし、現代では新国立劇場など立派な劇場で行われるのが一般的になってしまいました。

「いつのまにか“劇場”という閉ざされた空間の中にこもってしまい、芸術性が高まりすぎてしまった。」と語るのは、文楽人形遣いの桐竹勘十郎さん。

「文楽は、今まで文楽を見たことがない人や若者にとっては、非常に敷居が高いものになってしまった。芸が向上していくことは素晴らしいことではあるけれど、その一方で見る人間が減っているのは非常に残念だ」と桐竹勘十郎さんは仰っていました。

「古くて新しい“遊芸”」という可能性

今回のプロジェクトは歩いている人がたまたま看板を見つけて「文楽って何?ちょっと面白そう!覗いてみようかな?」フラッと入れるようなものにしていくのが目的のようです。

そのために考えられた施策が、六本木ヒルズとテレビ朝日の間にある屋外のアリーナスペースに舞台を作りそこで芸を披露するということでした。

それはつまり、昔ながらの“遊芸”に立ち返るということを意味します。屋外で、お弁当を食べたり、日本酒を飲みながら文楽を楽しめるようにし、誰もが気軽に楽しめる空間にしていこうというわけです。

「遊芸というのは、もともと総合的なものであり、舞台だけではなく、見える空、吹き抜ける風と共に楽しむものだ」そう語るのは今回のプロデューサー中村雅之さん。

「伝統芸能だからと言って勉強しないといけないとか、かしこまる必要はまったくない。ふらっと立ち寄れるものにしたい。もちろん伝統芸能として守っていくことは必要ではあるけれど、格式高いものにする必要はなく、新しい道を探りたい。」

中村雅之プロデューサーは、文楽は国立劇場などで既に伝統文化として守っていく最低限の基盤はあるのだから、民間が力を入れるべきは遊芸に立ち返ることであり、今回のこの企画趣旨に辿り着いたと仰っていました。

細部の細部まで本物志向が貫かれている

遊芸と言っても、やるからには本物にこだわりたいということで、今回の文楽は細部の細部まで本物志向となっています。

実際に行われる芸は文楽協会が全面協力の元、桐竹勘十郎さんなど超一流の人形遣いの方たちが携わることはもちろん、会場も本物の檜造りで吉野の檜を使用しています。

この会場設営費用だけでも、ゆうに1億円を超えているとのこと。組み立て式ではありますが、これも日本文化の特徴を再現したものであり、能舞台や茶室などと同様、日本古来の建築様式をそのまま採用しています。

会場で販売されるお弁当も本物の木箱が使用された一流の料亭によるもの。振る舞われる日本酒も大吟醸の純米酒です。

今回のプレスイベントで、実際に会場で使われる檜の椅子に座り、会場で販売されるお弁当と日本酒を頂きましたが、本当に赴きがありました。

「文楽」を考える契機にして欲しい

実はこの会場は吹き抜けになっていて屋根もないので、上の階から舞台を覗き見ることができるような設計になっています。お金を払わなくても気軽に覗けてしまうのです。

しかし、それこそが貴重な体験だと中村雅之プロデューサーは語ります。なにかやっている、それが「文楽」であることが大切なのであって、まずは何をやっているのか知ってもらうことが重要であると。

「文楽をやっていることを知ってもらった後に、行ってもいいし行かなくてもいい。本物がやっていることをきっかけにして、この日本伝統文化を後世に残すかどうかを皆で一緒に考え欲しい!それを考える契機になればいい」と仰っていました。

東京オリンピックまで、最低6年間はこのプロジェクトを続けていくそうです。「極端な話、これをきっかけに国民運動を起こしたい!」と中村プロデューサーは意気込んでいました。

最後に

今回のプロジェクトに対して1億5千万円を出資した日本財団会長の笹川陽平さんは以下のように本プロジェクトについて語っていました。
日本の伝統文化である“祭り”は日本の地方を元気にするもの。そんな伝統文化の重要性を、東日本大震災から立ち直る東北地方の姿を見て実感しました。

日本の誇る伝統芸能、伝統文化を私達は忘れすぎていたように思います。その反省から今回のこのプロジェクトがスタートしました。

文楽は世界に誇る無形文化遺産であり、世界でも突出した表現力があります。私達日本人がこの文楽を知らないのは非常にもったいない。こんな素晴らしい文化があるということを、次の世代に知ってほしいと思っています。
正直、今回のプレスイベントに参加するまで僕自身「文楽」に対する興味・関心はあまりありませんでした。しかし今回の「遊芸に立ち返る」というコンセプトを聞いて、非常にその考えに共感できました。

国民が本当に楽しめるものに少しずつでも変えていこうという発想はとても素晴らしいものだと思います。実際に自分が体験してみて、20代、30代の若い世代の人にこそ、ぜひこの古くて新しい遊芸を体感してみて欲しいと思いました。

まずは来年の3月から六本木ヒルズで行われます。興味がある方はぜひ足を運んでみてください。

(取材協力:日本財団)

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