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大学生による大学生のための引越サービス「Bellhops」

今回ご紹介する小規模の引っ越しサービス「Bellhops」は、大学の新入生が学生寮やアパートに移るなど、比較的小規模な引っ越しの際に荷物を運んでくれるサービスだ。

サービスの最大の特徴は、引っ越し業務を担当するスタッフがすべて現役の大学生であること。ただ大学生が担当するだけでなく、仕事が入ったときに誰がそれを担当するか、どのような手順で仕事を行うかや分担などの一切を彼らに一任していることで、大きな成果をあげているという。

現在、130都市42校でサービスを展開しており、1万人のベルホップスが登録されている。2011年創業。60万ドルの資金を獲得済み。最近では顧客は新入生からシニアまで幅が広がっているそうだ。

ひとびとの働き方を変える影響を与え得るシェアリングエコノミーの内容を見ていってみよう。

サイトで簡単予約、見積もりを出すだけ

Bellhopsでは、学生寮やアパート、コンドミニアムに移るなどの規模が小さめの引っ越し業務を取り扱っている。

引っ越し作業を担当する大学生らは「ベルホップス」と呼ばれ、利用料金は必要なベルホップの人数×時間で決定される。1人につき1時間40ドルで、1時間半以上から依頼可能だ。

利用者はまず、どの都市で引っ越しをするのか、ベルホップスは何人必要か、どのぐらいの時間が必要かを入力する。必要な人数を2人、3時間半ほどかかると仮定した場合、利用料金は280ドル(約2万8000円)となる。

日取りの予約が完了すると、当日担当してくれるベルホップスの写真、メールアドレス、出身地や専攻などを記した簡単なプロフィールが送られてくる。

引っ越しの前日と当日には、ベルホップスより引っ越しに関する連絡が詳細に入るようになる。万が一彼らが当日仕事が入れない事態が起きても、そのエリアを担当するベルホップスたちに連絡が入る仕組みになっているようだ。

顧客が既にトラックを所持・レンタルしている場合はそれを利用。そうでない場合はBellhopsがPenskeU-Haulと提携しているため、こちらのトラックを借りて運送にあたってくれる。サイトでトラックを利用する場合は、燃料費や保険代込みで135ドル(約1万3500円)が別途必要となる。

顧客の荷物は保険がかけられているので、万が一破損したものがあっても保障される。何千件もある引っ越しのうち失敗は1%未満とのことだ。

引っ越し作業が終わると顧客はベルホップスについてのアンケートを書き評価するようお願いされる。サイトの使い勝手は良かったか、ベルホップスが時間通りに来たか、仕事ぶりはどうだったか、価格は妥当なものかなど、答える項目は15~20ほどある。

現在のところ、引っ越しサービスは基本的に大学生たちのキャンパスから15マイル(約24km)までの近距離のものしか取り扱っていないが、2つの大学チームに依頼し、連携することで長距離の引っ越しが実施されるケースもあるという。ただし、グランドピアノや超大型の洋服タンスを動かす必要のある引っ越しはお断りとのこと。

メインストリームのマーケティングではなく独自のビジネスモデルを確立

Bellhopsの創業者はStephen Vlahos氏(写真左)とCameron doody(写真中央、以下ドゥーディー)氏の2人。2人は大学時代からの親友だ。

ドゥーディー氏らは大学卒業後、銀行に勤務していたが、そこでは「動物園のケージに入れられたライオン」のような毎日だったという。やがて息苦しい職場から抜け出すため、みんなに愛されるようなビジネスができないかと考えるようになった。

彼らの新しいビジネスのヒントは、大学時代にやった引っ越しのお手伝いに転がっていたという。

当時ドゥーディー氏のまわりの大学生の親は、一人暮らしの引っ越し程度なら引っ越し屋を呼ばなくても、信用できて力のある友達がいれば充分だと考えていた。

ドゥーディー氏も引っ越しの手伝いをしてお金をもらったことがあり、そのときはソファを運ぶときに壁に穴をあけたりすることもなく案外うまく引っ越し作業を行えたそうだ。

"米国の3分の1の人口が20代前半のうちに、短いスパンの引っ越しを繰り返していて、そのうちの約75%が自分たちで行う引っ越しだという。ということは、プロではない引っ越し屋が重宝されるんじゃないかなと思ったんだよ"
- ドゥーディー氏

時間はたっぷりあるがお金はない大学生に、規模の小さめの引っ越し作業を行ってもらう。これは良い思いつきだと考えたドゥーディー氏らは、予算2000ドル(約20万円)を用意して母校から活動を開始する。

大学のオリエンテーション冊子に1000ドル(約10万円)使って「信頼できる若々しい学生たちがあなたの重たい荷物のお手伝いをします」と広告を出すと、3日間で250件もの予約が入り、急いで80人の学生を雇った。

やがて、利用した顧客から感謝していることをつづったメールをもらうことも増えていった。これを足掛かりにして米国各州の大学にて事業を展開することになった。

"ぼくたちはアンティークものや家宝を運ぶわけじゃない。いくつかの家具を、ある場所から別の場所へ運びたいだけなんだ。それに必要なのは仕事をこなせるだけの強い身体と注意深く仕事ができる頭を持った人なんだよ"
- Bellhops

モットーは「ベルホップス全員が企業家」

引っ越し業務を受け持つベルホップスたちはすべて、雇用契約を結ぶ前に面接を受け、カスタマーサービスについてのビデオを見ることと仕事内容に関するテストを受けている。これは、学生に生きた社会経験を積ませ、誰に見られてもおかしくないきちんとした態度、任されたものに対して努力することが求められているからだ。

Bellhopsの仕事は学生スタッフで成り立っている。そのため、自由にスケジュールを決められる環境であることが望ましい。

そこで、同サイトではアプリで配車サービスを展開するUberや相乗りサービスのLyftのように、スタッフの住む場所の近くで仕事が入ったときには、スマートフォンに連絡が入り、可能な者が仕事を受けるというシステムを採っている。

現在、ベルホップスの手取りは1時間で13ドル~15ドルほど。自分のスケジュールと合わなければ仕事を受ける必要がなく、賃金も悪くないので多くの学生が集まっているそうだ。

また、彼らは仕事をどう分担するかも自分たちで考えているという。各々の仕事において、誰がリーダーとして仕事をしたいか、誰が補佐的な役割をするかも自分たちで決定。リーダーを志願すると顧客への応対と仕事のマネージング力が問われる。もちろん時給も上がる。

スタッフたちに仕事を選ばせることによって、当日現場に来ないケースもなくなったそうだ。多くの学生が慣れているシフト制で責任の少ない低賃金のサービス業界とは大きく異なる。自主性が伴うことでよりよく働こうと考え、その結果顧客へのサービスもあがっていく。

"Bellhopsのモットーは、全員が企業家であること。全員にボスになるための権限を与えることによって、すばらしいカスタマーサービスを自然に行えるようになるんだ"
- Patterson氏

ビジネスモデルの変換期

1980~2000年生まれのミレニアム世代は、キャリアを求める一方で転職回数も多い。平均的なミレニアム世代が一つの仕事にとどまれているのは2年足らずだそうだ。

そうなると、「教科書通りの会社」という存在は機能しなくなり均一的な労働力の確保というのは今後ますます難しくなる。

アプリやスマートフォンで顧客は引っ越しをアレンジでき、U-Haulに乗った大学生が特定された場所にやってくる。Bellhopsは自分たち独自のビジネスモデルを築きあげようとしているのだ。

シェアリングエコノミーは消費者の経験に革命を起こしただけでなく人々の働き方まで変えることとなった。シェアリングエコノミーが消費者にとってなぜ優れたものかというと、以前よりもレベルの高いサービスや便利なものを得ることができるのにお金は前よりかからなくなっているからだ。

"ぼくたちはリクルート業界を混乱させるんじゃないかと真剣に思っているよ"
- ドゥーディー氏

しかし、消費者がシェアリングエコノミーを好む本当の理由は、それはより信頼できる関係で成り立つものであるということだ。信頼関係がないとシェアリングエコノミーは成立しないという。

会社が従業員を信頼して仕事を任せ、従業員は自ら役割を考え行動する。これがBellhopsの顧客満足度が97%という高水準を保っている理由だろう。

今後はますます仕事を与える側と受ける側とのWin-Winの関係が注目される時代になりそうだ。

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