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言葉に惑わされない

海外在住者として私が感じる日米間の違いの中に、”言葉の捉え方”があります。

たとえば、一時期日本で「CSRからCSVへ」といった論調の記事をよく見かけました。

ご存知の通り、CSRは企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)であり、CSVはマイケル・ポーター教授が提唱した、共通価値の創造(Creating Shared Value)のことです。

詳細は教授の論文やメディアの記事を見て頂ければと思いますが、ざっくりと言えば、ポーター教授の主張は、社会活動を責任と捉えるのではなく、機会として事業に取り入れ、社会問題を解決しながら企業利益を生む、つまり、企業価値と社会価値を共存させる、ということです。

素晴らしい概念ではありますが、アメリカでは、似たような意味を持つ言葉として「トリプル・ボトムライン(社会(People)・環境(Planet)・財務(Profit)のすべてで利益を生む)」や「自然資本主義(自然資本と人的資本を資本主義に取り入れる)」などがありますし、CSRは事業と無関係の慈善活動のみとは捉えられていないため、CSVという用語が特別注目されることはありませんでした。

日本で殊更CSVが取り上げられたのは、ポーター教授人気もあるのでしょうが、CSRやサステナビリティの概念が深く考えられていなかったからではないかと感じました。

「エシカル」はエコなのか?

また、何年か前から日本で「エシカル」という用語が流行っているようですが、これもアメリカでの認識とは少し異なります。

日本では「環境・社会問題に配慮した」という意味で使われているようですが、アメリカでは一般的に環境面は含まれません。

環境面を含めてエシカルという用語を最初に使ったのは、欧州のファッション業界だと思います。2000年代中頃にイギリスやフランスで開催された、環境・社会に配慮したファッションショーでエシカルという用語が使われていました。

恐らく、当初、社会面のみに配慮した”エシカルファッション”に取り組んでいた欧州の団体が、次第に環境面も取り入れるようになり、言葉だけがそのまま残ったのではないかと推測します。

アメリカでも、英仏に倣い、環境面を含めて「エシカルファッション」を使う人が多少いましたが、一般的には動物性素材を使っていない、労働搾取していないなど社会面に配慮したファッションを指しますし、ファッション以外の分野で、環境面を含めてエシカルを使うことはないように思います。

環境・社会の両者を表す言葉としては、「サステナブル(持続可能な)」や「レスポンシブル(責任のある)」が使われることが多いですが、どれが”正しい”用語なのかは各人・各企業の考え方次第ですから、特定の用語に統一する必要はないでしょう。

もうひとつ例を挙げると、随分前に日本で流行った「ロハス(Lifestyle of Health and Sustainability)」という用語も、発祥はアメリカですが、アメリカでその言葉を知っている人はほとんどいませんでした。

ロハスは良い概念だと思いますが、日本では言葉のイメージが先行したため、たとえ考え方に賛同してもイメージに合わない人は排除されていた感がありますし、言葉の流行が終わると共に概念も廃れてしまったように見受けられ、残念に感じました。

言葉より大切なもの

言葉を前面に押し出すことは悪いことではないと思いますが、日本では次々と新しい流行語を作り出し、それに飛びついているだけのようにも見え、少し苦々しく感じます。

環境・社会問題対策は流行とは相容れないものですし、大事なのは言葉ではなく、その背後にある概念とそれを形にする手法です。

アメリカでも言葉の流行はありますが、皆が一斉に飛びつくことはありません。言葉はあくまで主張や見解を伝えるためのツールですから、深く考え、明確な意見を持ち、それを行動に移している企業が言葉に踊らされることはありません。

概念を伝えていくことは地味で時間のかかる作業ですが、一度理解してもらえれば言葉に固執する必要がなくなります。顧客ロイヤルティを高めるためにも、バズワードに踊らされず、丁寧に自社の考えや取り組みを伝えていく努力が必要なのではないでしょうか。

(レスポンスアビリティ社メールマガジン「サステナブルCSRレター」No.192 (2014/08/28発行)既出)

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