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口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.7


さらに1~2件発生の可能性=口蹄疫で山田農水相

山田正彦農林水産相は5日、宮崎市で口蹄(こうてい)疫に感染した疑いのある家畜が約半月ぶりに見つかったことについて「人と物の流れは阻止できない。(新たな発生は)やむを得ない」との認識を示した。その上で「まだウイルスが家畜の排せつ物などにいる。どこで起きてもおかしくない。終息までに(さらに)1~2件の発生も考えられ、決して気を緩めてはいけない」と強調した。省内で記者団の質問に答えた。
 一方、ワクチン接種に同意していない農家に対して、口蹄疫特別措置法に基づいた強制的な殺処分を検討していることに関し「考えなければいけないという見解は変わらない」と述べ、引き続き検討する姿勢を示した。 
7月5日17時57分配信 時事通信



宮崎でFMDの牛が見つかり、
再び移動制限等が行われる事となりました。
今まで、FMDに関しての記事を書いてきましたが、
FMDとはどんな病気なのかをまとめたものをもう一度読んでいただき、
その上で他国の対応の変化から日本の対応について考えてみませんか。


【FMDの特徴】 
1.蹄が2つに割れている動物に罹る、感染力(他にうつす力)が強い感染症
2.牛の成体の場合、死に至ることは殆ど無く、通常動物は2週間程度で回復する(豚は牛よりも致死率高い)
3.罹った動物の他、carrierと呼ばれる生物や風等、不特定多数によって伝搬されるため封じ込め不可能
4.人にうつったという報告はない
5.感染した動物を食べても人には影響ない
6.治療法はない
7.ワクチンは100%の効果無し
口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.5より)


FMDに罹った動物は痩せて、商品価値がなくなると言われていますが、
1922-24年にイギリスでの流行の際、FMDに罹った牛を介抱し、
1923年のRoyal Showでその牛を優勝させた
Charles Clover 氏の業績があります。
(“ Old cowmen’s cure served duke’s
pedigree herd”, The Daily Telegraph 12-3-01,p6)
 
こうしてみると何故多量殺処分が必要なのかよく分かりません。
何故なのかと考えれば、
(1)FMDには殺処分、とインプットされている
(2)FMDの事をよく知らない
(3)殺処分が有効と主張する獣医師、いわゆる専門家、官僚、政治家達に対して、そうでは無いという勇気がでない
などが挙げられると思います。

殺処分に関する議論は、
2001年イギリスで大流行が起こったときから活発に行われており、
mediaも多く取り上げているのですが、
日本では「殺す事が最良の方法」以外の意見が報道されないことは、
極めて不自然だと思います。
http://www.FMD.brass.cf.ac.uk/FMDreferencesnewspapers.html

殺処分は、発生のごく初期、
バイオテロの可能性も鑑みて行うことは
理にかなっていると思われます。
しかし、ある程度以上の広がりを見せてからは、
殺処分を行うことの方が損失が多くなります。

まず、経済的なダメージが大きいことが挙げられます。
畜産業そのものに関わる損失だけでなく、
観光や他の産業にも影響します。
また、貴重な種牛などを失うことは、
経済損失だけでは論じられないダメージがあります。

いつの間にか、感染拡大のための殺処分でなく、
殺処分自体が目的となっているのが現状ではないでしょうか。
イギリスの大流行でも、今の日本と同じ状況になりました。
英国国立農畜産組合(National Farmers Union)のトップだった
Richard MacDonaldの、
「我々はその科学とやらに行き詰まり、
自分たちが信じてやっている事が正しいとする結論に至った」という言葉は、
正にこの状況を的確に言い表したものだと思います。
その結果、イギリスは、殺処分の対象を緩和することとしました。
具体的には、明らかに健康だと思われる牛に関しては、
殺すか殺さないかは農家の決断にゆだねる、と言うものでした。
http://www.abc.net.au/rural/news/stories/s284276.htm
 

10年ほど前、多くの犠牲を払い、損失を生んだ英国の事例で、
これだけの議論がなされたのにもかかわらず、
日本ではどうでしょうか。
正に「殺す事に意義がある」という流れの中で、
冷静な議論などは何処かに吹き飛んでいるようです。
 
日本の悲惨な状況を鑑みてのことでしょうが、
2010年6月28日、オランダ政府は、
「今後FMDの流行の際、殺処分は2度と行わない」という声明を発表しました。
http://www.warmwell.com/
今の政策を推し進めたとき、誰が幸せになるのでしょうか。
将来もまた同じ事を繰り返すのでしょうか。
もし、幸せな人がいるとしたら、行動計画通りに業務を遂行した、
農水省官僚だけなのではないでしょうか。
 
殺処分に関する議論も無しに、このまま殺し続けることは止めませんか。
FMDは自然界にごくありふれた病気です。
感染経路も複数あり、特効薬や完全な予防法も無い以上、
封じ込めは不可能であり、根絶することは不可能です。
そうであれば、ウイルスとの共存をも含んだ判断が必要な時だと思います。

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