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口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.5

止まらぬ感染拡大、10年前の成功で油断

 宮崎県で口蹄疫(こうていえき)の感染拡大が止まらない。10日には日本トップクラスの畜産基地、都城市で感染が確認されたほか、日向市や宮崎市でも新たな感染の疑いが浮上した。戦後最大の家畜被害を生んだ背景には何があるのか。

 畜舎の床一面に剥(は)がれた豚の爪が無数に散らばっていた。蹄(ひづめ)を傷めた親豚が何度も立とうとしては崩れ、横には息絶えた子豚たちが折り重なっている。

 「こんな状態で生かしておいてもつらいだけ。いっそ早く殺してやりたいが、埋める場所もなく身動きがとれない」。宮崎県川南(かわみなみ)町で30年以上養豚業を営む男性(52)は涙ぐんだ。

 止まらない被害を前に、男性は「これほど広がるなんて。これは人災ではないのか」と憤った。



 「これじゃ無理だ。感染は防げない」

 同県都農町で感染第1例が発表された4月20日。都農町から川南町、宮崎市と県東部を縦断する国道10号を眺めながら、宮崎市の畜産業、尾崎宗春さん(50)は焦った。消毒ポイントは設けられているものの、消毒するのは畜産農家の車ばかり。一般車両は素通りしていた。尾崎さんの危惧(きぐ)通り、感染はその後、10号沿線に広がっていく。

 10年前の2000年3月、宮崎県は国内では92年ぶりとなる口蹄疫に見舞われた。この時は封じ込めに成功し、殺処分は3農家35頭にとどまっている。尾崎さんは「当時の方が対応が迅速で徹底していたような気がする」と振り返る。

 発生初日に設置した通行車両の消毒ポイントは、10年前は13か所だったが、今回は4か所。前回は、家畜の移動制限区域を20キロ圏内、搬出制限区域を50キロ圏に設定したが、今回はそれぞれ10キロ圏内、20キロ圏と大幅に縮小した。

 危機意識の薄さも目立った。感染が分かった4月下旬には、感染の飛び火を恐れ、県内外では様々なイベントの自粛が始まった。こうした動きに、県の渡辺亮一商工観光労働部長は4月28日の対策本部会議の席上、「ちょっと過剰な反応なのかな、とも思います」と語っていた。県が非常事態宣言で県民に活動の自粛を求めるのは、それから3週間も後のことだ。



 蔓延(まんえん)の背景には、埋却地や人手不足による処理の遅れもある。

 赤松前農相は6月1日の記者会見で、「(県に要請して)今週中には、感染した牛や豚の殺処分を終えたい」と、早期処理を明言した。ところが実際には、川南町周辺などで感染したとされて殺処分対象になった約19万頭のうち、殺処分も埋却もされていない家畜は6月9日時点で3万1820頭も残っている。

 このうち約1万7000頭は豚だ。豚はウイルスを体内で増殖させやすく、牛の100〜1000倍も拡散させやすいとされており、「いわばウイルスの火薬庫を放置している状態」(農水省幹部)だ。蔓延の原因について、農水省や県は「今回のウイルスの感染力が10年前に比べて格段に強かったこと」と説明する。だが、口蹄疫問題の対策などを決めてきた同省の牛豚等疾病小委員会の委員は明かした。「甘かった。10年前はうまくいったという自信が、失敗の始まりだった」(東京社会部 十時武士、畑武尊、西部社会部 本部洋介) 最終更新:6月11日3時5分
読売オンライン

FMD(口蹄疫)が広がりを見せています。今までFMDに関しては4つのブログ(口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.1〜vol.4- )を書いてきましたが、今一度FMDとはどういう病気かをまとめてみたいと思います。

1.蹄が2つ以上に割れている動物に罹る、感染力(他にうつす力)が強い感染症
2.牛の成体の場合、死に至ることは殆ど無く、通常動物は2週間程度で回復する(豚は牛よりも致死率高い)
3.罹った動物の他、carrierと呼ばれる生物や風等、不特定多数によって伝搬されるため封じ込め不可能
4.人にうつったという報告はない
5.感染した動物を食べても人には影響ない
6.ワクチンは100%の効果無し

感染経路は多岐にわたるため、「封じ込めは不可能」ですから、ニュースにある「これじゃ無理だ。感染は防げない」は当然のことなのです。どれくらい広がるかはウイルスに聞いてみないと分かりませんし、10年前のウイルスと今回のFMDウイルスは全く同一ではありませんから、広がり方も違ってくるのは致し方ないことです。

しかし、広がったからといって、多くの動物は回復し、感染した肉を食べたところで人には影響ないのです。これは農水省のHPにも書かれています。

2001年にイギリスでFMD大流行が起こりました。その際のBBCニュースには多くの人の意見が挙げられています。パニックを起こした英国政府とは裏腹に、多くの視聴者の声は、的を得ています。

「人にうつらないし、食べても安全。殆どの動物は病気から回復すると言うのに、なぜ殺す必要があるのか」

「1940年代まではFMDにかかっても治るまで放置してきた。それが殺処分するという政策転換をし、他のヨーロッパ諸国も同様の政策をとるよう説き伏せた」

「感染源はたくさんある。全ての家畜を殺し、トリや昆虫を殺し、はたまた人間をも殺すまで殺し続けるのか」

「埋められずに放置された家畜の肉をカラスなどがついばみ、感染を広げているではないか」

「経済損失の大きさを考えているのか」

ケニアの獣医師のコメントは冷静です。「ケニアではFMDはごくありふれた病気だ。イギリスの対応は大げさすぎる」


今、日本のニュースで流れてくるのは「なぜ防げなかったのか」「人災だ」といったものばかりです。しかし9年前に多くの議論がされているのですから、なぜ日本のメディアはこうした番組を作ってゆかないのか不思議です。

メディアだけでなく、研究者からも多量殺処分に関する否定的な報告も出ていますが、日本では殺処分が有効、と言ったものばかりですから、違和感があります。※1)※2)

イギリスでの多量殺処分の結果、経済損失は1兆6千億円程度と言われています。日本の牛は国際的ブランドですから、被害の程度はこれ以上になる可能性もあります。

今回流行しているのは突然変異を起こして、人間にも感染するsuper killer ウイルスではありません。そうであれば、多くの経済損失とともに農家の負担、獣医師や担当者の疲弊を生み、文化的価値も大きい種牛を失いながらも、効果があるかどうか分からない多量殺処分をする意味は全くないと思います。

動物の感染症として恐れられる感染症としてH5N1トリインフルエンザがあります。このウイルスはヒトにも感染すると言うことで、WHOが最も恐れている病気の一つです。現在499人の症例がありうち295人が亡くなっています(致死率約60%ですからこちらはsuper killer ウイルスといえます)。

繰り返しますが、FMD流行の歴史の中で、ヒトが罹って死んだという確定例はありません。

今のままゆけば、H1N1豚インフルエンザに続く「政府が生んだパニック=人災」になってしまいます。今日本がすることは、殺処分をやめ、世界に向けて「不必要な殺処分対策をやめる」よう訴えることでしょう。

=参考文献=
※1)
Thrusfield M, Mansley L, Dunlop P, et al
The foot-and-mouth disease epidemic in Dumfries and Galloway, 2001. 2: Serosurveillance, and efficiency and effectiveness of control procedures after the national ban on animal movements.
Vet Rec,156(9):269-78,2005

※2)
Honhold N, Taylor NM, Mansley LM, et al
Relationship of speed of slaughter on infected premises and intensity of culling of other premises to the rate of spread of the foot-and-mouth disease epidemic in Great Britain, 2001.
Vet Rec,155(10):287-94,2004

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