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反原発が理解できないリスクの問題

烏賀陽弘道氏がJBPRESSに「半減期が過ぎても環境から消えない放射能」という記事を書いてtogetterで嘲笑の的になっていますが、烏賀陽氏の間違いは不勉強な反原発が犯しやすい典型例かもしれないので、少し詳しく触れておきます。

そもそも「半減期」という言葉から類推できるように、放射線量は半減期が経過すると半分に減ります。したがって、消えるなどということはない。これを知るだけでも、烏賀陽氏が3年半かけて取材するよりも有用な知識と言えます。

ところが、烏賀陽氏の勘違いはこれにとどまっていなかったようです。

 私が件の記事を馬鹿にするツイートを投稿したところ、私をブロックしてるはずの烏賀陽氏が降臨してメンションを届けてくれました。


つまり、烏賀陽氏は「オレは知っていたが、知らない馬鹿のレベルに合わせて記事を書いたんだよ」といいたいようなのです。

では、このご本人のツイートで「半減期過ぎても放射性物質は残る」とは、どういうことなのでしょうか?

元記事の本文でも随所に匂わせているのですが、烏賀陽氏の脳内では放射線のレベルが「半減期前」と「半減期後」に分類されてるようなのです。

簡単に図示すると、次のようになります。
なんちゃって半減期
ここで烏賀陽氏は「世間はみんなBなら安全と言ってるけど、オレが取材した偉い先生はBでも危険と言ってるんだぜ〜」という主張をしたかったようなのです。

「ヨウ素131の半減期は8日」という知識を知っていても、半減期がどういうものなのか知らないのでは落第ですね。もちろん、上の図のような認識をしてる人はごく稀だと思いますし、ほとんどの地元住民はこんな図を見たら頭がくらくらするんじゃないかと思います。

いまさらですが、半減期の説明をするためのグラフを東京都環境局のサイトからもらってきましょう。

半減期の説明グラフ
この図を見ればわかるように、「ある時点の放射性物質が半分になるために必要な時間」が半減期です。そして、どの時点を基準とするかによって、半減期がたった後の放射線量は当然違います。

元の放射性物質の量が膨大なら、半減期が何回来ても安全とはいえないし、逆に少ないのなら、半減期が来る前に安全水準に達するかもしれない。とにかく、ある時点における放射線量が特定できないと、何日後に安全になるのかはわからないのです。

あたりまえ過ぎる話ですけどね。



元記事に当てはめると、ハッチ博士はチェルノブイリのヨウ素131の場合、2ヶ月つまり60日間で無視していい量になると予測した。

これは、半減期が7.5回繰り返されて放射線量が約1000分の6に減るから、という計算ですね。私の計算式があってると仮定して(笑)、

60÷8=7.5
0.5^7.5=0.0055....

ということになります。

もちろん最初に放射線量がどのくらいか、というのを推定してから、安全水準に達するまでの期間を逆算して行った結果が60日、ということになったんだと思います。



この計算で使われるように、半減期とは「放っておいても放射能が衰退していく速度」を表しているわけでして、烏賀陽モデルのような「期間がすぎれば安全になる目安」ではありません。

烏賀陽モデルを見て気づいた人もいると思いますが、あれは賞味期限の設定です。製造日から一定の時間が過ぎたら食中毒のリスクがあるので食べてはいけないことにする、という線引きです。この線引きのおかげで、私達は詳しいことを知らなくても「食べられる・食べられない」の判断をすることができます。

しかし、半減期というのは「一般人がどうすればいいのか」という行動指針を決めるよりはるか手前の段階の、放射線量を計算するための係数ですから、これだけ知ってても何の意味もないわけです。

それなのに不勉強な反原発の方々が生半可な知識で半減期なる言葉を振り回し、「××の半減期は◯万年、気が遠くなるような長さだ、恐ろしい」とか言ってるわけです。もうアホか、としかおもわなかったのですが、烏賀陽モデルで考えるとたしかに恐ろしい・・・なるほどそれで恐れていたのかと。


おそらく、この烏賀陽モデルを烏賀陽氏が脳内に創り上げてしまった背景には、リスクを量によって相対的に判断する訓練が全くできていないことがあるんだと思います。

ところが現実には、この世に生きている限り「危険でなければ安全」というわけにはいきません。「どの程度の危険は容認するか」がリスク管理の大前提です。

東京都環境局の示したグラフにあるように、放射線量は時間とともに決まった割合で減っていきます。「被曝は少量でも蓄積する」という考え方に立つ以上、この計算はきちんとしていかなければいけません。烏賀陽氏が被曝にしきい値があると考えているなら別ですが、そうでない限り烏賀陽モデルでリスク管理をするのはありえない。被曝量を計算しながら対処しなければいけないんです。



烏賀陽氏にとっての理想の世界は「期間Aは危険、でも期間Bになれば安全」なのかもしれませんが、放射性物質は期間Bでも残ると聞いて、おそらく愕然としたのでしょう。それで、放射能は恐ろしいと…察するに余りあります。

しかし、放射線被曝に限らず、何のリスクを計算するにあたっても、そんな安全世界はこの世のどこにも存在しません。むしろ放射性物質の半減期はほぼ正確にきっちり守られるので頼りになるくらいです。もっといろいろなものに「えっ」と思いながら学習していただきたいものです。

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