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【読書感想】インターネットを探して

インターネットを探して

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内容紹介

インターネットの“実体"とは何のことで、どこにあるのか?――本書はそれを見て確かめる旅の詳細を記した、いわば“大人の社会科見学 インターネット篇"である!

私たちはふだん、ウェブサイトやメールが、どこを通って自分の目の前まで来たのかを意識することはまずない。それほどインターネットは日常生活にすっかり溶け込んでいる。しかしそのデータは、誰かが送信し、どこかを通ってきたからこそ届いたのだ。著者ブルームはあるきっかけでそうした“モノとしてのインターネット"を強く意識するようになる。つまり、「人類史上もっとも強力な情報ネットワークが、リスの出っ歯でかじられただけで不調におちいった」のを目撃したのだ。

やがてブルームは、インターネット「そのもの」をこの目でしかと見ようと決意して、長い旅に出る。多くの人に話を聞き、世界をまたにかけて飛び回る彼が見つけたものとは……。驚きと感動が満載の冒険譚。

Kindle版で読みました。

 「インターネットとは何か?」という質問に対しては、あまりにも多様な答え方がありすぎるのですが、この本は「リスにケーブルをかじられたことにより、インターネットが不通になった体験」がきっかけて、著者が「物質として、インフラとしてのインターネット」を探す物語です。

 僕のような「パソコン通信」のはじまりをリアルタイムで体験してきた世代にとっては、「インターネットは、目に見えない魔法みたいなものが世界中を飛び回ってつながっているわけではない」ことが、なんとなく実感できるのですが(ケーブルの接続とかネットワークにつなぐための設定とか、けっこうめんどくさかったですしね。いまはWi-Fiでパスワードを入れるだけで繋がるのが「普通」になってしまいましたけど)、いまの若い世代にとっては、インターネットは「存在するのが当たり前」なんですよね、たぶん。

 携帯電話のネットワークなども含めると「インターネットが繋がらない世界」のほうが「異常」だと感じているはずです。

 まあ、たしかに、たまに郊外に出て、携帯が「圏外」になると、「おお、ここは圏外なんだな!」って、ちょっと感心することもありますし。

 そんなに圏外がありがたいのなら、電源切れよ、って話ではありますけど。

 インターネットには無数の端があるように思えるが、中心はびっくりするほど少数しかない。表面上、この本は、ぼくのそうした中心への旅、インターネットのもっとも重要な場所への旅のレポートだ。たとえば巨大データ倉庫を訪問したが、それ以外にも、ネットワーク同士が出会う迷路じみたデジタル広場、大陸同士を結んでいる海底ケーブル、それにガラス繊維が電信のために建てられた銅管のなかにぎっしり詰めこまれ、信号が集中している建物など、さまざまなタイプの場所を訪れた。何度もぼくのガイドをつとめてくれたネットワーク・エンジニアという少数者の一員でないかぎり、それはまちがいなくあなたが知っているインターネットではない。しかし、それこそがあなたが使っているインターネットなのだ。

 著者は、街中に、あるいは郊外につくられた「巨大データセンター」を訪れたり、「海底ケーブル」の修理の現場に立ち会ったりしています。

 まるで映画『マトリックス』の一場面のようなデータセンターもあれば、古ぼけた建物のなかに、機械が詰め込まれたような場所もあります。

 あるデータセンターでは「来た人を驚かせるために、あえてサイバー空間っぽくつくっている」なんて言っているスタッフもいました。

 ひとつ言えることは、インターネットを世界中に張り巡らせ、膨大な情報をやりとりしていくためには、その情報を紙でやりとりすることを考えれば、微々たる量なのかもしれませんが、大きなルーターやサーバーなどの機械が驚くほどたくさん必要だし、国と国とは、海底の細いケーブルで「物質的にもつながっている」のです。

 そして、ネットは網の目のように張り巡らされていて、堅牢でどこかにトラブルが起こっても相互補完できるようにみえるけれど、そのハブとなる部分に物質的な損傷が起これば、情報のやりとりは容易にストップしてしまいます。

 ある関係者は「もしこのデータセンターに、気がふれたヤツがチェーンソーを持ってやってきたら、どうなると思う?」と述べています。

 論理レベルでなら、インターネットには自己修復能力がある。ルーターは自動的に利用可能なルートのなかから最善のものを見つけだす。ただ、それは見つけるべきルートがあればの話だ。物理的なケーブルのレベルでは、トラフィックのルート変更は新たな物理的経路をつくりだすことを意味する。東京のエクイニクスの施設や、パロアルト・インターネット・エクスチェンジや、ロサンゼルスのワン・ウィルシャー、つまり主要な太平洋横断ネットワークが合流点を設けている場所で、新たな黄色いパッチケーブルをあるネットワークのケージから別のネットワークにつなくことを。しかし、それが不可能なとき、ネットワークのオーナーたちは、海の底から鉄の鉤でひっかけてケーブルを海上に上げるという耐えがたいほどにアナログな作業を強いられる。ルソンの一件の後、タタはこの海域に三隻の船を三ヵ月近く派遣して、ケーブルをひきあげ、つなぎあわせてからまた海底にもどし、次の破断点に向かうという作業をくりかえさせた。

 この「ルソンの一件」というのは、2006年12月に台湾南部を襲った地震のことを指しています。

 このとき、「台湾海峡を通っている9本のケーブルのうち、7本が切断され、台湾、香港、中国、南アジアの大半が一時的にグローバル・インターネットから遮断された」そうです。

 東日本大震災では「ネットの力」が認識されましたが、大きな自然災害の場合には、ネットも遮断される可能性は十分にあるのです。

 この本を読んであらためて考えさせられたのは、あたりまえのことなのですが、「ネットもまた、物質の集合体である」ということでした。

 「クラウド」なんて言うけれど、その情報を保持しているのは「手にすることができない雲みたいなもの」ではなくて、「データを収納しておくための箱」なんですよね。

 ところがコメディ作家たちには、”インターネット”を別の角度から見てひとつの機械ととらえる傾向があることにぼくは気づいた。テレビアニメ『サウスパーク』の「使いすぎ」というエピソードでは、ずんぐりしていて不快で小さなキャラクターたちが、インターネットがいたるところで不通になる、というおなじみのジレンマの極端な例に直面した。まず、彼らはほんとうに不通になっているかどうかを突きとめようとするが、「インターネットがなくなってることを調べるためのインターネットがないんだ!」とあるキャラクターが無表情でいう。やがて、”インターネット”自体が画面に登場する。

(中略)

 最終的には、ひとりの少年が解決策を見いだす。空母の滑走路のような鋼鉄製の斜面をのぼって巨大な機械のもとへ行き、裏にまわりこんでコンセントから馬鹿でかいプラグを抜いて差しなおす。助かった! 「黄色いランプの点滅がしっかりした緑の点灯になったぞ!」と小さな男が歓声をあげる。こうして平和がもどる。

 けっこう専門用語も多いし、ネットワーク管理などを生業にしている人や、インターネットの成り立ちにすごく興味を持っている人以外にとっては「ちょっと難しい、とっつきにくい本」ではあります。

 読まないとネットが使えないわけじゃないし、読んでもネットにつながらないときにどうすればいいのか、わかるようになるわけでもない。

 でもまあ、だからこそ、こういうのが「当たり前になってしまったインターネット生活の盲点」にもなっているのです。

 万人向けではありませんが、「好きな人には、たまらない本」だと思いますよ。

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