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大塚玲子『PTAをけっこうラクにたのしくする本』

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きょうはPTAの地域ブロックレベルでの研究集会である。ぼくは小学校のPTAの広報副委員長になったので、出なければならなくなった。仕事を休んでの参加である。

 「仕事を休んでまで参加かよ」と聞くとぞっとするが、副委員長になるさいに「年1回、これだけはどうしても」とお願いされていたので、やむをえない。「他の会議は出なくてもいいから」と委員長にいわれて、休ませてもらっている。

 PTAは、役員と委員はちがう。委員というのは各クラスの係のようなもので、うちの学校ではクラスごとに7~8人がなる。広報だのベルマークだのといったイベントごとには忙しくなるが、ふだんはそうでもない。役員は学校全体のとりまとめ役であり、忙しさがまったく違う。

 ぼくは、その中間。委員の中での取りまとめ役である。

 一般の広報委員は、ほとんど何か1つのイベントに参加して写真や記事をかけば終わりである。正直、楽である。ところが、副委員長はここから広報誌の体裁に編集する役割をもっている。ぼくは編集ソフトが使えるので、データで広報誌を組むところまでやることになった。

 広報誌は8ページのものを年3回発行する。

 先ほど一般の委員は記事を書いてくるかのように言ったが、実際には記事を書いてくるのは数人である。そもそもワープロソフトはおろかパソコンさえ扱えない人が委員の半数を占めている。おまけに委員は1年交代で、これまで記事などというものを書いたことはない人ばかりなのだ。

 では何をやるかというと写真をとってくるのである。

 記事は正副委員長とそのサポート役が書くことになっている。

 たしかに広報誌は写真が中心になっている。記事などほとんどの人は読んでいないのかもしれない。

 すさまじかったのは、写真の数。運動会の写真は合計すると1000枚近くが集まってくる。それをえり分けるのは1人のサポート役だけであった。徹夜に近い作業量でやったというから半端なものではない。しかも、せっかく選んでもその後学校側のチェックが入り、「載せてはいけない児童」の写真は外される。年度初めにプライバシーについての契約を個別の家庭と結ぶのだ。

 ぼくも編集作業で苦労した。

 仮に業者にこのプロセスを頼んでも、同じような校正作業は行われるんだろうなと思った。


 第1回目の広報誌をつくってみて、強く感じたことは二つある。


 一つは、記事も書けない、写真も選べないような人に記者になってもらうのは、本人にとっても回りにとっても不幸ではないかということ。もちろん意欲があれば別だけど、そういう人ばかりではない。「年1回写真だけとればいい。それでPTAの役を果たしたことになる」という「楽」さに魅かれて広報になった人もいる。

 ふたつ目は、広報誌の中身。PTA広報誌といえば、学校行事で子どもたちが写っているものが載るのでは、と思う人も多いだろうが、近年「それでは学校新聞である」という意見がPTA広報誌をコンクールする側から出されて、PTAの活動そのものに焦点をあてるようになってきた。

 まあそれは一つの道理なんだが、それは保護者が知りたいことなんだろうか、と思う。もっといえば「これ、面白いのか」と。

 PTAの目的をどう定めるかによるのだが、たとえば、習い事をやっているのかとか、塾に行っているのかとか、学校の勉強がわからなくなっているがどうすべきなのかとか、そういうことは保護者の関心事ではないのか。その関心事から出発して、学校の環境整備にモノをいうというアプローチもあるのではないかとぼくなどは考えてしまう。



 さて、そうした折に読んだのが本書である。


PTA再活用論―悩ましき現実を超えて (中公新書ラクレ) 類書に川端裕人『PTA再活用論』(中公新書ラクレ)や、まついなつきのコミックエッセイ『まさかわたしがPTA!?』(メディアファクトリー)がある。

川端の本はPTAとはどういうものかをやさしく紐解きながら、その功罪のポイントを書いている。まついの本は基本的に体験記である。体験記でありながらPTA組織とはどういうものかをやさしく書いている。

まさかわたしがPTA!? これに対して大塚の本書は、PTAの組織とはどういうものかを書いてはいるが、そのスペースはほとんどない。圧倒的に多くを占めているのは、改革の方法、それも超実践的な改善方法の指南である。大塚自身がそれを論じるのではなく、他の人たちの体験や取材を通じて論じているので説得力がある。

 PTAのあり方を根本的に変える場合はもちろんだが、会議の効率化や仕事分担の工夫など、マイナーチェンジをしたい場合にも参考になる。


 ぼくが読んだところ、本書の中でPTAを変える際に一番大事だとされているのは、「PTAは何のためにあるのか」ということを全体で確認することだ。

PTAは、子どもたちが育つ環境をよりよくするため、保護者が学校や地域と協力して活動するものですが、その目的はしばしば忘れられ、いつのまにか「例年どおり」に活動を継続することや、公平に仕事を分担することなどが目的となってしまいがちです。/まずはいまいちど、PTAの本来の目的をみんなで確認・共有することから始めてはいかがでしょうか。(本書28ページ)

 それは抽象的な目的の確認ではない。

 それによって仕事をリストラするという超実践的な目的のために行う。

「子どもたちが育つ環境をよりよくする」というPTA本来の目的をみんなで確認・共有することで、「例年どおり」に引きずられた無駄な活動をなくしやすくなります。/目的がはっきりすれば、いまのPTAのなにを変えるか、どんな手段が可能か、といったことが、おのずと見えてきます。(本書46ページ)

PTAをけっこうラクにたのしくする本 たとえば、ぼくのケースでいえば、「広報誌なんてそもそも要るの?」というところから出発することになる。本書では「広報の仕事におけるくふう」という節がある(156ページ)。

 この中に、広報誌の発行そのものをやめてしまうケースが載せられている。

 一つは、役員が発行している「PTAだより」に連絡事項などがすべて載っており、あえて広報誌体裁にしなくてもいいのではないかということでやめてしまった例。

 もう一つは、すぐゴミになってしまうので、もうウェブでやればいいのではないかということになった例。むしろいつでも必要な人が見られるのがウェブ媒体ではないのかということになったらしい。


 内容についても書かれている。ある小学校の教師の、次のようなコメントである。

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