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環境教育のヒントがたくさん詰まった、「海の学び」

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レイチェル・カーソンの言葉に、「センス・オブ・ワンダー」というものがあります。直訳すれば、自然を不思議に思う気持ちや感性。環境の尊さを知るためには、自然に触れて、不思議に思ったり感動したりする心を持つことが何よりも大切だとカーソンは言います。

7月20日、"海の日イブ"の日に、東京大学で行われた海洋教育セミナー&フォーラム「海の学びの万華鏡」に参加をしてきました。海洋教育促進研究センターと日本財団によって行われた、海洋教育を考えるイベントです。

まさに子どもたちの「センス・オブ・ワンダー」を育むような海洋教育を実践している先生方の挑戦と、ライフワークとして海と生きるお二人の活動を聞き、海を学ぶことの魅力を知ることができました。

海という枠を超え、教育全般に生かされる「海の学び」

午前の部は、「海洋教育セミナー」。神奈川県三浦市・茅ヶ崎市で実際に海洋教育に取り組む先生方が、自らの教育現場での経験を語ってくれました。

まずは、三浦市立名向小学校で5年生のクラスを担当した岡本郁恵先生、三浦市立上宮田小学校で同じく5年生のクラスで担当した佐藤光家先生が発表。

岡本郁恵先生(左)佐藤光家先生(右)
岡本先生は、身近なものから興味を持ってもらうアプローチで海の学びを実践します。名向小学校は、海まで徒歩30分。まずは5月に遠足で磯遊びをし、7月にはマリンパークを見学。10月に東大臨海実験所や海洋研究開発機構へ社会見学をして、海への知識を深めます。さらに2月には海で働く地域の人々に出前授業を行ってもらい、生徒たちは三浦の海の生物について、実際に触りながら説明を聞きました。

そして1年の終わりには、保護者や社会見学をした施設の所長さんに向け、海について学んできたことをプレゼンする発表会を行いました。「海流について」「海の生き物について」といったテーマで、生徒たちは模型を作って発表しました。

このように身近なものから段階的にステップアップしていくことで、スムーズに興味・知識を広げることができたといいます。子どもたちの感想としては、「ただそばにあるだけだった海に、生き物がいることがわかったし、大人がいろいろな取り組みをしていることがわかった」「三浦の海を好きになった」などがあったとのこと。

それに対して佐藤先生は、歴史を考えることで海に興味を持ってもらうアプローチを行いました。まずは50年前の三浦海岸の写真を見せ、子どもたちに気づいたことを発表してもらいます。その後に実際に今の三浦海岸を訪れ、調べたいテーマを探しました。

みんなの意見を合わせて、「海の秘密を探れ」「観光客が三浦海岸を訪れる魅力を探れ」「今と昔の三浦海岸はどちらがすてき?」「三浦海岸を◯◯に変えていこう」という4つの学級課題を設定。これらの課題を1年かけて考えていきます。

課題を行うなかで、子どもたちは自発性やディスカッションの力を身につけることができたといいます。たとえば、「観光客が三浦海岸を訪れる魅力を探れ」の課題を調べるために、自分でアンケート用紙を作って観光客にインタビューをする子もいたとのこと。また「三浦海岸を◯◯に変えていこう」の課題では、生徒同士で意見が大きく対立。そこでは各自が調べてきたことを基に、クラスで話し合うことができたそうです。

自ら仮説を立て、調査をし、考察やディスカッションを行う。まさに大学で行うような研究と同じ過程を、小学生が立派に行っていることに驚きました。

岡本先生と佐藤先生の取り組みはアプローチは異なるものの、どちらの場合もただ海について知るだけでなく、「海の学び」が地元愛を育てたり、自発性やディスカッション能力を伸ばすことにつながっていることがわかりました。

山田剛輔先生
次に、茅ケ崎市立汐見台小学校で1・2年生を担当した山田剛輔先生からの発表がありました。 山田先生のクラスでは、子どもたちが身近な自然に興味・関心を持てるよう、松の苗木を“松の子ども”と呼んで育てて観察しました。ここでおもしろいと思ったのは、国語の詩づくりの授業で、松の子への思いを詩に表すように子どもたちに求めたこと。
このような教科横断的な学習活動が、子どもたちの思い、感性や感覚をよりいっそう豊かに表現することにつながると考えたのです。
と、山田先生はそのねらいを話します。

また命を考える授業では、地引網を体験し、獲れた魚を漁師の方にその場でさばいてもらったそう。魚がさばかれる瞬間を目の当たりにしたことで、普段いただいている命の尊さを実感。食べることについても考えるきっかけになり、子どもたちは給食で魚を残さなくなったといいます。「命を大切にしなさい、残さずに食べなさい」と言葉で言うよりも、 子どもが命と触れ合うことの方が、はるかに大切であり効果的であるのだと思いました。 山田先生の取り組みもまた、「海の学び」が海という枠を超え、命や食の学び、文章や表現力の学びにつながっていることがわかりました。

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