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【読書感想】東大卒プロゲーマー

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東大卒プロゲーマー (PHP新書) 東大卒プロゲーマー (PHP新書)
内容紹介

優勝回数世界一のプロゲーマー、初の自著!

ゲームと勉強をリンクさせて東大に合格、バイオマテリアル研究の成果が国際学会で評価された人物は、なぜエリートコースを捨て、未開の地だったプロゲーマーの世界へ進んだのか? さらに彼はプロ入り後、順調に勝ち星を増やしていたにもかかわらず、最大の武器である合理性を手放すことを決意する。

論理の限界にぶつかったIQプレイヤーは、何を考え、どう行動したのか――ゲームをとおしてたどりついた、新しい勝利の方程式。

「ゲームをしていたのに、東大に入れたのか。ゲームをしていたから、東大に入れたのか。――僕の場合は後者であろう」

「合理性や効率を極めた僕だからこそ、それだけでは勝てないことを身をもって学べた」

「練習に付き合ってくれるプレイヤーたち。働いて家庭をもち、一線を退いた彼らの『おれの分まで、頼むよ』という想い。彼らが、僕のモチベーションの源泉だ」(すべて本書より要約)

東大卒プロゲーマー!

僕の中にも、「せっかく東大を出たんだから、もっと他にやることあるんじゃないの?」という気持ちはありました。

僕自身もゲーム大好き、にもかかわらず。

「ときど」さんがプロゲーマーになるまでの道のりと、プロゲーマーの仕事の現状は、こんな感じです。

 僕は1985年生まれで、小学校1年生の時から格闘ゲームを始めた。以来、格闘ゲームというジャンルの成長と歩調を合わせるかたちで、僕という人間も成長してきた感がある。

 17歳のとき、初めて海外大会で優勝し、「世界一」のタイトルを獲得した。それからというもの、世界中で行われる格ゲー大会に参戦してきた。アマチュアの時には自費で参加したりもしていたわけだが、今となっては海外遠征は、僕の仕事における立派な「出張」だ。

 プロ入りしたのは、東京大学大学院在学中の2010年11月。それからは、「ゲーム1本」で生きている。ほかの仕事をもたず、ゲームだけで生計を立てているということだ。

 現在は『マッドキャッツ(Mad Catz)」という、テレビゲームのコントローラーなどを製造販売する米国企業のスポンサードを受けている。プロとしての収入源は、主にふたつ。

 ひとつは、スポンサーから支払われる固定給である。彼らの製品・サービスについて、プレイヤーの立場から意見を述べたり、PR活動に協力したりする。具体的な数字は伏せるが、これだけで十分に生活をまかなえる額である。

 もうひとつは、大会出場時の賞金である。国内外の格ゲー大会に参戦し、そこで好成績を収めると、順位に応じた賞金を獲得できるわけだ。世界最大規模の格ゲーイベントともなれば、1タイトルでの優勝賞金だけで250万円プラス車だったり、複数対凸での賞金総額が1000万円を超えたりする。僕は現在、月1ペースで海外に遠征している。

ゲーム制作者ならともかく、ゲームプレイヤーが「職業」として成り立つのか?と思っていたのですが、「プロ」が成り立つ土壌は、すでに存在しているのです。

世界のゲーム人口を考えると、狭き門ではありますし、選手寿命がどのくらいなのか、まだ見えないとしても。

「ときど」さんは、ゲームのことをよく知らない祖父母世代には「ゴルフのタイガー・ウッズいるでしょ? あれの、規模の小さいバージョンですよ」と説明しているのだとか。

格闘ゲームの世界での「プロゲーマー」の収入源はこんな感じですが、「プロゲーマー」は格闘ゲーム以外のジャンルではもっと一般的なものになっていて、ネットワークゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』での公式リーグ1位の賞金は100万ドル(約1億円)にもなるのだそうです。

この新書を読んで、「ときど」さんのゲームに対する向き合い方を知ると、「結局、どの世界でも、成功する人の努力のしかたには大きな違いはないのかな」と、あらためて思ったんですよ。

実際に僕がみてきた「学問や研究の世界の大家」の大部分は「この人は、別の道を選んでも、きっとその世界で成功していただろうな」という人たちでした。

 そこで、最短距離で成果をつかむために有効な手段に、「しらみつぶし」がある。

 といっても、これは本当にしらみつぶしにやるということではなく、あくまでも「しらみつぶし的な」作業をするということ、その労をいとわず行うべき、という内容だ。

 格闘ゲームでは、技相性(文字どおり技どおしの相性)を調べるステップというのがある。たとえばユンというキャラクターの「雷撃蹴」という技がある。この技は空中から高速で相手に襲いかかる技なのだが、タイミングや軌道が読みづらく非常に対処が難しい。僕が使うキャラクター豪鬼は「雷撃蹴」にどのように対応するのが有効なのか? そこにポイントを絞って技相性を考えるのだ。

 検証の過程において僕は豪鬼のあらゆる技と、ユンの「雷撃蹴」との技相性を調べるのだが、これは非常に時間がかかる。

 しかし、一度調べてさえおけば、「この検証によって得られた豪鬼の対処法は、ユンの雷撃蹴に似た性質を持つ、ヤンの雷撃蹴や、ルーファスのファルコーンキックといった技に対しても、有効な手段となりうるのではないか」という予想を立てることができるようになる。これで、対ヤン、対ルーファス戦での解決策を見つけるまでの時間が大幅に短縮されるというわけだ。

 こうして、「この距離、この状況で、この技なら勝てる」という知識を積み上げていくのだが、なかには位置や距離にかんして、PC画面のドット単位で研究する猛者もいたりする。

 他方、研究においては、前提として「こういうデータが取りたい」という実験目標が明確にある。だから、目当てのデータをとるためにはどうすればいいか知恵を絞るのだが、ここで本当にしらみつぶしにやり始めると、膨大な時間がかかって、時間内に成果を出すのが難しくなる。ここで、「最大限に効率的なしらみつぶし」が必要になる。

 たとえば、僕がやっていた研究では、温度や濃度、微粒子サイズなどが、実験結果を左右する大きな要因であった。しかし、その3条件すべてを同時に変えながら実験すると、どの要因が結果に結びついているかがわかりにくくなる。

 だから、因果関係を調べるときは、条件を変える因子はひとつにとどめて実験を行う。

 温度なら温度だけを変えて実験、微粒子濃度なら微粒子濃度だけを変えて実験、微粒子サイズなら微粒子サイズだけを変えて実験する。

 こうして、まずはそれぞれの要因との因果関係を調べることで、以降はその都度出したいデータを得るために、どの条件を変更してやればいいのかを、ある程度予想することができるようになる。

 僕はゲームをとおして、こうした作業の重要性を知っていたし、かつ慣れてもいた。だから研究にも自然と応用できたのだが、普通の人の感覚だと、「そんなに面倒で時間のかかることはしてられないよ」となるわけだ。本当にそんな手間をかける甲斐があるのかと思われるかもしれないが、あるのである。こうした地道な積み上げ作業は、格ゲーにおいてはとくに、「後半からの伸び」につながると僕は見ている。

「ときど」さんの場合には、学生時代に格闘ゲームで頂点を極めたあと、研究の世界で頭角をあらわそうとしていた矢先に挫折して、プロゲーマーとして生きることを選んだのだけれども、実は、学生時代からずっと「研究と同じスタンスで、ゲームを攻略していっていた」のですよね。

いや、正確には「ゲームを攻略するのと同じ感覚で、研究を行っていった」のです。

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