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林修氏の「数学出来ない人に教える資格はない」は、ある意味正しい〜教育者の能力を考える(上)

林氏の本意を無視した文脈でのバッシング

「今でしょ!」の決め台詞で有名な東進ハイスクールの林修氏がテレビ番組の中で「数学が出来ない人はものを教えるべきではない」という発言をし、ネットで批判を浴びている。

こういった発言は、例によって本人の発言全てのうちの一部だけを切り取って、視聴者を煽るメディア独特の、あるいは最近ならネット論壇独特の展開だ。林氏の本意、つまりこの発言を行った文脈=コンテクストを無視し、もっぱら発言それ自体=テクストのみを取り上げ、このテクストに、今度は勝手にメディア側が都合の良いコンテクスト付けするというもので、当然、林氏のコンテクスト(コンテクスト①)と、メディアが示しているコンテクスト(コンテクスト②)がズレているのだが、後者の方を絶対視し、本人のコンテクストを無視するという流れで、当の発言者、つまり林氏がバッシングを受けるという「お約束の展開」となっている。で、その反面、本人の意図はないがしろにされるわけで。まあ、実にみっともない「稚拙」な話なのだが……。林氏は仕方なく、こちらの意図するところ、つまりコンテクストをあらためてブログにて説明するということになった(これも、しばしば「釈明」と解釈される。もちろん、これは「釈明」ではなく「誤った解釈訂正の要求」つまりコンテクスト②の否定に過ぎないのだが)。

「もう少し正確に言うならば、いわゆる学校(特に高校以上)の勉強を教えるにあたっては、数学ができなかった、それだけならまだしも、少なくとも数学の論理的な思考の世界を楽しいと思えなかった人が、高校生などに教えるのはいかがなものか、ということなのです」

これで「でっちあげられた失言」が終息すればいいのだが。もとより、こういった発言をことさらに取り上げる輩が前提としているのは、あまた存在する「数学嫌い」「数学苦手」な一般オーディエンス。これら人間にむけて「数学コンプレックスを逆撫でするような発言」として煽れば注目を浴びることまちがいなしと言った、煽り的な目論見が垣間見える。

そこで、こういったメディア的な煽りをいったん脇に置いて、あらためて、そして林氏の文脈に沿って、その発言の正当性について考えてみたい。僕の結論は「林先生、あなたは正しい!」というものだ。

教員には論理的な思考が必要だ

林氏は「数学が出来ない人」が「教えるべきではない」と発言してはいない。そうではなくて、上記のブログコメントにもあるように「数学の論理的な思考の世界を楽しかったと思えなかった人」が「教えるべきではない」と主張しているのだ。で、これ、ある意味あたりまえだろう。

ものを教えると言うことは「論理的に情報を伝達する」ことが先ずは前提条件となるはずだ。ミクロなレベルでは、教えるべき用語=概念を教える側が恣意的に解釈するのではなく、キチッと権威づけられた知識と方法、つまり定義に基づいて教える。その際、個人的な見解がそこに混入するようでは教師としては失格である(社会学では、このことを「価値自由」と呼ぶ)。また、こういった用語=概念をどう運用するか、さらにこれらをどう繋げ合わせるか、つまりマクロなレベルとしてどのようにつなぎ合わせるかについても全く同様だ。つまり、これは科学の基本的な手続きに他ならない。そして、こういった論理的な思考を最も純度の高いかたちで結晶しているのが数学なのだ。

ということは、数学が苦手であっても、こういったかたちで「論理的な思考」に対する魅力を備えている人間はいくらでもいるはずだ(お恥ずかしながら、僕も数学は数Ⅰでやめてしまったので得意な方ではないが、論理的な思考には関心がある)。林氏の指摘は、要するに数学の「論理性」への志向にあるのであって「数学それ自体」への志向をさしているのではない。

数学的思考を楽しめる心性だけでは教育者は十分ではない

ただし、それはあくまでも教育者としての必要条件。ということは、これだけでOKというわけではない。言い換えれば十分条件も満たされていなければ優秀な教育者の視覚は持ちあわせていないことになる。そして、それは言い換えれば、林氏の指摘だけでは教育者として十分でないと言うことでもある。

次回は、この「十分条件」を含めて教育者としての資質について洞察を加えていきたい。(続く)

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