記事

「みんなが結婚して、みんなが家を買う時代」はすでに終わった:データで見る日本の貧困な住宅政策

1/2

part.3を読む

司会:稲葉さん、ありがとうございました。続きまして住宅政策提案委員会委員長の平山洋介先生より提案をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

データで見る日本の貧困な住宅政策

平山:今、稲葉さんから不安定居住の話があったのですが、私の方からは不安定居住を生み出す母体としての住宅事情がどうなっているのか、という問題について駆け足でお話しします。

スクリーンショット 2014 06 07 16 58 38

まず、このデータは、年齢別に持ち家率の変化を見たものです。日本の住宅政策は「みなさん家を買ってくださいね」と持家取得を促す方針を基本としています。この方針は、戦後一貫して続いています。ところが、現在では、若い人の持家率が大幅に下がっています。もうすでに、容易に家を買える時代ではなくなっている、ということです。

ところが、今では、特に若い人の持ち家率の下がり方が非常に大幅に下がっていまして、もうすでに若い世代では、家を買う、ということがすんなりいくような時代ではなくなっているということであります。

持家世帯の代わりに増加したのは、民間借家に住む人たちです。これまでの住宅政策では、民間借家というのは一時的に住む場所であって、家を買うまでの短い間、狭くて古くても我慢して住む場所、という位置づけをもっていた。住んでいる人も、いずれ家を買うのだから、短い期間だったら我慢しよう、と思っていた。しかし、民間借家に長く住む人が増えています。若い世代では、民間借家は必ずしも一時的な住まいとはいえなくなった。持家一辺倒の政策ではやっていけなくなっている、ということです。持家支援だけではなく、民間借家支援を含めた住宅政策を組み立てる必要があると思います。

みんなが結婚してみんなが家を買う時代は終わった

スクリーンショット 2014 06 07 16 59 45

続きまして、これは家族類型の変化を示しています。今お話しました持家促進の政策は、たいていの人は結婚して家族をもって家を買うというシナリオに基づいています。政策上の想定において、結婚と持家はセットになっています。

しかし、このデータにみられるように、結婚して家族をつくる人はどんどん減っています。増えているのは、単身の人たちで、すでに「夫婦と子世帯」より多い。

みんなが結婚してみんなが家を買うというような時代はすでに終わったんだ、という認識を持つことがまず重要だと思います。

所得が減っているのに、家賃は上がっている:消える低家賃住宅

スクリーンショット 2014 06 07 17 00 06

では、賃貸マーケットはどう変化しているか。世帯員が2人以上の勤労者世帯の家計に関するデータをみますと、平均所得がじわじわ減っていることがわかります。ところが、平均家賃は下がらず、むしろ上がっています。その結果、収入に対する家賃の割合、つまり家賃負担率がじりじり上がっています。

このデータに現れているのは、奇妙な現象です。一般に、市場経済では、所得が減ったら、価格は下がる。にもかかわらず、所得が下がっているのに家賃は上がった。

なぜかといいますと、話が少し複雑になるのですが、実は、家賃が上がっているわけではない。デフレ経済のなかで、どちらかというと家賃は下がり気味だと思います。しかし、低家賃の住宅の絶対数が減っていて、その結果、平均家賃が上がった、ということです。

賃貸市場というのは、例えば、家賃10万~15万円くらいの家族向け住宅のマーケット、5、6万円の1LDK、ワンルームのマーケット、それから低家賃の2、3万円の住宅のマーケットなどがあります。これらは、連続しているのではなく、まったく別種のマーケットを構成しています。そして、重要なのは、低家賃住宅の絶対数が減って、そのマーケットが縮小した、ということです。

賃貸市場では、単身者の割合が高い。その単身者だけを取り出して統計をみても、平均家賃が上がるという同様の傾向がみられます。

単身者では、所得がより低く、家賃負担率はより高くなっています。

スクリーンショット 2014 06 07 17 01 29

次に、これは、東京都のデータで、年収別世帯数の構成比が経年的にあまり変わっていないことを表しています。

スクリーンショット 2014 06 07 17 03 04

ところが、家賃別の民間賃貸住宅戸数をみますと、低家賃の住宅が急速に減ったことがわかります。所得はさほど変わっていない、しかし低家賃の住宅は減った、ということです。

他方、現在の住宅事情の大きな特徴として、「空き家が増えている」ということがあります。住宅政策をもっとしっかりやらなくてはいけない、という話をしますとあちこちから「空き家だらけではないか」と言われます。自治体では、住宅政策をしようとすると、議会から「空き家がたくさんあるのだから、住宅施策は必要ない」という意見が出ます。

スクリーンショット 2014 06 07 17 04 03

今、全国平均の空き家率は約13%。賃貸住宅では約18%ときわめて高い。「どこに住宅問題があるんだ」という話になってしまう。

ところが、この首都圏のデータが示すように、空き家が多いのは、縁辺部です。集合住宅の空き家が25%を超えるというような自治体がたくさんあります。首都圏の縁辺部には、確かに大量の空き家があります。

しかし、都心では、空き家が多い自治体もありますが、空き家率がそれほど高いとはいえないエリアが広がっていて、空き家のなかには、老朽していたり、ひどく傷んでいたりする建築も多く、多くの人が入居したいという住宅の空き家率は、けっして高いとはいえません。

とはいえ、空き家が少しずつ増えているのは事実です。そうであるならば、なぜ、家主さんは、家賃を下げてでも入居者を確保しようとしないのか。一方で空き家が増え、他方で住宅困窮者が増える、という状況をどう説明するのか、という問題があります。この話は少し複雑で、今は8分しか与えられていませんので、質疑のところでできればと思います。

あわせて読みたい

「住宅」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    デリヘルに素人専門が増えた理由

    PRESIDENT Online

  2. 2

    質問力なし 報道のTBSは死んだ

    和田政宗

  3. 3

    小池氏会見まるでイキった大学生

    キャリコネニュース

  4. 4

    斉藤由貴に私刑行う週刊誌に疑問

    篠田博之

  5. 5

    小池氏登場で自民圧勝は不確実に

    近藤駿介

  6. 6

    橋下氏 新党で延命する議員は害

    橋下徹

  7. 7

    橋下氏 解散批判する野党に苦言

    橋下徹

  8. 8

    小池結党宣言は安倍会見を陳腐に

    早川忠孝

  9. 9

    北外相「米爆撃機撃墜の権利も」

    ロイター

  10. 10

    宣戦布告発言は米と北の戦争抑止

    篠田 英朗

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。