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2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる

「骨太の方針」が決定された後、読売新聞が再来年から国立大交付金を重点配分する政府方針を報じました。手を出すべきでない愚策であり、先進国で唯一、論文数が減少中の日本の研究体制が崩壊する日が見えてきました。2004年の国立大学独立法人化からボタンの掛け違いが始まっています。独立法人にすることで大学の裁量幅が広がるどころか、人件費・諸経費を賄っている国立大交付金を絞り続けて10年間で13%も減額され、研究費を外部から獲得する競争に研究者は追われるようになりました。人件費縮小は若手研究者ポスト縮小に直結しました。「重点配分」を求める財務省は大学教員は多すぎると考えているのですが、研究を担うのは人である点を忘れています。

 「骨太の方針」には「国立大学法人への運営費交付金を抜本的に見直す」と書かれており、読売新聞は1兆1千億円の4割を「学長のリーダーシップや学力向上などを評価の基準に使い、改革に積極的に取り組む大学に重点配分する」と伝えました。第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で掲げている、先進国中で日本の論文数だけが特異に減少しているグラフが以下です。太い赤線グラフの異様さが重点配分論者の目には入っていないのでしょうか。


 論文減少の異常ぶりを最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が最近になって、世界各国のデータと比較、解析する謎解きに挑んでいます。《OECDデータとの格闘終わる・・・日本の論文数停滞・減少のメカニズム決定版!!(国大協報告書草案14)》です。各国データの中身を精査して、整備が十分でない国は除くなど苦労したあげくに「図69.主要国における大学研究開発人件費増加率と論文数増加率の相関」に到達されています。左下の赤点が停滞している日本です。


 明解な相関関係が現れています。《今回の分析結果から推定される因果関係としては、【大学への公的研究開発資金 ⇒ 研究開発人件費 ⇒ 大学研究従事者数 ⇒ 論文数】という流れが本流ということである。そして、この10年ほどの間の日本の大学への公的資金増加率、大学研究開発人件費および研究従事者数の増加率は、今回検討した国の中では最低であり、その結果、論文数の増加率も最低になっていると考えられる》

 これまでは現象面から交付金の縮小が論文数減少に結びつくと考えられましたが、この分析で因果関係は決定的になりました。それなのに交付金重点配分でさらに人件費縮小、ポスト縮小が加速されるでしょう。

 論文の数など問題ではない、良質な論文だけあればよい――と政府は考えているのかも知れません。大学の評価体制を強化するので、良質な仕事が増えるはずと算段している可能性もあります。しかし、第397回「国立大学改革プラン、文科省の絶望的見当違い」でその思い違いを指弾しました。

 《大学への評価体制を強化して行くとの方向にも、始めの一歩から間違っているのだから話にならない面があります。2004年に書いた第145回「大学改革は最悪のスタートに」で日本で評価が機能しない根本には研究者同士のピアレビューが出来ていない、たこつぼ型研究の実態があり、学閥のネームバリューに頼って恥じない研究費配分がまかり通る現状を変える必要を訴えました。文科省は評価が出来ない大学人に加え、外部からの声を入れれば機能すると考えているのだから何も見えていないと断じるしかありません》

 非効率ながらも自然発生的な多数の研究論文をピラミッドの底辺にして日本の科学技術は伸びてきました。お金を掛けないで、ちょっとした工夫で仕組みを変える魔法の杖を自分たちは持っていると政府・文科省が考えているなら、不遜の極みです。欧米で行われている王道の研究評価を国内でも確立するしか道はありません。その上でならば効率的な配分があり得るかも知れませんが、いま実施されようとしている重点配分は「思い付き・思い込み」に過ぎません。これまであった科学技術立国の文脈さえ破壊するでしょう。

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