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ナースが起業してもいいじゃん!地域を守る“開業ナース”を育てる取り組み

撮影:安藤光展
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前代未聞の民間が作る“ナース起業家の支援プログラム”

あなたは「ナースが起業する」場面に出会ったことはありますか? と言いますか“ナース起業家”ってアバンギャルドな響きでかっこいいと思うのは僕だけではないはず。

というわけで、先日、日本財団と笹川記念保健協力財団が協力し、地域包括的な在宅医療・介護の拠点となる「在宅看護センター起業家育成事業・開講式」に参加したのでそのレポートを。

文字だけ見ると、若干退屈な感じもしますが、前代未聞の民間が作る“ナース起業家の支援プログラム”です。ちなみに、英語のnurse(ナース)は男女を区別しないので、本稿でも男女の看護師をナースとします。

このプログラムでは、ナースを中心として地域包括的な在宅医療を担う「日本財団在宅看護センター」を全国各地に展開(5年間で全国200ヵ所を目標)するため、同センターを起業するナースの育成事業を今年度から開始するとのこと。

「在宅看護センター」は、看護師を中心とした地域包括的な在宅医療を担う事業所で、地域の医療施設や地域包括支援センター等と連携し、地域住民の入退院や健康管理をはじめとする、総合的・継続的に対応する地域の保健医療福祉機能の提供を目的としています。

開業ナースとは、この在宅介護センターを起業・運営することを指します。自由度と公益性の高い看護センターのフランチャイズ・オーナー兼センター長のようなポジションのようです。

第1期受講者として、北は福島県から、南は福岡県まで全国17名、29歳から61歳と幅広い年齢層のナースが選ばれました。今後は「経営力」、「住民と保健福祉関係者をつなぐコミュニケーション力」、「効果的な連携を促進するコーディネーション力」などを講義と実習の両面から学び、全国で在宅看護センターでの起業を目指します。

このプログラムはナース専用の“ビジネス・スクール”のようなものだとお考えいただければイメージしやすいかと思います。またこの育成事業は、8ヶ月間スクールに参加する資格を得るというだけではなく、受講生には奨学金支援制度や、起業にあたって建物改修・車両整備などのハード面の支援もあるということです。まさに至れり尽くせりの支援プログラムです。

患者のニーズに応える、革命的な仕事

挨拶をする、日本財団・笹川氏
○日本財団 会長 笹川陽平氏
笹川氏は、「医療は技術偏重の時代。医者が人間的なふれあいをできていないのではないか。成果が求められている背景もあるかもしれない。患者へのアカウンタビリティが重要」としており、例えば、多くの人が感じている「人生の最後は自宅で迎えたい」といったニーズに応えられていないのではないかと現代医療に対して疑問呈していました。

現場の最前線にいるナースが主役になる育成フレームワークを作り、これからナースが経営者となる時代を作る。今回の支援プログラムが非常に革命的であることを強調していました。

○笹川記念保健協力財団 理事長 喜多悦子氏
喜多氏は、「看護の力が地域には必要。一定のエリアを守る人。日本の保健関係で一番人が多いのがナース。そのナースが日本の地域に入っていく必要がある」としました。

また、「限界集落、人口減少、高齢化地域、地域は衰退してしまうのか。希望・安全・安心がない地域は人が離れる。地域看護とは何かを再び問い直すべき。地域の安全・安心を看護の視点からデザインし、実践の技術により過ぎた社会を変え、仲間と知識をシェアし、地域をリデザインしていくべき」と今回の支援プログラムについて述べました。

開業医ならぬ“開業ナース”を育てる取り組み

支援プログラム第一期生たち
一般視点ですが、ナースはドクターのアシスタントという印象が強いです。開業医というのは、皆さんがお住まいの地域にもいるでしょうし、イメージも湧きやすいとおもいますが、ナースが開業(独立)ってどういうこと?となる人も多いのではないでしょうか。

今回のポイントは、開業医ならぬ“開業ナース”を育てる取り組みです。日本初の仕組みだそうです。今年度を第一期として、毎年行われ、数年後には第一期生が教鞭をとるということもあるかもしれないとのこと。非常に楽しみです。

日本全体でみると、いわゆる医療系ベンチャー支援の仕組みはなくはないのですが、パブリックな側面が大きい起業支援は今回が初のようです。

政府、民間、各方面から通常のビジネススキームの起業支援は活発になっている(入り乱れている?)のですが、公共性の高いナースの起業支援はありません。逆に、NPOに振り切って、スタートアップのNPO支援になれば、支援プログラムが増えるようなイメージがあります。

日本では総務省から「独創的な人向け特別枠(通称:和製スティーブジョブズ育成) 」という起業育成プランが発表され賛否がありましたが、ビジネスセクターにおいての起業支援は細かいものも含めて多数あります。しかし、ソーシャルセクターの起業支援はさほど多くありません。

地域のニーズを誰もが応えきれていなかったのですが、今回、在宅看護センター事業で起業するナースを支援することで、喜多氏の言う通り、日本の地方のほころびを改善していく切り札になるのかもしれません。

“ビジネス×看護”なハイブリッド・ナース

今後の課題は、やはりソーシャルセクターといえど、「支援プログラムに何人に参加しました」というアウトプットだけで終わらせず、「プログラムに参加した人が、地域コミュニティにこれだけインパクトを出せる」といったアウトカム(成果)を前面に出す必要があると考えます。

社会貢献活動をすること自体が重要なのではなく、社会貢献活動して社会に良いインパクト与えることが結果・成果が重要なのです。このあたりは、きちんとスクールで学んでいただきたいですね。

あと、僕も地方出身者なもので、地域コミュニティが将来崩壊するというのは実感としてイメージできます。専門領域がビジネスと看護というハイブリッドなナースが数多く生まれる事で、地域コミュニティが保てるようになる。そんな未来の始まりを感じさせられた式でした。今後の動向に注目していきましょう。

「日本財団・在宅看護センター」起業家育成事業について

(取材協力:日本財団)

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