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日本シリーズの地上波中継見送りについて - 芳地隆之

 日本シリーズ第1、2、5戦の放映の優先権をもっていたTBSが中継を見送った。地上波で日本シリーズが放映されないのは初めてのことである(BSやCSで見ることができるが)。「視聴率がとれない」のが理由だそうだが、代わりに世界バレーボールをしきりに喧伝する同局をみていると、このような会社を来期もオーナーに仰がなくてはならない横浜ベイスターズに同情を禁じえない。

 中日ドラゴンズ対千葉ロッテマリーンズというカードも、テレビ局を消極的にさせた理由だろう。しかし、セリーグの人気球団、読売ジャイアンツ(巨人)がテレビのドル箱でなくなって久しい。1990年代まで平均視聴率20%前後であった巨人戦も、2000年代半ば以降は、平均視聴率10%を割り込むこともあり、巨人戦の地上波での放送数は年々減少している。もはや時代は日本シリーズを国民的行事とみなさなくなったのだと思う。

 中日とロッテによる日本シリーズは36年ぶりである。前回は木樽、金田、成田、村田らが投げる多彩な変化球や剛速球、弘田、有藤、山崎ら隙のない打線など、投打において中日を上回った。大のドラゴンズファンだった小学生の私は、後楽園球場(現東京ドーム。当時のロッテはフランチャイズをもたなかったので、ホームゲームは後楽園球場で行われた)で試合を観戦したが、初めて見るロッテの選手たちの豪快なプレーに、「これは(中日は)勝てないかも」と弱気になった。

 当時のプロ野球中継といえば、ほとんど巨人戦。セリーグはともかく、パリーグの選手はテレビでは見る機会がない。毎日、毎日、ジャイアンツの試合を見せられているから、子供たちは全国津々浦々、みんなジャイアンツの野球帽をかぶっていた(私がドラゴンズファンになったのは、この反動である)。この年、巨人の10連覇を阻止して、優勝を決めた中日が出場する日本シリーズを、多くの人々が「ON(王貞治選手と長嶋選手)が出ない日本シリーズなんて」とぼやいていた。

 公平さが求められるべきはずのスポーツにもかかわらず、プロ野球界は特定チームに人気もお金も一極集中する、ずいぶんとアンフェアな環境にあった。しかし、テレビがプロ野球で最も視聴率を稼げた時代でもあった。日本シリーズが全国中継されないことを大ニュースとして扱うのは、テレビが巨人戦で稼げた時代にノスタルジーを抱いているからではないだろうか。

 ただし、いま野球人気が低迷しているかといえば、少し違うと思う。阪神甲子園球場のタイガースファンの熱狂ぶりはいうまでもなく、北海道や九州の地方局は、北海道日本ハム・ファイターズや福岡ソフトバンク・ホークスの試合中継で高視聴率をキープしていると聞く。仙台の楽天イーグルスの人気もすっかり定着した。横浜ベイスターズがフランチャイズを(噂されていた)新潟県に移転し、新しい親会社が地域密着型の球団経営をすれば、Jリーグのアルビレックス新潟並みに、地元市民に愛されるチームになったことだろう。

 現在、開催中の大リーグ・ワールドシリーズに盛り上がっているのは、熱烈な野球ファンを除けば、サンフランシスコ(ジャイアンツ)とテキサス(レンジャース)だけではないか。多くのニューヨーカーにとって、勝敗はどうでもいいことであるし、全米の人がニューヨーク・ヤンキースの試合に注目することもありえない。

 今シリーズは名古屋と千葉が盛り上がればいいのである。巨人ファンが全国各地に隈なくいるという特殊な時代が終わったのだ。

 ちなみに、私は、名古屋と縁もゆかりもないが、ドラゴンズファンを続けている。1974年の日本シリーズの雪辱を願い、今晩もテレビ観戦するつもりである。

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