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国際貢献のウソ - 芳地隆之

 国際NGO(非政府組織)でマネージメントを担う人の能力のひとつは、どれだけの人間をリストラできるか――。こんな著者の指摘は、紛争地帯や発展途上国での支援活動を、額に汗を流して働くイメージと重ねる読者に動揺を与えるかもしれない。

 本書は、日本人の、善意からではあるが、誤った国際貢献の認識をひとつずつ改めていく。著者には、国際NGOの仕事を、きちんとした財政基盤のない貧困ビジネスにしてはいけないという気持ちが強い。隙間ビジネスとしての平和産業を確立するにはどうしたらいいか。本書の前半で、著者は自らの経験をベースに、国際社会でのネゴシエーションや、実際の支援の現場について語る。

 後半のテーマは、日本の対外支援の在り方だ。とくに第4章の「ODAという無担保ローン」では、本来、日本の存在感をアピールする手段として活用すべきODA(政府開発援助)が生かされていない点を指摘する。アフリカ諸国の首脳に対して、援助をしているのだから常任理事国への推薦よろしくと言って、足元を見られるとか。多くの先進国がやめている有償援助をいまだに続けているとか(国が銀行の真似事をしてどうするのか?)。極めつけはアメリカの占領下にあるイラクへの3000億円以上の有償支援である。イラクが完全独立していない時点でのそれはアメリカへの支援にほかならない。

 第5章「自衛隊と憲法九条」で著者は次のように語る。アメリカの弱点を認識し、その弱点を補完するために、日本が一番威力を発揮できる方法を考える。それが「対等な日米関係」だと。こういう発想の転換がないかぎり、私たちはこれからも、アメリカの要求を呑むこと=国際貢献と言い続けることになるだろう。

 本書はフリーの編集者、斎藤哲也氏が、著者へのインタビューを再構成したものである。国際社会における日本政府の立ち居振る舞いのお粗末さや、私たちの国際貢献に対する誤解へのもどかしさも、著者の肉声としてストレートに伝わってくる。まるで直に講義を受けているようだ。

 この講義、国際協力の現場で働きたい若者への、ちょっとトリッキーな提案で終わるが、あまり焦らず、社会経験の積み重ねが国際社会へのキャリアになると思ってがんばろう。

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