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安倍政権の”慣行”破りで憲法解釈の素人と化した内閣法制局長官と「駆けつけ警護」問題

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(1)集団的自衛権行使や多国籍軍参加により日本(の自衛隊)がそれらの戦争に参戦することについて、安倍晋三首相は、従来違憲であると解釈していた政府解釈を「合憲」に変更しようと目論んでいます。

このように憲法改正手続きさえ経ずに改憲の目的を達成しようという「解釈改憲」が、憲法上許されないことは、自民党が「新憲法草案」(2005年)や「日本国憲法改正草案」(2012年)を作成したことで証明されている、と指摘しました。

安倍「解釈改憲」が憲法上許されないのは自民党「日本国憲法改正草案」が証明している!

(2)また、その「解釈改憲」は明文改憲が実現できないから強行しようとするものであり、卑怯であることも、指摘しました。
安倍「解釈改憲」の卑怯さ(”右翼の軍国主義者”のクーデターの企て)

(3)さらに、安倍「解釈改憲」は、アメリカの要求に応えたものであり、それゆえアメリカの戦争に日本が集団的自衛権を行使して参戦することが条約に基づく義務づけられ、自衛隊員が死傷する可能性が高くいなるわけですが、アメリカから少し「独立・自立」して日本が近隣諸国との間で戦争を引き起こせば、自衛隊員だけではなく日本本土の国民も死傷する可能性が高くなることを指摘しました。

安倍「解釈改憲」は自衛隊員とその家族だけが恐れているわけではない!

(4)今月(2014年5月)15日、安倍首相の私的諮問機関である、憲法の素人集団の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(「安保法制懇」)が報告書を提出し、安倍首相は記者会見しましたので、それらと、自衛隊員や元日本軍兵士の反応報道を紹介しました。

安保法制懇の報告書、安倍首相の記者会見、自衛隊員らの反応の紹介

(5)その翌16日、憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)が声明「安保法制懇『報告書』をテコに『戦争する国』めざす安倍首相の暴走を糾弾する」を発表したので、それを紹介しまました。

憲法会議声明「安保法制懇『報告書』をテコに『戦争する国』めざす安倍首相の暴走を糾弾する」の紹介

(6)ところで、安倍首相は、9条明文改憲が世論の根強い反対と、衆参の国会で「3分の2以上」の合意を得られないので、卑怯にも、憲法が禁止している集団的自衛権利(他衛権)行使につき、従来の違憲との政府解釈を「合憲」と言いくるめる「解釈改憲」を強行しようと目論んできました。

(7)そのための準備の一つが、内閣法制局長官の交代でした。

従来、集団的自衛権(他衛権)行使につき内閣法制局長官は、違憲と解釈してきました。
そこで、安倍内閣は昨2013年8月8日の閣議で、内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使を充てる人事を決定しました。
小松氏は、第1次安倍内閣の有識者会議「安保法制懇」に外務省国際法局長として議論に関わり、集団的自衛権講行使容認を主張した「集団的自衛権の憲法解釈見直し派」の人物でした(「安倍政権:内閣法制局長官交代を正式決定」毎日新聞2013年8月8日11時18分)。

内閣法制局長官から最高裁判所の新しい判事に任命された山本庸幸氏は、同年8月20日に記者会見し、集団的自衛権の行使を巡る政府の憲法解釈の見直しについて「半世紀以上維持されてきた憲法解釈であり、私自身は見直すことは難しいと思う」と異例の表明をしたほどでした(「最高裁判事 集団的自衛権巡る憲法解釈に言及」NHK13年8月20日 17時17分)。

(8)「歴代長官は主に法務、財務、総務、経済産業(名称は現在)の4省出身者が就任し」「必ずしも法律の専門家ではな」いのですが、「憲法解釈を担当する第1部長から次長、長官という階段を昇ってきた」のです(「内閣法制局長官 「法の番人」実際は4省出身者が歴任」産経新聞13年8月8日23時49分)

つまり、憲法の解釈を含め法律の解釈について一定程度専門的訓練を積んできた人物が、内閣法制局長官に就任してきたのです。
それによって、「中立性」を獲得してきました。

これは、内閣の憲法解釈、法律解釈について、政治家である大臣がそれを行っても、野党から「素人の政治家が解釈の名で政治的判断をしているだけである」と批判されてしまうので、憲法解釈・法律解釈の訓練を積んだ内閣法制局長官の憲法解釈・法律解釈を政権が尊重する答弁をすることによって、野党の批判を回避できる効果を一定程度発揮してきました。

もちろん、だからといって、内閣法制局長官の憲法解釈・法律解釈が常に妥当だったわけではありません。
憲法学・法律学の専門家からすれば、不当な解釈も多々ありました。

とはいえ、それでも、憲法学・法律学の専門家以外の国民にとっは、ある一定の信頼を獲得できたのでしょう。

(9)ところが、「解釈改憲」を目指し政治家は、専門的訓練を積んできた内閣法制局長官を邪魔者にしてきたのです。

例えば、民主党の鳩山由起夫政権では、小沢一郎幹事長(当時)の意向で、内閣法制局長官を国会で答弁させず、内閣法制局長官を国会で答弁できないようにする国会法「改正」を目指しました。

内閣法制局長官よりも恐ろしい改憲政治家の憲法「解釈」

内閣法制局の憲法解釈答弁禁止における小沢幹事長の思惑

官僚答弁を禁止する国会法「改正」は危険であるし必要でもない

私たちは、この法案に反対する声明も公表しました。

国会法等の「改正」に反対する法学者声明と賛同者の紹介

最終的に国会法「改正」は断念させることができました。
その後、内閣法制局長官は国会で再び答弁するようになりましたが、当時、小沢一郎氏は、内閣法制局長官の答弁復活を批判していました。
NHK2012年2月13日 15時8分
小沢氏 法制局長官答弁復活を批判

 民主党の小沢元代表は、みずからが主宰する政治塾で講演し、政権交代のあと、認めていなかった内閣法制局長官の国会答弁を政府が復活させたことについて、「政治主導とは到底言えない」と述べ、批判しました。
 この中で、小沢元代表は「われわれは『政策決定などあらゆる面で政治家が責任を持つ体制を作る』と主張し、それを国民が受け入れて政権を与えた。これが実現できていないことが、国民の民主党政権に対する最大の疑問点や不満のもとになっている」と述べました。
 そのうえで、小沢氏は、政府が今の通常国会から内閣法制局長官の国会答弁を復活させたことについて、「官僚の答弁は国会ではやめようと制度化したが、すべて元に戻り、旧体制下の国会運営になっている。立法府における論議こそ政治家自身が行わなければ、政治主導とは到底言えない」と述べ、批判しました。
 また、小沢氏は「自民党と同じ体制でやっていて金がないのは当たり前だ。地域の実情にそぐわず、霞が関のマニュアルでしかお金が使えないところに膨大なむだが生じており、地域主権を進めるなかで、地域にお金や権限を移すべきだ」と述べ、消費税率の引き上げよりもむだの削減を優先させる必要があるという考えを示しました。
(10)他方、安倍内閣は、別の手段に出ました。

自民党政権が一定程度築いてきた信頼獲得のための”慣行”を破って、憲法解釈の全く素人である小松氏を内閣法制局長官に抜擢したのです。

その結果、内閣法制局は、まるで自民党内の部局長のような政治的存在になってしまい、露骨な政治的判断を「憲法解釈」と言い張るところになってしまいました。

(11)その小松氏が、内閣法制局長官を体調不良のため退任しました。
後任は、横畠裕介内閣法制局次長であり、一応内部昇格となりました。
日経新聞2014/5/16 9:28
内閣法制局長官に横畠氏昇格 小松氏が退任

 政府は16日の閣議で小松一郎内閣法制局長官を退任させ、横畠裕介内閣法制次長を昇格させる人事を決定した。小松氏は1月に体調不良を訴えて約1カ月間入院。腹腔(ふくこう)部に腫瘍が見つかり、復帰後も週1回程度、通院し抗がん剤治療を続けてきたが、職務続行は困難と判断した。
 首相は昨年8月、法制次長を昇格させる慣例を破って駐仏大使だった小松氏を法制局長官に抜てき。外務省出身の同氏は集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に前向きで、慎重論が強い法制局の議論に風穴を開ける狙いだった。

 横畠 裕介氏(よこばたけ・ゆうすけ)74年(昭49年)東大法卒、76年検事任官。内閣法制局第1部長、11年12月内閣法制次長。東京都出身、62歳。
東京新聞2014年5月16日 夕刊
法制局新長官 横畠氏、容認前向き

 政府は十六日の閣議で、小松一郎内閣法制局長官(63)を退任させ、横畠裕介内閣法制次長(62)を昇格させる人事を決めた。体調不良で職務続行が困難と判断した。横畠氏は解釈改憲に関し記者団に「およそ不可能という前提には立っていない。遅れることなく、しっかり研究していきたい」と集団的自衛権の行使容認をにらみ前向きに検討する考えを示した。安倍晋三首相は十六日付で小松氏を内閣官房参与に起用した。
 横畠氏は検事出身で内閣法制局では憲法解釈を担当する「第一部」の経験が長い。二月の国会答弁で、集団的自衛権行使容認の解釈変更も可能と説明した。
 小松氏は解釈改憲に前向きで首相が昨年八月、外務省から初の内閣法制局長官に据えた。今年一月に腹腔(ふくくう)部に腫瘍が見つかり入院。二月に退院し抗がん剤治療を受けながら職務を続けていた。

 【内閣法制局長官】
 横畠 裕介氏(よこばたけ・ゆうすけ)東大卒。76年検事に任官。内閣法制局第一部長を経て11年12月から内閣法制次長。62歳。東京都出身。
横畠氏は、この報道にもあるように集団的自衛権行使「合憲」に前向きと報じられた人物です。
この点で、内閣法制局が、集団的自衛権行使を当然違憲であるとする従来の内閣法制局ではなくなっていることに留意する必要があります。

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