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政治家にみてもらいたいマキアヴェッリの提言

2010年05月27日 22:38

ぐっち

 マキアヴェッリは、斜陽に差し掛かった都市国家フィレンツェの官僚でした。のちに名著「君主論」を書きあげましたが、それは官職から追放されたあとのことです。

 あるとき、フィレンツェの大統領は、国民の好意を期待できないであろう新税法案を提出するにあたり、マキアヴェッリに理論的根拠づくりを命じます。提出された短い論文を以下で部分的に紹介します。卓越した文才と状況分析眼を持つマキアヴェッリの面目躍如といった名文です。
 フィレンツェの外を見ていただきたい。そして、フィレンツェが周辺をどのような国に囲まれているかをみていただきたい。そうすれば、フィレンツェの生よりも死を望んでいる二、三の国のあることに気づかれるであろう。(略) これらの権力者たちの一人としてフィレンツェの国益を尊重してくれることは期待できないし、期待してはならない。

 個人の間では、法律や契約書や協定が信義を守るに役立つ。だが、権力者の間で信義が守られるのは、武力によってのみである。

 (引用者注:フィレンツェは当時欧州最強だったフランスと軍事同盟を結んでいた)今までうまくいったからといって、今後もフランス王の軍事力に頼ろうとするのは間違いだ。なぜなら、時代は変わるものであるし、なによりも重要なことは、他人の剣にばかり頼れるとはかぎらないからである。(略)

 ゆえに、強大な敵がいまだに身近に迫っていないこの時期、自らの軍備を整える必要があるのだ。

 (その時期は今をおいてない、とするマキアヴェッリは、一つ一つの家には財力がありながら、国家には非協力的だったビザンチン帝国の国民が、トルコの大砲が鳴り始めてから献金を申し出ても、そのときはすでに遅かったというエピソードまで紹介する。さらに、)

 六ヶ月前に二十ドゥカート支払うのに同意しなかった人々は、六ヶ月後に二百ドゥカートを奪われることになる。

 あなた方は、このままでつづけばフィレンツェがいかに弱体するかを見ようとしないし、運命というものは変わるものであることも知らない。

 普通、人間は、隣人の危機を見て賢くなるものである。それなのに、あなた方は自ら直面している危機からも学ばず、あなた方自身に対する信ももたず、失った、または現に失いつつある時間さえも認識しようとはしない。

 わたしは、はっきりと言いたい。運は、制度を変える勇気をもたない者には、その裁定を変えようとはしないし、天も、自ら破滅したいと思う者は、助けようとしないし、助けられるものではないものである、と。

 とはいえ、わたしには、自由なフィレンツェ人であるあなた方が、そしてそれを決定できる力をもつあなた方が、自滅を望んでいるとはどうしても信じられない。ために、わたしは、あなた方が、自由に生まれ、自由に生きたいとの望む者ならば考慮せずにはいられないこのことを、尊重されるに違いないと信じるのである。

わが友マキアヴェッリ―(塩野七生)より引用。一部省略した。強調は引用者。

 マキアヴェッリは大学出ではなく名家の出でもない、いわゆる「ノンキャリ」です。しかし、卓越した才能を持つ彼を大統領をはじめとする為政者は放っておきません。

彼が凄いのは、当時三十四歳の一介の官僚でありながら、上司である大統領たちに向かって(当時マキアヴェッリは、大統領の秘書のような立場だった)、「暴言」ともとられかねない激しい糾弾をしているところでしょう。
人間というものは、自分を守ってくれなかったり、誤りを正す力もない者に対して、忠誠であることはできない。

 結果として、懸案事項だけれども可決が危ぶまれた新税法案は無事に通過します。マキアヴェッリのこの提言を下敷きにして大統領が演説したからだともいわれています。

 さて、この論文。今の日本のトップにも読んでもらいたい。フィレンツェを日本に、フランスをアメリカに。文中の軍事力は経済力としてもいいしそのままでもいい。重要なのは内容ではありません。ここは個人の立場や主義に関わるところなので深入りしません。

 当時のフィレンツェは、増税して軍備を増強することが国家存続のために絶対に必要でした。しかし、増税はいつの時代も、どの国の民も両手を挙げては賛成しないものです。フィレンツェ政府は、増税に際してマキアヴェッリの力を借り、国会で丹念に現状を隠さず説明した上で実施しています。これは、現状認識を正確に見定め、正しいプロセスを伴った行動力が政治家には問われるということが、時代や洋の東西に関わりないことを教えてくれています。

 500年後の日本。増税が絶対に必要であるにも係わらず、どの政党もこれから逃げている。この状況をみて、マキアヴェッリはなんというだろうか。

投資を中心に、ビジネス・ライフハックにも言及する。

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