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ダイムラーが投資した数億円は、イノベーションかそれとも無駄金か

撮影:安藤光展
撮影:安藤光展 写真一覧

ダイムラーによるイノベーション支援


乗用車及び商用車の世界的メーカーであるダイムラー社(以下、ダイムラー)による寄付金で、東日本大震災で被災した地域の復興を担う人材の育成を目的とした「ダイムラー・日本財団 イノベーティブリーダー基金」が作られました。

その基金の奨学生による報告会(東京・六本木、4月4日)に参加してきましたので、そのメモと雑感を。ダイムラーのCSR(企業の社会的責任)、教育への投資、老子の金言から考察する教育の重要性についてまとめます。

イノベーティブリーダー基金とは

冒頭の挨拶を行うアルバート・キルヒマン氏(ダイムラー・グループ 日本代表、三菱ふそうトラック・バス株式会社CEO)
「ダイムラー・日本財団 イノベーティブリーダー基金」とは、東日本大震災に罹災した地域の創造と変革を担うリーダーの育成を目的として2012年4月に設置されたものです。、具体的には、グロービス経営大学院仙台校に学ぶ岩手・宮城・福島在住の学生への奨学金「イノベーティブ奨学金」、ならびに、当該学生による東北地方での新規事業のスタート資金「スタートアップ基金」により構成されているそうです。

基金設置期間の2012年4月から2015年3月までの3年間で被災地に100人以上のビジネスリーダーを輩出することを目標に、さらに優れた新規事業15~20件に資金助成し、全体の規模は総額2億円程度となる想定とのこと。ダイムラーの復興支援全体でいえば、東日本大震災支援の車両提供も含めて7〜8億円という規模の金額になるらしいです。

ここ数年現場の方に色々お聞きしてきましたが、どう考えても何十年もかかる、前代未聞の超大規模な地域振興計画実践が成功させられるかなんて誰にもわかりません。このあたりは、できる・できないではなく、“やるんだ”という強い意志(リーダーシップ)だけがイノベーションの根源になるのかなと。そのきっかけとして今回の基金が貢献できるのでは?という話でございます。

奨学生のプレゼンテーション復興ビジネスを“言い訳”にして欲しくない

プレゼンを行う小尾勝吉氏(株式会社ソーシャルプロジェクト代表取締役社長、基金奨学生)
報告会のメインである、基金のサポートを受けた奨学生(卒業生含む)の事業紹介のプレゼンテーション。内容は、事業開始数年というスタートアップや在校生でこれから活動を開始しようという方々のプレゼンテーションと、在校生の今後の活動報告などです。

スタートアップの方々は基金で受けた資金を元に、すでに被災地で様々な活動を行っていました。高齢者向けの宅食サービス、ワイン醸造・販売などのビジネスを始め、他にもユニークでなおかつ地域特性を活かしたビジネスモデルが多数ありました。

プレゼンの中であった印象深いフレーズが「復興のゴールは“工事が終わること”ではない」というものでした。建築物などハコものが完成すれば復興活動が終了というわけではないのです。むしろそれらはスタートでしかなく、ソフトとなるビジネスを作り上げていく必要があります。

極論ではありますが、被災しようがしまいが、若者の流出や地域活性は東北の多くの地域の課題でした。東日本大震災以降に注目されるようになっているイメージもありますが、震災があってもなくても、いずれ起きた課題ではあります。僕も田舎出身なのでこの感覚はわかります。

個人的には、復興ビジネスを“言い訳”にして欲しくないとは思っているわけでして、普通のビジネスとして経済的価値・社会的価値を生み出しながら、地域を盛り上げる必要があるのかなと。また、ビジネス・スクールというと、いわゆるサラリーマンの方が大半なのかなと思っていたら、いわゆる行政の方やNPOの方もいて、興味深かったです。

唯一残念だなと思ったのは、ビジネス・スクールで学んでおきながら、プレゼンが下手な人が多かった事。ビジネス・スクールに行けばプレゼンがうまくなると勝手に思っていたので、カルチャーショックでした。内々の報告会とはいえ、誰かアドバイスしてあげればいいのに…と第三者として思うのでありました。

これは、ビジネス・スクール云々とは別にしても、NPOの代表などにも多く見られる傾向です。感情表現が先行し、ロジックが破綻したプレゼンテーションは退屈で仕方ありません。どなたの活動も素晴らしいと思うので、より多くの人に情報を届けるべく、プレゼンの練習したほうがよいでしょう。もったいないです。

企業は戦略的に持続可能性のある教育や仕組み作りに寄付をすべき


そんなこんなで様々な方のプレゼンを聞いてきたのですが、改めて、こういったスタートアップやソーシャルビジネスに関わるビジネス・スクールに、企業が投資をする意味があるのか考えました。

企業の寄付活動自体を否定するつもりはありませんが、仕組みへの寄付ができていないと社会的なインパクトはほとんど見込めません。なぜかというと、いわゆる生活費(組織の運営費)に投資をしても、多くの場合、予算消化して終わりです。NPOに寄付するとはそういうものなのです。

しかしながら、今後、より稼げるであろうビジネスモデルや人という枠組みに投資すれば、その仕組みや人が将来にわたりさらにお金を生み出すことが可能なのです。

ソーシャルセクター支援でよく言われる「魚を与えるのではなく、魚の“釣り方”を与えよ」という考え方を思い出しました。魚とは“資金”とお考え下さい。老子が言ったとされる「授人以魚 不如授人以漁(ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。しかし、魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える)」という教えに由来します。

イメージで言えば、寄付をNPO団体自体にするのではなく、NPOの教育に投資することで、教育を受けた人は自分で“魚を捕る事”ができるようになります。こういった連続性のある事象に投資をすることが、さらなる社会的・経済的価値を生み出していくのです。昨今、このコミュニティ投資のような考え方をしたCSR活動が注目されています。

ですから、個人寄付は別としても、企業は戦略的に持続可能性のある教育や仕組み作りに寄付をすべきだと考えています。そのほうが社会全体でいえば、何倍も価値を生み出せるじゃないですか。復興にかかる費用は、準備しうるキャッシュだけでは到底たりません。ですので、投資を通じそれ以上の価値を創出する必要があります。

そういう意味では、「ダイムラー・日本財団 イノベーティブリーダー基金」は、未来への投資となる、重要かつ有意義なCSR活動なのかなと第三者として感じました。そうした意味ではこうした取り組みは無駄金ではなくイノベーションにつながる可能性が高いといえるでしょう。ダイムラーさん、GJです!!

■関連サイト
メルセデス・ベンツ日本株式会社
ダイムラーAG

(取材協力:日本財団)

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