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「法律論」「現象論」「科学論」が錯綜したSTAP問題 ~ そして「感情論」で小保方氏の人物像は悪化した

改ざんと捏造があったと結論付けた理研の調査委員会の調査に対して不服申し立てを行った小保方晴子研究ユニットリーダーが9日に行った記者会見は、疑いを晴らすことの難しさを印象付けるものでした。

マスコミ等の報道を見ていると、小保方氏の反論に対する世間の見方は、概ね「説得力に欠ける」というものだったようです。

個人的に小保方氏の記者会見を見て感じたことは、議論が錯綜してしまっていたということと、同席していた代理人弁護士の対応のまずさです。
「小保方氏が9日に開いた会見は、理研の規定で懲罰対象となる不正行為があったかが焦点。論文で新しい発見を世に問う科学者としての姿勢、STAP細胞が本当に存在するのかの確認などとは別次元の問題だ」(10日付日本経済新聞 「科学の『真理』置き去り」)
日本を代表する経済紙が指摘している通り、今回小保方氏が自費で開いた記者会見の焦点は、「理研の規定で懲罰対象となる不正行為があったか」という「法律問題」でした。しかし、多くの一般人が知りたいことが「STAP細胞が存在するか否か」という「現象論」であったこともあり、殆どの人が苦手な「法律問題」は忘れ去られると同時に、科学の専門家によって殆どの人が馴染みのない「科学的検証問題」の解説が加えられ、記者会見の焦点は「STAP細胞が本当に存在するか」という方向に向かって行ってしまいました。

本来今回の記者会見は、理研の調査委員会による、改竄と捏造という「研究不正行為があった」という調査結果によって、解雇を含めた懲戒処分を受ける可能性が高い状況にある小保方氏の反論の場として設けられたものでした。
「本ガイドラインの対象とする不正行為は、発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用である。ただし、故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない」(文部科学省 「研究活動の不正行為等の定義」より)
小保方氏が「私は決して悪意をもってこの論文を仕上げた訳ではない」(小保方氏コメントより)と主張しているのは、文部科学省の定義で「故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない」と規定されているからです。

ここで問題になるのは、記者会見でも質問が出た「悪意」という単語です。小保方さんは、「改ざん、捏造の意思がなかった」という意味で「悪意をもってこの論文を仕上げた訳ではない」という表現を使ったのだと思います。しかし、法律的にいうと「悪意」とは「特定の事実を知っていた」ことを指します。ですから、今回のケースでは、画像を見やすいように加工した行為等が、「捏造と改ざん」に相当する「不正行為」であることを知っていたと、いうことをさすことになると思われます。
「データを加工すること自体が、意図的な改ざんに当たる。『悪意はない』との言い分も、『故意』を意味する法律上の『悪意』を、道徳的な概念と混同しているのではないか」(10日付読売新聞社説~STAP問題 「反論」は説得力に欠けている)
読売新聞は社説の中で、「法律上の『悪意』は、『故意』を意味する」というように主張していますが、この説明は正しくはありません。法律上の「悪意」とは、例えば、あるモノを売買した時、それが盗品であったことを知っていれば「悪意」になりますし、知らなかった、或いは知り得なかったのであれば「善意」ということになるもので、「故意」であるかは関係ありません。

今回の小保方氏の記者会見が、理研の調査報告に対する不服申し立てを行ったことに対する説明の場であったとしたら、理研に「研究不正行為」に相当する行為を行ったと認定され、懲戒処分を受ける可能性のある小保方氏側の主張のポイントは、画像を見やすいように加工した行為は「捏造と改ざんに相当する研究不正行為」に相当しない、或いは、それに相当すると「知らなかった、知り得なかった」というところにあったということになります。

「悪意」の定義について質問された小保方氏は、同席していた代理人の弁護士に助けを求めましたが、不意打ちを食らったのか、弁護士の回答は要領を得ないものでした。ここで弁護士がきちんとした説明をしていれば、記者会見を本来の目的に戻すことも出来たかと思うと、小保方氏にとっては不幸な出来事だったかもしれません。

大新聞ですら必ずしも正しくない解釈をするくらいですから、「法律問題」に詳しくない多くの国民が、記者会見の本来の目的から逸脱して、「STAP細胞が本当に存在するか」という「現象論」に流れて行ったとしても致し方ないことだったと思います。こうした流れに、「法律問題」には必ずしも詳しいとは限らない「科学の専門家」が議論に参戦し、議論を一掃複雑化させてしまう格好になりました。

「現象論」として「STAP細胞が存在する」ということと、「科学的」に「STAP細胞の存在が認められる」ことは同義ではないからです。

小保方氏が幾ら「200回以上STAP細胞の作成に成功した」と主張し、仮にそれが「現象論」として事実だったとしても、第三者が検証し再現できなければ「科学的」にSTAP細胞の存在は認められません。

「科学的にSTAP細胞が存在するか」という議論の中では、実験ノートを始めとした物的証拠や、画像を切り貼りする行為等に対する科学者としてのモラルの問題などがクローズアップされてきてしまいます。その結果、実験ノートもまともにつけず、平気で画像を加工するという、科学者としてのモラルを持ち合わせていない人という小保方氏の人物像が大きくなり過ぎたことは、残念でなりません。

「STAP細胞が本当に存在するか」という「現象論」に最も強い関心を抱く一般人と、「科学的にSTAP細胞が存在するといえるのか」に主眼を置いて解説する科学の専門家達、そして、懲戒処分を避けるために「不法行為」がなかったことを主張したい小保方氏。

もし、それぞれと記者会見に参加していた記者達が、どの次元での議論かを明確に区別していたならば、「魔女狩り」と言われるような記者会見にはならなかったかもしれません。三者三様の思惑の中で、小保方氏が多くの人が期待する「STAP細胞が本当に存在するか」という「現象論」に対して納得いく説明が示せなかったことをもって「説明不十分」という結論を下していいものでしょうか。
「国際間をまたぐ2つの研究室で、2報分のNature論文のデータを同時にまとめ執筆していく作業は私の能力をはるかに越えていたのかもしれません」(小保方氏コメントより)
個人的には小保方氏が出したコメントの、この部分が引っ掛かっています。何故小保方氏は「国際間をまたぐ2つの研究室で、2報分のNature論文のデータを同時にまとめ執筆していく作業」を余儀なくされたのでしょうか。それが個人の意思に基づいた結果なのか、はたまた理研に所属する研究員として、個人の意思を越えてそうした状況を強いられたのか。

某週刊誌の突撃取材に対して小保方氏が発した「大きな力動いている」というコメントの真意がこの辺りに滲み出ているような気がしてなりません。

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