記事

2011.07.24

■7月某日 NHKから民放までが大騒ぎした地デジ化が遂に断行された。大震災も大津波も、福島第一原発も関係なく、地デジ普及の大宣伝は7・24の切り替え日が近づくにつれて激しくなった。さすがに福島、宮城、岩手の被災地の地デジ化は先送りされたが、あとは日本列島周辺の離島も含めていっせいに強行された。普及率が低いというデータもあって延期するのではないかとの見方もあったが、見事な中央集権制の号令一家は健在だった。しかし、地デジの宣伝だけはしつこいくらい繰り返し告知されたものの、地デジ化の意味についての論議や反論や疑問の声がメディアで取り上げられることはほとんどなかった。総務省とテレビ局(系列の新聞社)の利害が一致し、家電業界も大規模特需が期待できることから、地デジ化反対の声はほとんどかき消されてきた。取り上げたのは、一部週刊誌やネットくらいのものだった。
 
 総務省が地デジ化を画策したのは、電波の用途が飛躍的に増加したために周波数の整理統合が必要になり、NTTなどの携帯電話の活用幅を拡大するためとされてきた。原発同様に国策である。しかし、国策ならば、国民の理解を得られるような情報公開や努力が不可欠のはずだが、何事も隠密裏に事が進められてきた印象は拭えない。原発のように、である。地デジ化に関わる費用は莫大だ。電波塔だけでも一兆円以上の投資が必要だといわれる。それも、安いといわれているテレビ局の電波料(一説では全局で37億円)の値上げには手を付けず、国家財政を投入するという手段をとった。アナログからデジタルに変換するシステムに関しても衛星デジタルの方が10分の一程度のコスト減といわれてきたが、その検討もなしだった。そこに、政治的な思惑はなかったのか。一説では地方局の県域免許を守るためといわれる。この地デジ化を批判的に取り上げてきた「週刊ポスト」は、県域免許と政治の一体化に言及し、テレビ幕藩体制の強化だと指摘している。
 
 テレビ局も最初は巨額の費用が必要なデジタル化には反対の意向を示していたが、最終的に国が費用を持つという事で決着がついた。これだけの大規模な国策を実現するためには、テレビや新聞の協力なくしては不可能だからだろう。地デジ化によってテレビ局や家電業界、アンテナ工事会社には多大なメリットがあるが、一般家庭ではテレビを買い替えたり、チュナーを設置しなくてはならないという余分な経費負担が必要だ。低所得層向けには公費負担もあるが、今回の地デジ化では電波難民が数百万に及ぶのではないかとの見方もある。さらに問題は、5000万台ともいわれるアナログテレビの処理作業だ。テレビには人体に有害の部品も使われているために、後進国に輸出したり、回収・解体作業も容易ではないといわれている。これが、東日本大震災の後で計画されたら、総務省の思惑は完全に頓挫したのではないか。
 
 テレビ局は免許事業制である。かつての郵政省がテレビ局を政治的に利用するために、免許制をフルに利用してきた歴史もある。だいたい、安い電波料のおかげもあって、日本のテレビ局はいくら不景気といわれても莫大な広告料が入るためにつぶれることはなかった。独占事業に近く、新規参入といった自由競争が行われる余地はなかった。政府による免許事業として保護され、大企業の広告料に支えられたテレビ局に厳密な意味での報道の自由があるはずがないのだ。今回の福島第一原発の事故でも、莫大な広告料を提供している東京電力の広報マンみたいな安全神話をいまだにまき散らしているのは、テレビの持つ本質といっていいのだ。
 
 地デジ化によって車のテレビも見られなくなった。カーナビさえ使えれば、別に「なでしこジャパン」や抜け殻の「大相撲」中継は見られなくてもいいか。

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