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ウーマノミクスは実現可能か?日本における働く女性の実際―"アマゾネス"でなくとも評価される時代を

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安倍首相が成長戦略の重要課題と位置付ける"女性の活躍推進"、ウーマノミクス。所得税における配偶者控除の見直しも指示され、いよいよ本格的に動き出しつつある。
構想を牽引するロールモデルとも言える、第一線で活躍する二人の女性が4月3日、東京・有楽町の日本外国特派員協会にて会見を行った。
日本経済新聞社から、同紙編集委員であり前『女性』面編集長の阿部奈美氏。また経済産業省からは、経済社会政策室長『ダイバーシティ経営企業100選』担当であり4児の母でもある坂本里和氏が出席し、グラフ資料を用いて"働く女性推進"の概要を解説した。今回は中でも、自身の体験を交えながら"働く女性の現状"を語った阿部氏の講演部分をお送りする。【取材・撮影:塩川彩(BLOGOS編集部)】

阿部奈美氏 写真一覧

皆さん、こんにちは。こちらに登壇することができ、大変光栄です。私は阿部奈美と申します。Abe Nami…Abenami…Abenomicsという感じで、誰かが「Don't worry about Abenomics」とでも言おうものなら、私のこと?と思ってすごく気になってしまうのですが。
(会場笑)
日経新聞で編集委員を務めております。本日は、ウーマノミクスは実現しうるのか、お話したいと思います。

女性の活躍推進、ダイバーシティといいますと、まだまだ総論賛成、各論反対という雰囲気を取材していて感じます。しかし日本経済、あるいは社会はこのままでは立ち行かなくなってしまうんじゃないでしょうか。私はそういう風に思っております。
私は二十数年間にわたって企業取材を行ってきました。経営者にお会いする機会が多いんですけれども、今週の月曜日もある大手グローバルカンパニーの会長にインタビューしてきまして、彼らの意識が非常に変わってきたなと、最近すごく思います。なんと言うのでしょう、このままではいけないな、と。そういう"潮目"が変わったなというのを実感しております。今日は、こうした記者として私の普段感じていることを交えながら、本当に女性の推進は日本経済あるいは社会を救うのか、その辺のところをお話したいと思います。

1990年、経営者の本音は「女性の社員なんて要らない」

私が入社したのは1990年です。バブル真っ只中の時だったんですけれども、若い私が取材に行くと、企業の経営者はほとんどの方がこう言いました。「うちの会社は、たくさん女性が活躍している素晴らしい会社なんだよ。福利厚生はこんなのがある、保育の制度もこんなのがある」。すごくアピールしていました。でもこれはほとんど企業のイメージ戦略だったんですね。

新聞記者と取材先は、取材を重ねるうちに信頼関係というのができてくるわけですね。そうすると本音が出てきます。その経営者たちは、ある日言いました。「女性の社員なんて要らない」…私は訊きました、「なぜですか?どうして?」
そうしたら彼らはこう言いましたね…みんな揃って同じことを言いましたね、別々のときに訊いたんですけれども。「女性社員は、時間と教育コストをせっかくかけたのに辞めちゃうんだよね。教育コストが回収できないよ」。
そういうことで段々、"辞めるんだったらもう元々採用だって男性みたいにしないし、チャンスだって男性と同じようには与えないぞ"みたいな、負のスパイラルのようなことになってきてしまったんですね。これが昔、90年代のころです。

世代は代わっていますけれども、同じ企業の経営者に訊きますと、彼らはものすごく変わりましたね。「男性であれ女性であれ、組織にとって貴重な存在であるならば、時間的に制約のある働き方しかできないというようなときでもなんとか乗り越え、それも会社がサポートをして、ずっとうちで働き続けてもらいたい」。そういう風に考え、今、人事制度ですとか雇用慣行にメスを入れています。

意識変革をもたらした二つの要因

そうして意識が変わったのには理由が二つあると思います。一つは人口減。
皆さんもよくご存知かと思いますけれども、日本の人口は自然減だけで毎年二十数万人ずつ減っています。二十数万人というと少しイメージが湧かないかと思うんですけれども、東京都内でいうと調布市一個丸々の人口に匹敵します。埼玉県でいえば春日部市、あるいは神奈川県でいえば厚木市、西の方へいって大阪府ですと寝屋川市、兵庫県だと宝塚市。この辺りが22、3万人くらいなんですね。一つの都市の人口に匹敵する人たちが、どんどん自然減だけで減っているんですね。

これはどういうことかといいますと、15歳から64歳までの"生産年齢人口"の中で、働く意欲があって働く力もある人たち…"労働力人口"といいますけれども、これも確実に減っていく。こういう厳しい現実を経営者たちは突きつけられて「こりゃまずいぞ」と。
今の段階では、日本は移民の政策を積極的には行っておりませんので、「どうするんだよ」と。うかうかしていると人材という面で、グローバルな市場でコンペティターと戦えなくなってしまうんじゃないか、そういう危機感を非常に強めています。

"M字カーブ"って皆さんご存知かもしれませんけれども、女性の労働力の状況をグラフにとったものですね。縦軸が労働参加率、横軸が年齢別にとると―後ほど坂本さんの方から詳しくご説明がありますけれども、日本の場合は丁度アルファベットの"M"の字に似た形をとってるのでM字カーブと言んですけれども。山の二つは20代後半、40代後半。真ん中のくぼみは30代なんですね。出産と重なる時期がここに集中しているわけですが、なんと日本では第一子を持ったときに退職する人が働く女性の6割。この状況が過去20年間変わっていないんですね。

出典: 『平成23年版 働く女性の実情』(概要版) - 厚生労働省 写真一覧

だからこの"M字"というのが日本とか韓国はそうなんですけれども、他の国、先進国は大体"丘(hill)"のような形をしているんですけれども。安倍政権は「このくぼみの部分をもう少しでもあげればGDPだって上がるんじゃないか、日本経済がもっと活性化するんじゃないか、眠れる人材は女性なんじゃないか」―そういう風に思うようになってきています。

経営者の意識が変わってきた二つ目の理由は、雇用モデルがもう限界にきているということですね。今、変化とスピードが求められるこの時代に勝ち残るためにはイノベーションが必要である、と。しかしながら日本企業というのは、高度経済成長期に形成されてきた日本的雇用慣行―正社員をどっと新卒で採ってOn the Job Trainingで鍛え上げて、社内で競い合わせてトップに上り詰めていくっていう"年次主義"とかですね、あとは終身雇用とか、年功賃金・昇進とかそういう雇用慣行があって、非常に流動性が低いわけですね。今までの日本的雇用慣行ではなくて、モデルチェンジしないと、とてもじゃないけどグローバル市場でコンペティターと戦っても勝てないんじゃないか、と。そういう雇用モデルの限界っていうのを感じているわけですね。

そこでダイバーシティというのが出てくるわけですが、異なるバックグラウンドの人。性別、国籍、年齢、あるいは経歴、学歴、経験。いろんなバックグラウンドの人が、異なるアイディアとアイディアがぶつかりあった方がイノベーションは生まれやすい環境な訳ですね。そういう風に組織を変えたい。正社員が一丸となって同じことを考えて、みんなで長時間労働して企業の競争力を高めてきたっていう時代は確かに過去にはあったんですが、このままではだめだと、そういう風に思い始めています。
しかしながらダイバーシティは企業の活力の源泉といわれているんですが、実際の企業、どうでしょうかと。元々これまで女性を採ってこなかった企業とか、男社会だった、製造業ですとか金融、保険。そういった業界の男性正社員の勤続年数の平均年数でいうと15年とかですね、それくらいになるんですね。そういうところの女性の管理職、部長・課長級に占めるの割合っていうのは6%とか、その程度な訳ですね。頭では分かっているのに、どうしてここまでダイバーシティが進まないのかというと、これは意識の面と、働く側と企業の側、働く女性本人と経営者、それぞれの意識が変わってないからだという部分もあるわけですね。

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