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  • 海老原嗣生

タモリは「双葉より芳し」かったか?

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「タモリ論」ではことごとく見落とされた「恥ずかしい」話。

「笑っていいとも」の最終回が3/31に放映された。これからお昼の時間帯に、何気なしにテレビをつければ、まあ、ハズレなく楽しめる一つの番組がなくなるという不自由さに、お茶の間の多くの人は気づき、改めてタモリのすごさを思い知ることになるのだろう。

半年ほど前、フラッとタモリが「終わるよ」といい、その力の入らない自然さがタモリらしくて、そこから人間タモリがWeb論壇でもミニブームとなっていった。その先頭を走り、流れを作ったのが、樋口毅宏氏の「タモリ論 」(新潮新書)となるのだろう。

この本自体は、いいとも終了宣言よりも数か月先行して発売されている。だから、本当に、偶然運よく、ブームがあとからついてきて、それの先導役を果たしたことになる。このあたりは作者に運を感じずにはいられない。

とまれ、樋口さんが作ったブームの主柱、「タモリが狂わないのは、自分にも他人にも何ひとつ期待をしていないから」という、シニカルでニヒルなタモリ像が世には定着してしまった。

僕は樋口さんほどタモリに熱狂してきた人間ではない。ずっと、少々好きだった程度だ。ただ、樋口さんよりも二点ほど、タモリ観察に対してアドバンテージを有していると思う。それは、樋口さんよりも僕が7歳ほど年上なことが一つ目。だから、僕は、タモリがデビューした当時から、同時代的に生の彼を知っている。天才的で真新しい芸風をテレビ・ラジオに持ち込んだ彼の偉業を、樋口さん同様に称賛してやまないのだが、それが完成するまでの、とりわけデビューからいいともが始まって、軌道に乗るまでの8年間くらいの間の時期と、僕のテレビ・ラジオ熱狂時代がピタリと重なっている。

だから、樋口さんよりもずっと、「完成される前の拙い、裸の」タモリを知っている。

そして、熱狂的ではない程度の好きさだから、思い入れが少なく客観的な評価もできる。

この2つのアドバンテージをもとに、完成される前のタモリの話を開陳しておきたい。それは、出来上がったタモリ偶像から過去を探った場合には必ず見落とされる、タモリにとっては「恥ずかしい」エピソードばかりだ。だけど、僕ら同時代の人間にとっては有名な話ばかりだ。

もろく崩れやすかったラジオのタモリ

タモリが大舞台でデビューしたのは、昭和51年のオールナイトニッポンとほぼ同時期の日本テレビの噂のチャンネルになると思う。

博多のバーで知り合った、ジャズピアニストの山下洋輔氏の仲介で、ラジオ局に送った自己紹介用の短い録音テープを、タモリ自身が恥ずかしがるように、よくオールナイトニッポンでかけていた。ちょっとだけメジャーになっていた、デビュー3、4年目のことだ。

「え~、30歳を過ぎるまで、夜な夜なバーなどで、つまらない芸を披露しております森田一義と申します。その名前をひっくり返して、タモリなどと称しております。」こんな本当にたわいもない話を、音声だけで聞いても緊張してこわばった表情で話している。それがそのまま、当時のタモリだった。

そのタモリの繊細さがあればこそ、シニカルなウィットも生まれるのだが、当時の彼は当然その対価となる「もろさ」=「狂い易さ」も、露呈していた。

そう、テレビでもラジオでも、窮すると黙り、そしてキレていたのだ。

ラジオでは、とりわけキレていた。嫌いな芸人、局関係者、アイドル、芸人。片っ端から、批判しまくったのが、彼だった。それも、エピソードは些細なことが多い。鈍感な一般人なら、「まあそんなこともあったか」と受け流せる程度の話に対して、彼は怒り、恥ずかしがり、そして反省していた。

僕が覚えていること。

たとえば、文化放送の王(字は確かではない)というプロデューサーに、「番組が欲しいなら芸をやれ」といわれ、イグアナ芸などを披露したときのこと。冷や汗たらたらで演じたにも関わらず、その王某は、言った。「(月の家)圓鏡 ※現「円蔵」)の方が100倍面白いね」。

この話、何度オールナイトで聞いたか。

ほかにも、局が連れてきたモデル連中と飲み会になり、持ちネタ披露をせがまれたタモリが、必死にヒトラーの演説や、韓国語のコマーシャル芸をしたけれど、さっぱりウケなかった時のこと。このあとしばらくは、モデルバッシングが続く。

名古屋嫌いで、「えびふりゃー」ネタを積み重ねたときもそう。さだまさし嫌いも有名。

とにかく、誰かに触れれば傷つき、その傷をトゲに磨きあげて、相手を刺しまくる、という「もろさ」が彼の真骨頂でもあったのだ。

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