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韓国の国際収支の長期推移を見てみる

韓国については政治や芸能の話題は溢れていますが、経済的話題は、個別企業や製品の話題が少し増えてきた感じはしますが、韓国経済全体の状況がどうなっているかについては、あまり知られていないというか一般の関心が薄いように思われます。そこで、韓国経済の入門的なデータを整理してみようと思いました。韓国の長期時系列経済データは韓国銀行の経済統計システム(ECOS)からダウンロードすることができます。

GDPの暦年推移は1970年から2012年までデータが入手できました。韓国ウオン(KRW)は、1997年12月にそれまでの管理変動制から完全変動制に移行し、アメリカドル(USD)に対する為替相場が大きく変動するようになりました。KRWとUSDの両方のGDPデータが入手できたので、そこから為替レート(KRW/USD)を逆算して、グラフにしてみました。
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これを見ると為替管理は、1980年から1986年までの6年間はかなり「ウオン安」方向誘導が続き、1987年から1989年の3年間は逆に「ウオン高」方向修正が続き、1990年から1993年まではまた「ウオン安」方向誘導が続くというように、為替管理が行ったり来たりしています。この間に、1988年にはソウルオリンピックが開かれ、1993年には文民大統領が生まれて32年間も続いていた軍事政権が終わり、それに伴って不正と腐敗の摘発と防止措置が進められました。

1993年から1996年までは為替管理も概ね米ドル連動で推移していましたが、<1997年>に大型倒産が続き、不良債権が金融機関経営危機に繋がり、株価が大暴落し、対外債務支払が困難となって、韓国の信用格付けは「投資不適格」にまで引き下げられてしまいました。そこで、韓国はIMFや国際協調の金融支援を受け入れ、12月には為替完全変動相場制に移行しました。その結果、為替相場は1988年に一気に極端な「ウオン安」となり、韓国のUSドルベースのGDPは大きく縮小してしまいました。

見方を変えると、韓国の(財閥名ではなく歴史的な意味での)「現代」は1998年から始まったと見ることができます。この年、政治的には、金大中大統領が就任して民主的な政権交代も実現しました。

以下では、変動相場制移行後の<USドルベース>の国際収支推移を見てみることにします。
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経常収支(Current Account)は、1998年から大幅な黒字に転じ、毎年外貨準備(Reserve Assets)が積み上がっています。しかし、ポジション改善によって行き過ぎた「ウオン安是正」(ウオン高)が進むので、その後は経常収支黒字の範囲内で「ウオン/ドル為替相場」と「経常収支」の綱引きが続いているように見えます。

ところが、1997年のアジア通貨危機の痛手をようやく乗り越えたころに、また2008年のリーマンショック不況と欧州金融危機がやってきました。経常収支は赤字スレスレに転落し、対外債務返済のために再び外貨準備を取り崩し、為替はウオン安に振れ始めました。

そこで、<USドルベース>の貿易収支とサービス収支と資本収支がどうなっていたかを見てみることにします。
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貿易収支は1998年以降及び2009年以降に大幅改善していますが、輸出増加ではなく輸入減少によって実現されています。他方、2011年以降の直近の貿易収支改善は、輸出増加と輸入減少の両方によって実現されています。韓国の貿易構造には基調的変化が生じているかもしれません。
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サービス収支の1998年以降の改善はやはりサービス支出の抑制によって実現されていましたが、経済規模の拡大に伴ってむしろサービス収支赤字は拡大してきました。2008年の改善はおそらく不況とウオン安によるものですが、やはり2011年以降は大幅に改善してサービス収支黒字に転換しています。文化の輸出や観光客の増加などが考えられますが、確認が必要です。
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上のグラフのように、資本収支の動き(Financial Activities)は、資産(assets)と負債(liabilitis)の増減が資本流入(financial in-flow)と資本流出(financial out-flow)の両側に効いてくるので、単年度ごとの増減からは傾向的なものがなかなか見えてきません。しかし、とにかく、毎年激しく行ったり来たりしていることは分かります。

そこで、1998年から2013年までの累計変化(total change)をグラフにしてみました。
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このグラフは残高推移ではありませんが、年変化の累計なので残高の動きを推定できます。

1997年には1980年からの準備資産(Reserve Assets)の蓄積はほぼ失われ、金融債務(Portfolio Investment, Liabilities)の累積を大幅に下回ってしまいました。これによって韓国が国際金融における信用力(債務履行能力への信頼)を失ってしまうことになりました。その後の両者の関係を見ると、金融債務(Portfolio Investment, Liabilities)の累積が拡大しているものの、準備資産(Reserve Assets)の蓄積もほぼそれに近い水準で拡大を続けていますから、概ね必要と考えられる準備率を維持しているように見えます。

必要な準備率を維持しながら、近年は対外直接投資(Direct Investment, Assets)をかなり累増させています。韓国の経済も、単純な輸出依存型から対外直接投資による成熟段階の入り口に入ってきたということが見えます。

世界中の市場で日本企業と韓国企業の競争が行われていますが、日韓直接の経済関係は隣国の割には低い水準にあります。次は、そのことを見てみたいと思います。

<このブログのグラフ画像のアルバムはこちら>

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