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ロシアのクリミア編入に関する「読み違い」

 ロシアはクリミアとの国家合併の条約に調印し、正式な国家併合となる予定ですが、これについて少し。

1 クリミア編入

 これまでもウクライナを巡る問題については、何度か書かせてもらいましたが(ウクライナ問題についての視点)、正直この問題は既にウクライナを超えてロシア対欧米の問題となっております。

 本当のことをいうと、私はクリミアの住民投票がロシア編入を圧倒的に支持したとしても、ロシアのプーチン大統領は欧米との対立を避けるために、直ぐにロシア編入に動くことはないと思っておりました。

 ところが間髪入れずに今回の措置となったわけで、正直最初は「以外」という気持ちが強かったわけですが、考えてみればある意味当然のことかもしれません。

2 ロシア

 ロシアにしてみれば、どのうちいつかは編入しなくてはならないわけで、欧米の反発を恐れてそれを先延ばしにしても、欧米が今後態度を軟化される可能性がない以上、先延ばしをするメリットはありません。

 それどころか、せっかくクリミアが投票でロシアに入れてくれと言う意思を明確に提示したのに、先延ばしをすれば、彼らの意思を無視するようなこととなり、クリミアにいる「ロシア人」を見捨てるのかという話にもなりかねません。

 当然ロシア国内では、同じ「ロシア人」ということで、編入を求める声が圧倒的に強いわけで、先延ばしにするということはこの声を無視するのかという批判もでかねません。

 それに何と言っても、先延ばしをするということは、欧米の圧力に屈したということに他なりません。「強いロシア」を目指したプーチンとしては、受け入れがたいものがあるのではないでしょうか(ウクライナ問題で上昇するプーチンの支持率と開発独裁)。

3 ロシアの実力

 ところが何故、読み違えをしてしまったのかという話になります。先に私の考えを述べておくと、いかに普段から欧米よりの記事しか目にしていないということで、欧米的思考に頭が慣れてしまっている結果にすぎません。

 実際問題として、今のロシアにかつてのソ連ほどの力はないのは明らかです。その認識の上に、欧米にしてみれば、自分たちの行う制裁というとで、効果があるという前提で記者発表などが行われ、それを目にすることが多くなります。

 そうなると、最初から思考パターンが固定化してしまい、かつてのソ連ならともかく、今のロシアに欧米に対抗する力がない以上、いきなりクリミア編入などという「暴挙」には出ないだろうと高を括っていたという話かと思います。

4 制裁

 実際EUが発表した第一段階の制裁措置も、ロシア人13人とクリミアの8人に対する渡航禁止と資産凍結というものにしかすぎませんでした。

 今後更なる追加措置という話ですが、どこまでできるか疑問です。ドイツなどはかなり強硬に制裁を主張しておりますが、天然ガスの供給をロシアから受けている以上、対抗措置として禁輸措置などがとられた場合どうなるのかという問題があります。

 更にロシアと国境を接しているかつての東欧諸国にしてみれば、何かあった時に直接対峙するのは自分たちとなりかねず、ポーランドが典型ですが、かなり制裁には及び腰です。

 実際問題ロシアとの貿易など結びつきが強いEU各国が具体的な金融や貿易に関連する経済制裁を行うことができるかという話で、できれば効果的なのは間違いありませんが、今さらロシアが編入を撤回すると思えませんし、自分たちにもブーメランでかえってくるのは目に見えています。

5 中国

 私の専門は中国なので、どうしてもこういうことがあると中国を念頭において考えてしまうのですが(ウクライナ問題で欧米に嫌味を言う中国)、尖閣諸島で中国が軍事行動を起こした場合、今回同様具体的に制裁ができるかという話が出てきます。

 自分と関係の薄いところ(地理的に遠く、直接影響が及ばないところ)には、強く出るというのが世の常なので、極東のことと思えばアメリカもEUもロシアに対するよりは強くでるのではないかと考えています。

 そういう意味でやはり尖閣諸島を巡って日本と中国が軍事衝突を起こす可能性というは、かなり低いと思っています。それに日中間の貿易の重要さという面でもこれを全部チャラにするのは困難で、二重に難しいと考えています(日中開戦で中国のうける影響?)。

 それに中国にしても今回のクリミア編入で頭が痛いのはこれが認められると、ウイグル系住民など民族問題を抱えていることで、中央アジアなど民族的に近い国々との関係で、理屈の上では同じようなこととが起こる可能性もなくはありません。

 実際問題、中央アジアの国々が中国に対抗できるわけもなく、また体制的に西欧諸国が彼らに積極的に組するとも思えないので、まずありえない話ではありますが、理屈上はなくはありません。

6 最後に

 普段からいろいろな見方をすべく心がけてきたつもりではありましたが、やはり、知らないうちに、普段見聞きしている情報のみを基に判断した結果の今回の読み違えという話です。

 『人民日報』を読むのが嫌いと言っておきながら、発想は『人民日報』そのものという中国の方がおられ、話をしていていろいろ閉口したことがありますが、私自身五十歩百歩で、いろいろ思うところが多くあった今回のクリミア編入事件でした。

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