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次は医療だ!スマホ、ウエアラブルで業界再編が起こる?

医療専門家を雇用するなど、米Appleがヘルスケア部門に焦点を当て始めたようだ。年内発売が噂されている腕時計型ウエアラブルコンピューター「iWatch」の目玉として、体温、心拍数、血圧などの身体データを自動的に記録する機能が搭載されるのではないかという憶測が飛んでいる。Appleだけではない。IT企業は競ってヘルスケア領域への挑戦を加速し始めた。

だれもがウエアラブルコンピューターやスマートフォンで身体データを頻繁に計測し、ネットを通じ管理する時代。そんな時代になれば、膨大な身体データがクラウド上に集まってくる。それらのデータを解析すれば、身体データと疾患との関連性の探求が進み、新たな治療法の開発につながるかもしれない。ウエアラブルコンピューターが身体データの異常を察知して警告を出すことで、心臓発作が起こる数時間前に病院に駆けつけ死亡に至らなくてすむというようなケースが増えるかもしれない。自分の健康状態を常に把握できるので、より健康的なライフスタイルを追求する人が増えるかもしれない。スマートフォンの演算処理機能と通信機能を利用することで医療機器の低価格化が進み、途上国の医療事情が大幅に改善されるかもしれない。スマートフォンの普及とウエアラブルの台頭で、大きな可能性の扉が今、開こうとしているわけだ。

★時期尚早で失敗したGoogle Health

こうした可能性があることは早くから分かっていた。この可能性を追求するため、Googleは2008年にGoogle Healthと呼ばれるサイトを開設している。ユーザーが体重、血圧、体温などの身体データを入力できるサイトだ。サイト開設当時は大手電子カルテ事業者なども巻き込んで大きな話題を集めた。ところがGoogleはこのサイトを2011年に閉鎖している。Google公式ブログによると「社会に十分なインパクトを与えていない」ということが閉鎖の理由。新しいもの好きのアーリーアダプターやIT業界関係者などが利用しただけで、一般ユーザー層にまで利用者が拡大しなかったようだ。

タイミングが早すぎたのだと思う。

技術が急速に進歩する21世紀において、ビジネスに最も重要なのがタイミングだ。技術の波に乗り遅れるのは論外だが、多くの企業はタイミングが早すぎて失敗している。Google Healthもそうだ。

★スマホが普及した今こそチャンス

ユーザーが増えなかったのは、健康関連のデータをサイトに手入力するのが、面倒過ぎるからだろう。余程の健康志向のユーザーでないと、手入力は面倒だ。

ところが、ウエアラブルコンピューターやスマートフォンと連動した健康器具では、データの自動入力が可能だ。ネットに接続された歩数計や体重計のデータはネット上のサイトに自動的に記録されるようになっている。ジョギングの走った距離を記録するアイフォンアプリや、心拍数を記録するリストバンドなども登場している。iPhoneを両手で持つことで、体温、心拍数、血圧、心電図データ、血中酸素濃度が計測できるようなiPhoneカバーも開発が進んでいる。実際にこうしたデバイスやウエアラブルの普及で、今度こそ医療業界に新たな風が吹き荒れるのではないだろうか。

問題はこうしたデータをだれが一元管理するようになるのかだ。ほぼすべての人の健康データを一元管理するサイトを手中に収めれば、大変な影響力を持つようになる。医療の発展にも貢献できるし、心臓発作直前の警告発信などユーザー自身の具体的メリットにもつながる。社会にとっても、個人にとっても不可欠のサービスになるわけだ。Google Healthで達成しようとしたことを、今度こそどこかの企業が達成できるかもしれない。それがどこになるのか。スマートフォンが普及し、ウエアラブルが登場しようというこの時期こそが、覇権争いの始まりとなる。

★覇権を手にするのは大手?ベンチャー?

Microsoftは2010年から健康情報管理サイトHealthVaultを運営している。管理できる情報は投薬、アレルギー、フィットネス関連、健康履歴、血圧、臨床検査結果、症状と疾患、レントゲン、スキャン、その他の画像など。緊急の際には、医療機関にこれらの情報を簡単に提供できるので、適切な処置を受けることができる、としている。Microsoft製のパソコンやデバイス、ソフトウエアからだけではなく、iPhoneなどともデータ連携ができるという。サービスは無料。ただそれでも、利用希望者が殺到している、という状況ではなさそう。無料というだけでは、Google Health同様、うまくいかないようだ。

半導体大手Qualcommも医療とITの融合領域に特化したベンチャー企業への投資、育成に力を入れ始めた。昨年QualcommとPalomar Healthの2社で共同設立したインキュベーターGlassomics社は、今後Google Glassやスマートウォッチなどを使ったヘルスケア系ベンチャーへの投資、育成を進めていくという。Glassomics社は、米カリフォルニア州サンディエゴのPalomar医療センターの施設内に本社を設けている。

大手だから有利というわけではない。ベンチャー企業でも、身体データを簡単に取得できるウエアラブルデバイスを広く普及させることができれば、身体データ一元管理サイトを手中に収めることができるだろう。大手といえども、そのサイトと連携しなければ、新しい製品やサービスを提供できなくなる。

大手、ベンチャー問わず、ほとんどの消費者が使うような製品、サービスを、とにかく先に開発、普及させた企業の勝ちになる。勝負の分かれ目は今、だ。

★Appleのヘルスケア領域進出は間違いなし

そして、もちろん本命はAppleだ。

Appleがヘルスケアの領域に力を入れていることは、漏れてくる幾つかの情報からも明らか。例えば今年9月以降にリリース予定のiOS 8には「Healthbook」という名前のAppleネイティブアプリが搭載されると一部で報道されている。Healthbookは、iWatchなどのウエアラブルデバイスから送られてくるヘルスケア関連のデータを集めるアプリになるもよう。集められるデータは、歩数やカロリー消費、体重、血圧、心拍数、血糖値などになると言われている。

またiPhone 5sのM7チップはモーションアクティビティ機能を搭載しているので、iPhone 5Sを持っているだけで、歩数をベースにした消費カロリー計算が可能。

それにNYタイムズによるとAppleの幹部が食品医薬品局(FDA)と会合を持ったようだ。モバイル医療や、健康管理について協議したらしい。

既にAppleのスマートデバイスは、医療業界で重要なプラットフォームになってきている。低所得者向け市場、途上国市場に強いAndroidとは異なり、iOSは富裕者市場や先進国市場では圧倒的なシェアを誇っている。特にコンパチビリティのない派生OSに分断されつつあるAndroidとは異なり、iOSデバイスである限り間違いなく動作することが確信できることから、ヘルスケア業界向けアプリはiOS向けに集中しつつある。

iPad向けの電子カルテアプリは、パソコン向け電子カルテソフトよりも米国では主流になりつつあるという。持ち運びに便利だし大幅なコスト削減にもつながっているようだ。患者の写真もその場で撮れて、すぐにクラウドのデータベースで共有できる。siriの音声認識を使って入力できることも人気の理由のようだ。米Allscripts社では医療アプリのAppStoreを開設しているという。

電子カルテだけではなく、iPadはARツールにもなる。加速度センサーやジャイロスコープが搭載されているから。iPadのカメラを通じて患者の体を見ると、血管の配置場所などが映し出される仕組みになるFraunhofer MEVISというアプリもある。昨年はこのアプリを使って実際に外科手術も行われているという。

超音波や心電図、血糖値モニターなど、無線でデータをiPhoneと送受信する機器が増えてきている。iPhoneの演算処理能力と通信機能を使うことで、これらの医療機器を安く製造できるのだという。特に遠隔地や低所得者向けの医療機器にiPhoneが利用される傾向にあるらしい。

ヘルスケア・医療業界は、動きの遅い業界なので、いろいろと課題はあるようだが、Appleがこの領域でメインプレイヤーになりつつあることは間違いなさそうだ。

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