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籾井会長の辞表徴求は「マスゴミ」意識のなせるわざ

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NHKの籾井会長が理事全員に辞表を提出させていたことが問題になっています。

2月26日、衆議院予算委員会の分科会で、階猛(しなたけし)議員の質問に対し、籾井会長は次のように答えたのだ、と。

「辞表を預かったことで理事が萎縮するとは思わない。一般社会ではよくあることだ」

私が、改めて言うまでもなく、そのようなことが一般社会でよく行われているとはとても思えません。

だって、どう考えてもおかしいでしょう?

そもそも、何のためにボスが直属の部下である理事たち全員の辞表を預かる必要があるのか、と。本当に信頼関係が成り立っていたら、そのようなことは必要ありません。

では、何故辞表を提出させたのか? しかも、日付を空欄にさせた辞表を。

要するに日付を空欄した辞表を提出するのは、いつ首を切られても文句はないということの証になるのです。

誰が喜んでそのようなものを提出するでしょう?

もし、何の迷いもなく、日付を空欄にした辞表を提出するようなことがあるとすれば、それはボスから求められて提出するのではなく、理事たちが率先して提出するような場合に限られるでしょう。例えば、自分たちの組織が外部からの乗っ取り工作に遭遇したような場合、自分たちの固い決意を示すためにボスに辞表を預ける、と。

そうでしょう?

相当以前、小泉氏が郵政大臣に就任した頃、郵政省の幹部は辞表を絶えず胸ポケットに入れていたなんて話があったではないですか。

いずれにしても何故籾井会長は、理事たち全員から日付が空欄の辞表を提出させたのか?

そんなの簡単なことなのです。つまり、籾井氏は、理事たちを完全にコントロールしたかったから辞表提出させたのです。

辞表をわざわざ提出させなくても、気に入らない理事は、さっさとクビにしたらいい、なんてことを考える人もいるでしょう。そうすれば、理事たちは恐れをなして籾井会長の言うことは何でも聞くようになる、と。

しかし、放送法の規定によって会長が理事を罷免できるのは、刑事罰を受けたような場合を除いて、(1)職務執行の任にたえないと認めるとき、(2)職務上の義務違反があったとき、(3)理事たるに適しない非行があると認めるときに限られ、しかも、そのような場合でも罷免に当たっては経営委員会の同意を得ることが必要であるのです。

その点、理事が自分の意思で辞める場合には、自由に辞めてもらうことができる訳ですから、要するに籾井会長は、理事たちに辞表を提出させることによって実質的な罷免権を確保したことになるのです。

では、何故実質的な罷免権を確保することが籾井会長には必要であったのか?

問題はそこなのです。何故でしょう?

答えは、ネトウヨさんたちがよく使う言葉、つまり「マスゴミ」が物語ってくれるのです。

そうなのです、ネトウヨたちにとってはNHKや朝日新聞は屑みたいなものなのです。安倍総理も好き嫌いがはっきりしています。百田経営委員は、都知事選の選挙に際して、田母神候補以外を人間のクズと呼びましたが、ネトウヨにとっては、中国や韓国に気を使うマスコミは皆、クズなのです。

もし、それが正当な指摘であれば、クズはどうにかしなければなりません。つまり、ゴミはゴミ箱へ。綺麗にすることが心ある人々の務めでしょう。

しかし、そのクズと呼ばれる人たちが、本当にクズであるかどうかは誰が判断することができるのでしょうか?

これは大変に難しい問題だと言わざるを得ないのです。

でも、安倍さんは、NHKは偏向していると考えた。だから、体質を抜本的に変える必要があると考え、そのためにまず会長に、自分と同じような考えの持ち主を充てた。

それが籾井さんであったのです。

だとすれば、籾井さんのミッションは明らか。籾井さんは、ゴミ処理を速やかに進めるべく、理事たちに改心を迫ったということでしょう。

つまり、自分の言うことを聞けば、これから先も理事のポストを保証するが、そうでなければNHKから去ってもらう、と。

何と分かり易いやり方か!

ところで、放送法には次のような規定があるのです。多分、ご存じだとは思うのですが‥
「第3条  放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」
まあ、そのような規定があるから、NHKの職員は、政治家からの介入には反発をする。

第4条には、次のように規定されてもいます。
「第4条  放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

1  公安及び善良な風俗を害しないこと。
2 政治的に公平であること。
3 報道は事実をまげないですること。
4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」
政治的に公平であること。これが実に難しい。そうでしょう?

だって現に、どこの政党でも自分たちの主張が正しいと考えるから、自分たちがほぼ中心に位置する、と考える。

いいでしょうか? 安倍内閣は、最近、米国のメディアなどから相当右寄りのレッテルが貼られることが多いような気がしますが、安倍さんたちは決して自分たちが右の方に偏っているとは考えない。そうではなく、報道機関が左寄り過ぎると考える。

つまり、安倍総理にとってみれば、NHKが政治的に公平でないように見えて仕方がないということなのです。また、事実を曲げて報道しているようにしか見えない、と。

だったらどうするのか?

そこで日付が空欄の辞表を提出させ、会長の意向どおりに番組が作成されるようにする、と。

そういうことなのですよね? 

でも、そう言った手法が正しいとは言えないのです。もし、そのようなことが認められるとするならば、目的さえ正当であれば手段は問わないということになりかねない。

例えば、犯罪捜査においても、正義と真実を実現するためという大義名分の下、盗聴行為だとかおとり捜査がおおっぴらに行われることになりかねない。早い話、正しい指導者を選ぶためなら、選挙なんて必要ないと言うことにもなりかねない。

そうでしょ?

いずれにしても、ボスが部下の辞表を預かるなんて、しかも部下たちの意向に反して辞表を預かるなんて、そんな非民主的な手法が許されていいはずがありません。そのようなことになれば絶対権力者の存在を認めることになってしまいます。

そうした絶対権力者がいる組織が往々にしてどのような結末を迎えるかは、私たちがこれまでよく目撃してきたところではないですか?

だから、コーポレートガバナンスの重要さが叫ばれるのに‥そして、だからこそ自民党は上場企業の行動基準を設けたいなんて言っている訳なのに。

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