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大企業や上院議員を動かす、米ブロガーの発言力

米ファストフードチェーンのサブウェイが、欧州や日本では禁止されている添加物アゾジカーボンアミドの使用を廃止することを先日発表しました。

アゾジカーボンアミドは、主にゴムやプラスチック製品の発泡剤として使用されている物質ですが、アメリカでは食品添加物として食品医薬品局(FDA)に認可されており、パンの生地改良剤やシリアルの漂白剤として広く使われています。

しかし、欧州や日本では食品添加物として認可されていません。また、世界保険機関(WHO)は人体への危険性に関して、職業的に同物質を扱う人は喘息や皮膚のかぶれなどが起こる可能性があるとし、発がん性や発達毒性を判断するに足る十分な調査結果はまだ出ていないとしています。

サブウェイがこの物質の使用禁止を発表したのは、人気ブロガーの抗議活動がきっかけでした。

大企業や大物議員を動かしたブロガーの行動

事の発端は、今年1月にサブウェイが行った記者発表です。同社は、野菜を中心とした健康的なキッズメニューのプロモーションに4,100万ドルを投じることを発表しました。この取り組みは、オバマ大統領夫人が力を入れている子供の肥満対策に応えたものであることから、記者発表には大統領夫人が参加し、同社の試みを賞賛しました。

これに対し、人気ブログ「フード・ベイブ」を運営するバニ・ハリさんが、大統領夫人の発言は市民に誤解を与える可能性があると反論。“サブウェイはヘルシーなイメージを売りにしているが、ヨガマットや靴底に使われている物質を食品添加物として使用している”と非難しました。同時に、ブログ上で同物質の使用を禁止する署名集めを行ったところ、開始から24時間以内に5万もの署名が集まり、同社ソーシャルメディアには多数の抗議投稿が寄せられました。

ハリさんは、2年前から継続的に同社にメールを送り同物質を排除するよう訴え続けていたそうですが、それまでは何の返答もなかったとのこと。ところが、この騒ぎに慌てたサブウェイの広報担当は、署名開始から僅か2日後に同物質を排除する旨のメールをハリさんに送付。メディア各社も一斉にこの件を報道しました。

たまたまハリさんの抗議対象となったのはサブウェイだけですが、米ファストフードチェーンの多くがアゾジカーボンアミドを使用しています。その多くはメディア各社の取材に対して沈黙を守っていますが、マクドナルドとダンキンドーナツはNBCの取材に応じ、同物質は製パン業界で一般的に使われているFDA認可物質であることを強調。使用の廃止については言及しませんでした。

これを受け、今度は大物上院議員のチャールズ・シューマー氏がマクドナルドの店舗前で記者会見を開き、同社のチーズバーガーを片手に、FDAは同物質の食品添加物としての使用を禁止すべきと主張しました。

市民による平和的社会変革

この一連の騒動において、注目すべき点を2つ述べたいと思います。

ひとつは、一介のブロガーが、企業や大物上院議員を動かす力を持つようになったことです。

実は、ハリさんが企業を動かしたのはこれが最初ではありません。

ハリさんは昨年、もうひとりのフードブロガー、リサ・リークさんと共に、米クラフト社に対し、子供に人気の高い同社のマカロニ&チーズ製品から着色料の黄色4号(タートラジン)と黄色5号(サンセットイエロー)を排除するよう抗議活動を行いました。

これらの着色料は、イギリスでは食品基準庁が多動症やアレルギーの原因になる可能性があるとしてメーカーに自主規制を求めているため、同国のマカロニ&チーズ製品には使われていません。また、米FDAも黄色4号は稀にじんましんや痒みが起こる可能性があるとしています。

こうしたことから、ハリさんらはチェンジ・ドット・オーグというサイトで署名集めを開始。集まった30万以上もの署名をクラフト社に提出しました。その半年後、同社はマカロニ&チーズシリーズの一部製品で両着色料を排除し、代わりにパプリカなどの天然成分を使用することを発表しています。

メディアや消費者が食品添加物に過剰反応することを批判する声もありますし、必ずしも天然成分が合成物質より安全性が高いというわけでもありませんが、他国の状況や科学的根拠を元に個々の添加物を検証し、排除するよう企業に求めることは、消費者にとって正当な権利といえるでしょう。

そして、たったひとりのブロガーの発言を機に大勢の人が行動を起こし、企業や政治家をも動かすようになったことは、ともすれば危険なことでもありますが、歪んだ社会を市民が変える大きなチャンスでもあると思います。

日本企業に求められる、企業の透明性

また、もうひとつこの件で注目すべきは、アメリカの食品関連企業の多くが自社製品の原料をホームページ上で公表していることです。

たとえば、以下は米マクドナルドが同社ホームページに掲載しているビッグマックのバンズの原料ですが、同社は全製品において、このように添加物も含め詳細に原料を公開しています。

強化小麦粉(漂白小麦粉、大麦麦芽粉、ナイアシン、大麦粉、還元鉄、硝酸チアミン、リボフラビン、葉酸)、水、ブドウ糖果糖液糖・砂糖、イースト菌、大豆油・菜種油、塩(含有量2%以下)、小麦グルテン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、生地改良剤(次のひとつ以上を含む:ステアロイル乳酸ナトリウム、ジアセチル酒石酸(モノ・ジ)グリセリズ、アスコルビン酸、アゾジカーボンアミド、モノ・ジグリセリド、エトキシ化モノグリセリド、第一リン酸カルシウム、酵素、グアーガム、過酸化カルシウム)、ソルビン酸、プロピオン酸カルシウム・プロピオン酸ナトリウム(保存料)、大豆レシチン、ゴマ

アメリカでは企業の透明性が強く求められるため、こうした自主的な情報開示は広く行われています。サブウェイの一件も、同社の原材料が公開されていなければ、起こりえなかったでしょう。

一方、日本では、製品の原材料をここまで詳細に公開している企業は少ないのではないでしょうか。

食品添加物の是非に関しては意見が分かれるところでしょうが、少なくとも原料が公開されていれば、消費者自身が考えて購入すべきかどうかを決めることができるでしょう。

企業にとっては、消費者が好まなそうな物質を公表するのは望ましいことではないかもしれませんが、正当な理由があって使っているのであれば、堂々と公開して討議すれば良いでしょうし、それができる環境は整っているのではないでしょうか。

消費者の声が企業の行動を変えられる時代になったのですから、それを活かさない手はないですし、企業にとっては厳しい時代に見えるかもしれませんが、正しい行いをする企業が支持される真っ当な社会になったともいえると思います。この一連の騒動から見えてくるのは、企業と消費者が共により良い社会を作る土台作りが始まっているということではないかと思います。

※Yahoo!ニュースからの転載

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