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リアルでポジティブな原発のたたみ方 - 橘川武郎 / エネルギー産業論

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固まった「エネルギー基本計画」の骨子

昨年12月に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が新しい「エネルギー基本計画」の骨子となる意見書(正式名称は「エネルギー基本計画に対する意見」)をまとめた。この意見書にもとづき、新「エネルギー基本計画」が近々、閣議決定される予定である。

新「エネルギー基本計画」のもとになる意見書は、各エネルギー源の重要性を、以下の通りまんべんなく指摘している。

石油:利用用途の広さや利便性の高さから、今後とも活用していく重要なエネルギー源。

天然ガス:シェール革命などを通じて天然ガスシフトが進み、今後役割を拡大していく重要なエネルギー源。

石炭:供給安定性・経済性に優れたベース電源であり、環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源。

LPガス:シェール革命を受けて北米からの調達も始まった、有事にも貢献できるクリーンなガス体エネルギー源。

原子力:安全性の確保を大前提に引き続き活用していく重要なベース電源。

再生エネルギー:安定供給面やコスト面で様々な課題が存在するが、温室効果ガス排出のない有望な国産エネルギー源。

このような指摘を受けて、エネルギー産業に関連する各業界紙は、総じてこの意見書を高く評価する論陣を張った。自らの業界が主として取り扱うエネルギー源の重要性が、きちんと評価されたというわけだ。

明示されなかったエネルギーミックス

しかし、このような評価はやや一面的であると言わざるをえない。なぜなら「木を見て森を見ず」のたとえが、そのままあてはまるからである。

新しいエネルギー基本計画に対して多くの国民が期待していたのは、目標年次とされた2030年において日本の電源ミックスや1次エネルギーミックスがどのようなものとなるか、その見通しを数値で明示することであった。しかし、今回の基本計画は、電源ミックスやエネルギーミックスを数値で示すことを避け、それを先送りした。各エネルギー源の重要性に関する定性的で総花的な記述に終始したのである。

今回の「エネルギー基本計画に対する意見」は、各エネルギー源の位置づけという「木」については言及している。しかし、それぞれのエネルギー源の全体としてのバランスがどうなるかという肝心な論点、つまり「森」については立ち入ることを避けている。「木を見て森を見ず」とみなす理由は、ここにある。

電源ミックスが明示されなかったため、新しいエネルギー基本計画の内容はわかりにくいものとなっている。そのことは、原子力発電の位置づけに関する記述に、端的な形で表れている。

「エネルギー基本計画に対する意見」は、焦点の原子力発電の位置づけについて、「重要なベース電源」と述べる一方で「原発依存度は可能な限り低減」させるとし、ただし「必要とされる規模を確保」するとも記述した。きわめてわかりにくい表現だと言わざるをえない。同意見書の草案が審議された総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の席上、委員であった筆者(橘川)は思わず、「マッキー(槇原敬之)の歌の『もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対』というフレーズみたいでわかりづらい」と発言してしまったが、いまでもその気持ちは変らない。

「元に戻る再稼動」ではなく「減り始める再稼動」

新エネルギー基本計画がわかりにくい最大の原因は、多くの国民が期待していた2030年における電源ミックスの数値の発表を回避したからである。それでは、2030年の原発依存度および電源ミックスはどのようなものとなるだろうか。その数値を予測するうえで手がかりを与えるのは、当面する原発再稼働のゆくえである。

昨年の参議院議員選挙の結果を受けて、すべてが運転停止中の原子力発電所が雪崩をうって再稼働するのではないかという見通しがある。原子力規制委員会が決めた新しい規制基準をクリアした原発については、迅速に再稼働させるというのが、参院選で圧勝した自民党の政策だったからだ。

しかし、事態はそれほど単純ではない。そもそも自民党は、参院選でも原発政策について、中長期的な見通しを明言しない方針をとった。原発に対する国民世論はいまだに厳しいと読んだうえで、原発政策を争点から外したほうが、勝利をより確実なものにできると判断したからだ。選挙前にその内容を明言しなかった以上、たとえ選挙に大勝したからといって、自民党の原発政策が支持されたことを意味しない。事態を複雑にしているのは、このような事情があるからだ。

一方で、原発のある程度の再稼働は不可避であることも事実である。昨年10月にとりまとめられた電力需給検証小委員会の報告書が明らかにしたように、原発停止による火力発電用燃料費の増加額は年間3兆6000億円にのぼる。2012年から13年にかけて電力会社7社が電気料金の値上げを実施ないし申請したが、それらは原子力発電所の再稼働を前提にしたものであり、再稼働が遅れて原発の運転停止が長期化した場合には、再度の料金値上げが取り沙汰されることになろう。

それでは、原発はどの程度再稼働するのだろうか。この点に関しては、(1)昨年7月に原子力規制委員会がフィルター付きベントの設置を含む、厳しい内容の規制基準を設定したこと、(2)2012年の原子炉等規制法の改正で、原則として運転開始後40年を経た原子力発電所を廃止することが決まったこと、という2つの新しい規制が重要な意味をもつ。

原発の再稼働は、(1)の新しい規制基準をクリアすることが大前提となる。そうであるとすれば、新規制基準でフィルター付きベントの事前設置が義務づけられた沸騰水型原子炉(24基)の再稼働は、設置とその後の審査に時間がかかるため、事実上、2015年以降でなければありえない。今年中の再稼働がありえるのは、新基準でフィルター付きベントの設置に猶予期間が設けられた加圧水型原子炉(24基)に限定されることになる。

現実に、新基準が設定された昨年7月中に再稼働の申請を行ったのは、当時稼働中であった関西電力・大飯原発3・4号機を含めて12基であったが、これらはいずれも、加圧水型の原子炉であった。

ここで注目すべき点は、新基準が設定された昨年7月の時点で加圧水型24基に再稼働申請のチャンスがあったにもかかわらず、実際には12基しか申請しなかったこと、逆に言えば、12基が申請しなかったことである。

新基準をクリアするためには、フィルター付きベントの設置だけでなく、膨大な金額の設備投資が必要とされる。一方、(2)の「40年廃炉基準」が厳格に運用された場合には、多額の追加投資をした原発が、新基準をクリアしいったん再稼働したとしても、すぐに運転を止めなければならなくなるかもしれない。

12基の加圧水型原子炉が7月の時点で再申請をしなかった事実は、電力会社がこれらの事情をふまえて取捨選択を始めており、「古い原発」の再稼働を断念し始めていることを示唆している。今後、ある程度の原発が再稼働することになるであろう。しかし、それは、既存の48基すべてが「元に戻る」再稼働では決してなく、沸騰水型原子炉も含めて当面30基程度の原発の運転再開が問題となる「減り始める」再稼働であることを、きちんと見抜いておかなければならない。

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