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米国の国際収支から国際関係を見る(その2)

米国の国際収支から国際関係を見る(その1)では、米国とEU・中国・日本の二国(地域)間国際収支を概観しました。そこから注目されたのは、EUと較べてみることで、中国と日本は、米国とのサービス取引や所得受払の規模がモノの貿易量に較べて著しく小さいということでした。中国と日本は、米国とのモノの取引は多いものの、モノに較べると人や文化や投資のやり取りが著しく少ない国に見えました。しかし、これらの地域と国の人口やGDPの規模には大きな差があるので、総量ではあまり関係性を断定できません。そこで、人口一人当たりやGDPに対する割合を出して、米国とこの3つの国と地域の関係の違いを見てみることにします。

まず、サービス収支(Balance on services)について、旅行収支(Travel + Passenger fares)知財収支(Royalties and license fees)手数料等収支(Other services)にブレークダウンしてみていきます。
元データは米国の地域・国別国際収支統計ですから、米国側の収入(支出)は相手国の支出(収入)で、米国側の黒字(赤字)は相手国側の赤字(黒字)です。米国の支出(相手国の収入)を米国の人口で除した米国民一人当り支出と、米国の収入(相手国の支出)を相手国人口で除した(相手国(地域)国民一人当り支出)を比較していきます。以下は、全て同じフォーマットを使って整理していきます。



2012年の米国に対する日本国民一人当りの旅行支出(米国の受取)は131ドルでした。これはEUの国民81ドルの1.6倍、中国の国民7ドルの18.7倍にも相当します。これに対して、日本に対する米国国民一人当りの旅行支出(日本の受取)は17ドルしかありませんでした。これは、EUに対する支出110ドルの6分の1以下しかなく、中国に対する支出11ドルとそれほど変わらない低い水準でした。米国国民は、EUの国民の1.4倍・中国の国民の1.7倍多く相手国への旅行支出をしたことになりますが、日本の国民に対しては8分の1程度しか相手国への旅行支出をしていないことになります。このような相手国旅行支出の大きな不均衡から、日本と米国の間の人の行き来は日本から米国への著しく偏った流れになっていることが分かります。



2012年の米国に対するEUの国民一人当り知財支出(米国の受取)は96ドルでした。これは日本国民の82ドルの1.2倍・中国国民の4ドルの実に48倍でした。これに対して、EUに対する米国国民一人当りの知財支出(EUの受取)も56ドルありました。これは、日本に対する支出29ドルの1.9倍・中国に対する支出2ドルの28倍でした。EUの国民は米国国民の1.7倍、日本国民は2.8倍、中国国民は2.3倍の知財支出を米国に行いました。知的財産権や文化的版権などで日本は米国に大きく劣後しておりEUにもまだまだ及ばない状況にあることが分かります。



2012年の米国に対するEUの国民一人当りその他サービス支出(米国の受取)は193ドルでした。これは、日本国民の129ドルの1.5倍、中国国民の11ドルの17.5倍でした。これに対して、EUに対する米国国民一人当りのその他サービス支出(EUの受取)は229ドルもありました。これは、日本と中国に対する支出19ドル(たまたま同額)の12.1倍にも相当します。これは再保険料がEUに集中していることが反映しているかもしれません。その結果、米国民のEUのサービス利用支出は非常に大きい反面、米国民の日本と中国のサービス利用支出は極めて僅かしかありません。

次に、所得収支(Balance on income)について、直接投資配当収支(Direct investment receipts/paymennts)その他の配当利子収支(Other private receipts/payments)政府受払利子収支(U.S. government receipts/Payments)にブレークダウンしてみていきます。



2012年の米国に対するEUの国民一人当りの直接投資配当支払(米国の受取)は391ドルでした。これは日本国民69ドルの5.7倍、中国国民5ドルの実に78.2倍もありました。これに対して、EUに対する米国国民一人当りの直接投資配当支払(EUの受取)も342ドルありました。これは、日本に対する51ドルの6.7倍、中国に対する1ドルの342倍にも相当します。配当は投資残高と配当率によって決まりますから配当受取(支払)が投資残高に比例するわけではありませんが、米国とEUは相互に大きな直接投資を行い合っているのに対して米国と日本の相互直接投資はまだそれよりはるかに低い水準にあることは明らかです。



他の民間受払(Other private receipts/payments)は、直接投資配当と雇用者報酬支払を除く民間の所得収支です。したがって、民間の国際間の債権債務関係に伴う配当・利子の受払が太宗を占めると推定できます。配当や利子支払の対象となる債権債務の大きさは借入・返済・発行・償還・譲渡・売買などによって短期間で激しく変動します。ですからある年度の配当・利子の受払が二国間の債権債務関係の構造的な規模を示すものではありません。
2012年の米国に対するEUの国民一人当りのその他の配当利子支払(米国の受取)は198ドルでした。これは日本国民の123ドルの1.6倍、中国国民の2ドルの99倍に相当します。これに対して、EUに対する米国国民一人当りのその他の配当利子の支払(EUの受取)も331ドルありました。これは、日本に対する44ドルの7.5倍、中国に対する20ドルの16.6倍にも相当します。これからいえることは、EUと米国間の民間国際金融はきわめて活発であるのに較べると日本と米国間の民間国際金融はあまり活発ではないということです。



米国政府の所得収支の太宗は外国が保有する米国国債に対する利子支払です。
2012年の米国政府の米国国民一人当たりの利子支払(相手国の受取)は、EUに対して52ドル(総額165億ドル)、日本に対して92ドル(総額291億ドル)、中国に対して97ドル(総額308億ドル)でした。

EU・日本・中国はいずれも米国に対して貿易黒字(米国側の赤字=輸入超過)ですが、EUに較べて日本や中国は米国への直接投資や米国民間債権への投資が少なく米国債の保有が多くなっています。また、EUに較べて日本や中国は米国からの直接投資や民間債権に対する投資受入が少ないので、EUは米国に対して所得収支赤字(米国の黒字)ですが、日本と中国は所得収支黒字(米国の赤字)になっています。貿易黒字で増えるドルを米国で投資する技術において日本と中国はEUに較べてまだかなり劣後しているように見えます。

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