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「生と死」死を覚悟した人の後悔とは - 横川敬久

緩和ケアの場で死を覚悟した患者さんのほとんどが、後悔や反省の言葉を残すという。「死」が近くにやってきたとき、介護・医療に携わる者として本当に必要とされるものは何であろうか。どうしたら、十分なケアに近づくことができるのだろうか。

「生と死」

『あらゆる生あるものの目ざすところは死である』 フロイト

 精神分析学者、精神科医のフロイト氏の死生観を表す言葉にこのようなものがあります。

 私たち人間にも「死」を迎える時が来るわけですが、その時がいつなのかは誰にもわからず、ただ漠然といつかは「その時期」が訪れるという認識を持っているということが、一般的な「死」に向かうということなのかもしれません。

 しかし、高齢者は若い世代の私たちと比べて、「死」に対し異なる意識・感覚をお持ちになっているように思えます。私自身、福祉の活動を通して多くの高齢者とかかわらせていただく機会があり、生活歴やご自身が輝いていたとき、つらかったときの話、死についてのお話などを聴く機会も多くあります。

死を覚悟したときの言葉

 オーストラリアで緩和ケアに長く携わってきた看護師のBronnie Wareさんによると、死を覚悟した患者さんのほとんどが後悔や反省の言葉を残すそうです。それらの言葉は、彼女の著書『The Top Five Regrets of the Dying』(Hay House Inc.2012.)/『死ぬ瞬間の5つの後悔』(新潮社2012)の中で紹介されているのですが、今回はその中で特に多かったトップ5をご紹介いたします。

1. I wish I hadn’t worked so hard.?
 「あんなに一所懸命働かなくてもよかった」

2. I wish I’d had the courage to live a life true to myself, not the life others expected of me.
 「自分自身に忠実に生きればよかった」?

3. I wish I’d had the courage to express my feelings.
 「もっと素直に気持ちを表す勇気を持てばよかった」

4. I wish I had stayed in touch with my friends.
 「友人といい関係を続けていられればよかった」

5. I wish that I had let myself be happier.
 「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」

"The Top Five Regrets of the Dying" Bronnie Ware (Hay House Inc.2012.)

 オーストラリアと日本では文化の違いもありますので、日本でも同じような言葉がトップ5にあがるとは限りませんが、これまで私が関わってきました多くの高齢の方々の中には、自身の後悔の念を語られる方も少なくありませんでした。介護・医療に関わる皆さんも、日常のケアの中でそういった話を耳にしてきた方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。教科書的なケアとして「その人たちの生きてきた道を大切に思い、聴く姿勢をもって接していきましょう」と紹介されることがあると思いますが、介護・医療職として持つべき大切な姿勢ではあっても、果たしてそれだけで本当に十分なケアにつながるのでしょうか? 後悔・反省を語られた方はそれで満足なのか?

 私はもう一つの要素が必要だと考えております。

 それは、語られた言葉・想いを「伝承」していくことです。

言葉・想いの「伝承」の担い手に

 自分自身の後悔の語り手は、人生を振り返り後悔の言葉を口にするのと同時に、聴き手に対して「家族へこの想いを届けてほしい」「私みたいにならないでね」「大切なものに背を向けないでね」といったようなメッセージが含まれていることも少なくありません。語り手は、時に想いと反対の言葉を口にすることがあるかもしれません。しかし、私たち介護職は言葉だけをそのまま受け止めるのではなく、その胸に秘めた想いを感じとろうとする聴き手であるべきでしょう。もし、語り手の後悔の言葉の中に込められたもう一つのメッセージでもある「想い」や「優しさ」を感じられたなら、それを家族や次なる世代へ伝えていくことは、私たち介護職が行うべき、目に見えない「こころ」のケアの一つとなることでしょう。

 今回「生と死」というテーマで記事を書いたことには一つのキッカケがありました。それは、同じ地域で福祉に携わってきた一人の友人の死でした。30代というあまりにも早すぎる死は、同世代の私たちに大きなショックを与えるとともに、死というものは誰にでも訪れるもので、時間は永遠にあるものではなく、限られた時間の中で私たちは生きているのだということを再認識させられました。

 彼から受け取った福祉への「想い」を次なる世代まで伝承していくことが、残された我々の役割だと自覚しています。

 『人生を駆け抜けていけるのは、生きているからこそ』という言葉のとおり、今ある「生」の時間に感謝しつつ、地域福祉に対して私が出来ることを精一杯やっていこうと思います。

 最後に、この場をお借りして天国へ召された友人のご冥福を心よりお祈り致します。

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