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西武ホールディングスIPO をバリュエーションしてみる。~株式時価総額は5000億円程度か?

さて、先日、西武ホールディングスが再上場に向けて上場申請を行ったとの報道がありました。先の2013年3月を基準期として使うとのことですが、この規模の上場であれば、東証審査は4ヶ月程度かかります。但し以前一度上場申請を行っており、かつ有価証券報告書を継続開示しているため、4月から5月頃の上場が想定されます。

西武HDは、西武鉄道として、1957年から東証一部に上場していましたが、2004年に発覚した証券取引法違反事件により同年12月に上場廃止処分となりました。その後の外資系ファンドのサーベラスを中心に約1000億円超が出資され、コクド・西武鉄道・プリンスホテル間での事業領域の再構築を行い、ようやくその出口が見えてきたということになります。

昨年、西武HDの株式総会では、上場時の株価をめぐりサーベラスとの深い対立が表面化したのは、記憶に新しいところです。

さて、この西武HDは有価証券報告書が開示されているため、上場時と同レベルの情報が得られるため、ざっくりとバリュエーションしてみましょう。

 西武ホールディングス有価証券報告書

業界構造

私鉄会社の運行距離は1980年から2005年までの間、地方開業もあったことから、営業距離、事業者数も伸びていましたが、2005年を境に現在は減少傾向となっています。

鉄道事業の収益性は高いですが、路線拡大による収益拡大は容易ではありません。そこで、各社は、鉄道以外のバスやタクシーといった運輸事業、小売りなど流通事業、周辺の住宅開発など不動産事業といった鉄道輸送以外の事業を中心に展開しています。

また、鉄道事業者が多角化を進める背景には、沿線人口が鉄道事業の収益の鍵となることが挙げられます。展開しているほとんどの事業は収益性が鉄道事業に及ばないですが、沿線人口を増加させることで鉄道事業とのシナジーを見込んでいるということですね。また、駅や駅前など保有している好立地土地資産の活用という側面もあります。

そして、多角化している事業は、バス・タクシーといった鉄道以外の運輸事業を始め、小売や飲食店などの流通事業、オフィス賃貸や住居の分譲といった不動産事業、ホテルやレジャー施設の運営、広告代理などの各社多岐に及ぶその他事業に整理できます。大手私鉄13社の各事業セグメントの売上高とセグメント比率が次の2つのグラフになります。

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売上が一番大きいのは東急で、以下、近鉄と続き、西武HD売上4592億円(連結調整前)で、ちょうど真ん中くらいですね。そして、実は京成以外は、事業全体の中で鉄道事業の売上は半分を超していません。東急の鉄道事業は全体の16%程度です。一方で西武HDは流通部門を持っていません。かつてセゾングループが西武百貨店、ファミリーマート、西友、ロフト等を持っていましたが、そもそも西武鉄道グループではありませんでした。

そういった意味では、流通部門を持っていない私鉄は極めて珍しいですね。似たようなセグメント形態に阪急阪神HDがあります。流通部門が8%程度ですが、これは阪急百貨店や阪神百貨店などのエイチ・ツー・オー リテイリングが同社の連結対象外となっているためですね。

また西武HDはとしまえんや西武ライオンズ、阪急阪神HDは宝塚歌劇団、阪神タイガースを保有しており、エンターテイメント、スポーツ系に力を入れているところも似ているかもしれません。

一方で、営業利益率、株式時価総額はかなりの差がつきます。※[画像をブログで見る]

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株式時価総額は東急の8731億円から西鉄の1563億円まで広がります。次の3軸グラフは時価総額、売上高、営業利益率の3カ年の推移です。円の大きさが株式時価総額を表します。

総じてどこも、業績堅調ではありますが、東急と近鉄がほぼ同じ構図であり、東武、小田急、阪急阪神HDはここ3年で大きく利益率を上げてきています。特に阪急阪神HDが突出していますね。

バリュエーション比較

さてバリュエーションしてみましょう。

各私鉄の予想PER、PBR(第二四半期ベース)、予想EBITDA倍率です。※[画像をブログで見る]

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予想PERは京急が53.4倍と突出しており、平均が23.3倍。京急を除くと20.8倍になります。

PBRは平均1.7倍。通常のバリュエーションでは予想PERを使うことがほとんどですが、

保有資産で収益を稼ぐ事業、鉄道、賃貸用不動産会社、銀行等はPBRも重要な指標で、アナリストなどはPBRをベースに評価しているようです。

最後は予想EBITDA倍率です。平均13.7倍。京急のPERが飛び抜けていますが、PBR、EBITDA倍率は許容範囲なので、やはり基本的には鉄道はPBR等の資産性指標を見たほうがいいでしょう。

それで、西武HDですが、今期2014/3期の売上予想4694億円、営業利益435億円、EBITDA834億円、当期純利益210億円となっています。EPSは61.39円で発行済株式総数は3億4212万4820株。このデータを先ほどの3つの指標の平均を当てはめていきます。西武ホールディングス 平成26年3月期 第2四半期決算短信

予想PER

EPS61.39円×予想PER23.3倍 = 株価1430円

株価1430円×株数 3億4212万4820株 = 株式時価総額4892億円

PBR

前期株主資本2158億円+今期予想当期純利益210億円 = 今期予想株主資本2368億円

2368億円÷3億4212万円4820株 =BPS 692円

BPS692円×PBR 1.7倍 = 株価1176円

株価1176円×3億4212万円4820株=株式時価総額4023億円

まわりくどいですが、BPSを計算しました。

予想EBITDA倍率

今期予想EBITDA 834億円×EBITDA倍率13.7倍 =企業価値 1兆1426億円

企業価値1兆1426億円-ネット有利子負債7690億円(2Q)= 株式価値3736億円

株式価値3736億円÷3億4212万円4820株=株価1092円

以上のように平均値を使うと株価1092円~1430円、株式時価総額3736億円~4892億円となります。

そこで、昨年のダイヤモンドの記事が参考になります。サーベラスが勝手にはじいた 西武再上場の想定株価の不可解

外からは非中核案件と開発案件はわからないのですが、これから始まる1000億円を投資する旧赤坂プリンスホテル跡地の紀尾井町プロジェクト、また品川の保有資産を勘案すると、BPSベースではもう少しバリュエーションが高くなるのかもしれません。場所にもよりますが、最近の開発案件のキャップレートは5%台でしょうか。

当然セグメントごとの収益力を見ながら加重平均するというのが望ましいので、一応確認しますが、サーベラスは当時「鉄道事業のマルチプルが低すぎる」と言っていたようですが、各私鉄の鉄道事業セグメントの売上に対する割合はどこも30%程度であるため、むしろ、鉄道以外のセグメントの収益をみる必要があると思われます。下のグラフは西武HDの前期の各セグメント別の売上とEBITDAです。

[画像をブログで見る]

確かに鉄道事業のEBITDAが大きいのですが、売上が鉄道事業とほぼ同じホテル・レジャーセグメントを調べてみると、ホテル・レジャー専業3社(帝国ホテル、藤田観光、リゾートトラスト)のPBRは2.42倍、予想EBITDA倍率は15.1倍でした。また、総合デベロッパー3社(三菱地所、三井不動産、住友不動産)のPBRは2.9倍、予想EBITDA倍率は24.6倍です。

ですから、今後の未開発案件が、どのくらいの期間で収益化していくかによっては、この高めのPBR、予想EBITDA倍率を加味してもいいかもしれません。そうは言っても、一方で不動産事業(駅ナカ事業)や利益の出ていない建設事業などもあるので、そこを加味することも必要ではあります。

また流通比率が低く、事業構造が似ている阪急阪神HDのPBRは1.2倍、予想EBITDA倍率は12.6倍でした。

いずれにしろ、業界平均値を使うと、西武HDの株式時価総額は3736億円~4892億円となります。これに未開発案件を考慮することで、アップサイドで6000億円近くまでは望め

るかもしれませんね。西武HDの再上場を楽しみにしています。

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