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国のさらなるコミットメントで、施設主義からの脱却を! 先進的な海外事例から、日本における「特別養子縁組」を考える

後藤絵里氏(朝日新聞GLOBE編集部 記者)
後藤絵里氏(朝日新聞GLOBE編集部 記者) 写真一覧
昨年12月15日(日)に開催された、日本財団主催「特別養子縁組を考える国際シンポジウム」に参加してきました。自分自身、普段なかなか触れることのない問題についてのイベントだったので、非常に有意義でした。

問題の前提として、欧米では通常、親の元で育つことができない子どもについては、里親または養子縁組などの家庭における養護となり、アメリカでは年間5万人の子どもたちが養子縁組を行っています。一方、日本では養護が必要な子どものおおよそ9割が施設で生活しており、養子縁組は年間400件ほどに留まっているのが現状です。

このシンポジウムでは、前半が日本、イギリス、アメリカ、そして韓国における養子縁組の現状(や課題・成果)などについて、後半では「養子縁組が社会で果たす役割とは」というテーマのもと、各国の登壇者に日本で活動する方々を交えたパネルディスカッションが行われました。

「国家レベルのネグレクト」とまで言われる日本の制度

まず最初に、朝日新聞GLOBE記者の後藤絵里氏から、「日本における特別養子縁組の現状と課題」についての発表がありました。「GLOBEで2年前にアメリカと韓国における養子縁組について特集をしたことがきっかけで、日本の現状に強烈な違和感を感じた」という後藤氏。欧米では、養子縁組が児童養護の柱になっており、パーマネンシーケア(永続的にな家庭での養育)が最優先とされる現状があり、世界では施設から家庭へという動きが進んでいるとのこと。

アメリカでは、昨秋から「Family First Act」が成立。年間8万人ほどの子どもたちが養子縁組を行うようになるのだとか。それとは対照的に、日本は施設も入所児童の数が増え、保護を必要とする9割(年間3000人)の子どもが施設で暮らしています。

日本の養子縁組の場合、圧倒的に成人してからのケースが多く、子どもに関しては制度ができて16年ほど経つにも関わらず、国がほとんど何もしてこなかったこともあり利用が進んでいないとのこと。「施設偏重」「国家レベルのネグレクト」とも言われることもある日本の現状を最低限支えてきたのは、スキマを埋めてきた民間団体の尽力がありました。

全国で16団体あり、養子縁組件数はこの5年で6倍となっている状況に民間団体がかなりの貢献をしています。妊娠時からの相談対応なども行うものの、国から民間団体への支援は基本的になしということもあり、国レベルでのさらなるコミットメントが問われるところです。後藤氏は、「取材で多くの養子縁組の家庭を見てきましたが、パーマネンシーケアの方向性が正しいと感じている」として発表を締めました。

未婚、同性愛者でも養子縁組できるイギリス

クリス・クリストフィデス氏(BAAF講師・コンサルタント)
続いて、イギリスにおける養子縁組について、クリス・クリストフィデス氏(英国養子縁組里親委託機関協会 講師兼コンサルタント)から発表がありました。

イギリスでは、年々養子縁組を待つ子どもたちが増える一方で、実施数がまだまだ少ない状況ということもあり、時に民間団体から政府に対して苦情を言うこともあるそうです。

養子縁組に至る主な原因は、虐待やネグレクト、家庭崩壊などが挙げられ、養護下にある子どもは将来の自身の子どもも養護下になるケースが多いということも紹介されました。イギリスのシステムは、1926年からスタートし、2002年の養子縁組・児童法で大きな変化があり、未婚や同性愛者であっても養子縁組が可能になるなど、法律面での制度設計が養子縁組しやすいように変わってきています。

また、養子縁組政策に関する重要なポイントとして、できるだけ早い時点でパーマネンシーケアを提供していくことや、親たちと連絡できるように情報提供すること、子どもを中心に据えて考えることなどを挙げ、日本でも試験的な取り組みをしていくことを提言していました。

「なぜ家族が必要なのか?」から養子縁組を考える

ミーガン・リンドセイ氏(全米養子縁組協議会 公共政策・教育部長)
次に、アメリカにおける養子縁組についてミーガン・リンドセイ氏(全国養子縁組協議会 公共政策・教育部長)によるプレゼンがありました。自身も養子として育てられた経験があることも踏まえ、アメリカのシステムの良メリットを語りました。

「なぜ家族が必要なのか?」という基本的ながらも重要なテーマから話がはじまり、母親と父親が話していることを聞き、その真似をして言語を修得していることや、そのように相互に関係することで母親と関係構築をしていくこと、そして、制度ではなく家族で育てていくことも大事だということ強調しました。

施設は職員が1人で何人も見ることになるので、上記のような真似による言語習得ができなかったり、愛情が足りないこともあり、子どもは発達が遅れるとのこと(教育についても家族で育ったよりも水準が低いそう)。養子縁組を積極的に行うこと、門戸を開いていくことは、国際的な協力にもつながり、そのためには啓蒙活動が重要になることを挙げました。

イギリスの現状について話したクリストフィデス氏とも重なる部分ではありますが、リンドセイ氏は、補助金を含め養親に経済的な支援などの仕組みの必要性を訴える一方で、制度や法律については「親だけでなく子どもについても焦点を当てるべき」とも語りました。

「未婚母」が問題となっている韓国

姜 恩和氏(首都大学東京 都市教養学部 人文・社会系 社会福祉学分野 助教)
韓国における養子縁組については、姜恩和氏(首都東京大学 助教授)からの発表がありました。韓国では、1976年に国内養子縁組も含まれた法制度が整ったものの、支援金などを海外養子縁組の場合は受け取れる一方で、国内の養子縁組の場合は受け取ってはいけないという決まりもあり、国内の数をどう増やしていくかが課題となっていました。

海外からの子どもが多く、その背景には家庭の貧困や最近では未婚が多いとのこと(「未婚母」が問題となっているようです)。近年では法改正も実施され、国内を優先する方向性にも傾いてきており、論点がベビーボックスや乳児遺棄など、出生届の必要性や養子縁組と未婚母の養育支援の関係などに移り変わっているとのこと。

虚偽の出生届や未婚母の支援などについて、今のところは養子縁組あっせん機関がその多くを担ってきた一方で、今後どのように制度設計を進めるべきかが議論されていくところです。

具体的な助成があれば日本の現状も変わるかもしれない

パネルディスカッションの様子(撮影:佐藤慶一)
シンポジウムの最後には、日本、イギリス、アメリカ、韓国の発表者に加え、高橋恵里子氏(日本財団 福祉特別事業チームリーダー)をコーディネーターに、赤尾さく美氏(全国養子縁組団体協議会 理事)、小川多鶴氏(アクロスジャパン 代表理事)を加えたパネルディスカッションが行われました。

まず、民間の養子縁組、特に海外、国内、施設など様々な選択肢がある中で、養子縁組の優先順位がどのようになっているのかについて。

イギリスでは、できるだけ家族に戻す努力を行い、親戚(保証人になる場合もある)などもダメな場合は、知らない家族や海外というような順番となっているそう。韓国も全体的な方向性としては、乳児は養子縁組を行い、どうしても見つからない場合に海外、最後に施設という順番となっているようです。一方、日本では前述の通り、施設の子どもが9割なので、かなり遅れていることが分かります。

また、団体の補助金や養子縁組に関わる援助などについては、韓国は支援がもらえるような制度設計になっている中、小川氏からは日本の民間団体はほとんどが縁組の成立後、元の両親から実費をいただいているという事情も紹介されました。加えて、2年前まで運営費はなく、活動は無償で行うような謎な取り決めがあったそうで、支援の必要性が述べられました。

赤尾氏からは、「地道にカウンセリングを続けていくような状況で、長いプロセスを経ての養子縁組となっている」と、妊娠期からの地道なプロセスが大事なるので、国が助成金を出すのが当然だと思うと発言。韓国のような具体的な助成があれば、日本の状況も大きく変わってくると国からの支援の重要性を語りました。

その他にも、いくつかのトピックが話し合われましたが、上記のあたりが日本の抱える大きな課題だと感じました。

トライアンドエラーの蓄積で、子どもの視点に立った制度づくりへ

日本では、この8年間で幼児の死亡の半分が0歳の赤ちゃんだったという現状などもありながら、成人後の養子縁組が圧倒的に多くなっています。日本における制度設計の遅れによる、様々な問題について取り組んできた民間団体への支援はやはり必要だと思います。

その他、海外の事例でも多く言われていた、子どもの視点に立った制度づくり、実親へのカウンセリングの徹底、そして、問題に関する啓発もかなり重要となってきます。その意味では、こうしたシンポジウムのような情報発信や問題について啓発する機会を多く設けていくことから、養子縁組に関する議論が盛んになっていくのだと思います。

日本の現状を知ることで、養子縁組は一つのソリューションとして大いに必要であり、さらに制度面について整備を進めていかなければいけないと思いました。今回発表のあった日本以外の国はこれまで長い年月をかけて、トライアンドエラーしてきた結果、これまで紹介してきたような日本と比べて圧倒的に子どものこと、元親や養親、さらには民間団体の支援まで、よく考えられ、機能している制度ができています。

普段なかなか知ることのなかった養子縁組という問題でしたが、今後、このトピックに関する情報発信や啓発の必要性を感じました。これからさらに議論され、海外の成功例なども汲んだ、より良い制度が改善に向かうことが期待されます。

(取材協力:日本財団)

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